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好きだけど

「おい、いつまで不貞腐れてんだよ。鬱陶しいったら!」 目の前で悠が呆れた顔で俺を見ながらワインを飲んでる。 「……くそムカつく」 うんざりとした顔をして俺を見ている悠に向かって、俺は溜め息と共に吐き出した。 俺は悠と店で飲んでて、気分良く帰ろうと思ったのに…… 店を出て目に飛び込んできたのは、綺麗な男二人の熱烈なラブシーンだった。 本当に綺麗だった。 男同士だけど、映画のワンシーンのような……思わず見惚れてしまうほど。 そして、キスをしながら涙を流すその一人の男は志音だった。 俺の頭の中で、その見たくなかった光景が 一瞬にして写真のように焼き付いた。 「でもさ、よくブチ切れなかったよね? 偉いよ。志音さぁ、泣いてたじゃん? 陸也、敦に向かって歩き出すから殴るのかと思って焦ったよ」 悠がうるさい。 俺は気がついたら悠の部屋にいた。 俺は敦に何か言ったのか? その時のことは全然覚えていなかった。 悠の隣に座りなおし、グラスのワインが空になったので注ごうとするも悠に止められてしまった。 「ちょっと飲み過ぎ! もうやめなさいな」 俺の持つボトルに手を添えワインを注ぐのを阻止する悠の手首を掴み、俺は悠にのしかかった。 キスをしようとしたら、それも悠に止められた。 「なんだよ!……キスもだめなの?」 そう言いながら、あぁ俺、酔ってんな…… とボンヤリ思った。 悠はそんな俺に「キスしたいのは俺じゃないだろ?」と言い、優しく笑う。 「志音、お前の事待ってるよきっと……なんでお前は志音の手を取ってやらないんだ? 好きなんだろ? せっかくさ、せっかく好きになれたのに……」 優しい笑顔のまま、悠が悲しげにそう言った。 好きになれたけど── だけど俺じゃ駄目なんだよ。 わかるだろ?

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