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告白
「志音……お前、泣いてんだろ? 泣いてんならキスして慰めてやるから 顔出せよ」
……どうしよう。冗談なのに嬉しくてどうしようもない。自分が情けなくて涙が溢れる。
「聞こえなかった? 志音、泣いてんなら慰めてやるからさっさと顔出せ」
「………… 」
恐る恐る頭を出すと、目の前に先生が座って俺の顔を見ていた。
「ほら、やっぱり泣いてた……」
そう言いながら先生は俺の頬に手を添えて、優しく触れるだけのキスをしてくれた。
「こないだもキスして慰めてやりたかったけど、泣いてないってお前が言うからさ……」
そう言って先生は笑う。
なんでだよ!
なんで、そんなに優しく笑うんだよ……
もう俺、我慢できないよ……
俺は体を起こし、先生の前でみっともなく泣きじゃくってしまった。
次から次へと溢れ出てしまう涙を両手で必死に拭いながら、俺は先生に思いを伝えたくて何度も何度も謝った。
「先生……お、俺……ゴメン……やっぱり好きなんだ……ゴメンね、先生の事……好きになっちゃったんだ。ごめんなさい……困らせて……ごめんなさい……」
そんな俺を先生は抱きしめ、唐突に俺の唇を塞いだ。先程の触れるだけのキスとは違う、深くて熱い大人のキス……
「んんっ……んっ……はっ… 」
なんで……? なんでこんなことするんだよ。
混乱、驚き、苛立ち……様々な感情が俺の中で醜く蠢く。
「志音、うるさい……さっきからなんで謝るんだ? 少しは落ちつけ……」
そう言った先生の唇がまた俺の唇と重なり、先生の舌が俺の舌を執拗に絡めとった。
先生、なんで……嫌だ。
好きな人にこんな風にされたらどうしたって嬉しいし力が抜ける。俺は先生の白衣の襟元を掴み、自分の欲に必死に抗う。
長い長いキス……
それでも名残惜しいように、ヂュ…と音を立てながら唇を離した。
息が上がる…
「はぁ……先生…?」
「落ち着いた? ゴメンな。もう謝らないでくれ。俺はちっとも困ってなんかないから。ほら、もう泣くなって……」
そう言って先生は俺の涙を手の平で拭ってくれた。
優しい目……
「俺も好きだよ。お前の事ほっとけない。誰よりも幸せにしてやりたいって思ってる。俺の方こそごめんな。好きになっちまって……だからもう、泣くな」
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