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認める
悠と話したおかげで何となく志音を受け入れようという気になり、胸のもやもやが無くなった気がした。
志音を受け入れる……
というか、自分が志音の事が好きなんだという事実を認めるという事。
深く考えないで、好きならそれでいいんじゃない?と悠に言われた。
そうだよな。
おっしゃる通りだ。
そのまま今日は悠の部屋に泊めてもらった。
勿論セックスはしない……
今までそうしてきたように、俺は悠の背中を抱きながら眠った。
同性の事しか好きになれない俺に、自分も同じだと言って元気付けてくれた。悩みもいっぱい聞いてもらった。離れていた時期もあったけど、もしかしたら悠はずっと俺の事を気にしてくれてたのかもしれない。心配してくれていたのかもしれない。
きっとそうだ……
そう思うと感謝してもしきれない。
ありがとう悠。
朝、コーヒーの匂いで目が覚める。悠が朝食を用意していた。
「すごいな。いつも朝飯なんて食うのか?」
伸びをしながらリビングに足を進めると、悠は小さく溜め息を吐いた。
「俺はいつも昼くらいまで寝てるし、朝飯なんて作んねえよ。今日はお前学校だろ? お前のために作ったんだが? ……さっさと支度して早く食え」
悠が面倒くさそうに俺に言った。
「わざわざありがとな。頂きます!」
ハムエッグにサラダ、りんごまで剥いてある。
トーストをかじりながら、視線を感じて見てみると、悠が俺をジッと見ていた。
「ん? なに?」
「一人でスッキリした顔しやがって……今度志音と一緒に店に来いよな」
そう言って悠は笑った。
いつもの保健室。
昨日の今日だ。きっと志音はここには来ないだろう。
いつものようにコーヒーを淹れ、俺は机に向かう。休み時間のたびに、生徒達がひっきりなしに保健室に来た。
他愛ないお喋り。
悩み相談。
……つまんねぇな。
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