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勇気

保健室の前…… さっきから保健室の前に来ては通り過ぎ、もう二往復目だ。 俺はなかなか保健室に入ることができないでいた。 そして、意を決して入ろうとしたら、どこから湧いたんかチャラそうな男三人組が保健室に入っていった。 「センセー! 合コンのお誘いにきたよ」 保健室に入るなり馬鹿でかい声で先生に話しかけている。めちゃくちゃくだらないことで邪魔された俺はムッとしながらまた廊下を一人うろついていた。 しばらく経ってからふと思った。誰か先客がいた方が保健室に入りやすいかもしれないんじゃないかな? そう思い直した俺は勇気を出して保健室のドアを開けた。それでも保健室に踏み込んだものの、先生の顔を見ることができずに顔もあげず一目散にベッドに向かいカーテンを閉めた。 一瞬先生がこちらを見た気がしたけど、俺を気にすることなくさっきの生徒とお喋りを続けていた。 とりあえず保健室には入れた。 うん、これでいい。 休み時間が終わればお喋りに夢中なあいつらも教室に帰っていくだろう。そうしたら二人きりになれて先生と話が出来る。 できるかな? 俺、このまま潜り込んでしまったベッドから出られるだろうか…… 程なくしてチャイムが鳴り、ガヤガヤと生徒達が教室に帰っていった。 保健室に静寂が戻ってくる。 やっぱり話しかけられなかった。 俺はうつ伏せにベッドに潜り込んだまま何も出来ずに黙り込む。 沈黙が苦しい…… そう思っているのは俺だけかもしれない。一人で勝手に苦しくなっている俺はなんなんだろうな。 あの日の先生の冷たい目を思い出し、胸がぎゅーっと苦しくなった。 そうだよ、俺あんなところ見られてさ……嫌われてしまったかもしれないのに。 やっぱり来るんじゃなかった。 悲しくなって涙が溢れた。 「おいおい、勝手にベッド使うなよ。どうした? 志音」 突然、先生の声が近くで聞こえドキッとする。 先生がすぐそこにいる……どうしよう。 涙とドキドキが止まらない。苦しい……先生ごめん。もういいよ。

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