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先生と生徒
「なんだよ、泣きそう?」
俺はそう志音に言うと、うつ伏せの体を起こし志音に向かい両手を広げる。
「ほら、おいで……」
志音は赤い顔をして、おずおずと俺の腕の中に入ってきた。
「志音さぁ、俺以外の前で泣くなよ……お前の弱いところ、他の奴には見せたくない」
好きな人の特別な表情はたとえ笑顔だろうと他の男には見せたくない。泣き顔なんてもっとダメだ。子供じみた独占欲だろうとそんなの知らない。嫌なものは嫌なんだ。
俺がそう言うと、顔を上げた志音がプゥッと頬を膨らませた。
「泣いてなんかねぇし!」
……今だって泣きそうな顔して俺の腕の中に入ってきたくせに、志音は変なところ強がるんだ。
「そか、それならいいけど。でもなんでこんなになるまで飲んでんの?」
志音がこんな風になっているのは大方悠から聞いていたけど、直接本人の口から聞いてみたくてわざと俺はそう言った。
そう、志音の口か聞きたかった。
志音の口から「構ってもらえなくて寂しい」と聞くことで俺は安心したかったんだ。
それなのに……
「いや……別に、仕事で嫌なことがあったから……」
志音は俺が聞きたい答えを言ってくれない。
誤魔化すなよ。嘘つき。
「んん?……違うだろ? 本当は?」
「……先生に会えないから、寂しかった」
俺から目をそらし、やっと小さな声でそう言ってくれた。
「そっか。ごめんな。でもさ、学校では志音が保健室来てくんなかったら会えないでしょ? 俺の方から会いにはいけないよ。学校だからイチャイチャも出来ないしな」
俺の前でちゃんと素直になってくれて嬉しい。志音の柔らかい髪の毛を指先で弄ぶ。
「先生……俺の事、ちゃんと好き?」
上目遣いで志音は俺に聞いた。
ちゃんとってなんだよ。好きに決まってるだろ。言い方可愛いな。
「好きに決まってんだろ? もう死ぬまで志音だけだよ」
堪らなくなって志音を力一杯抱きしめた。
そんな俺を見て嬉しそうに志音は笑い、強く抱きしめ返してくる。
そのまま俺は志音に唇を奪われた。
「んっ、んんっ……志音」
志音にのしかかられた俺は抵抗できずにされるがまま。志音が俺の首筋に舌を這わす。
「んっ……やめっ……志音…… 」
吐息が漏れそうになるのをなんとか堪え、俺は志音から逃れた。理性があるうちに、と気持ちを他にやり紛らわす。
「明日も学校だ。文化祭だよな? 早く風呂入って寝ろ……」
「……でも」
もう一度志音を優しく抱きしめ、軽く唇を重ねた。志音が言わんとしていることはわかる。でもダメだ。志音は生徒だ
志音の顔を見ると、また泣きそうな顔になっている。
「先生、泊まっていかないの? 帰っちゃうの?」
「………… 」
俺だって毎日でも一緒にいたい。
でも俺がちゃんとしないと……な。
俺は志音に何度もキスを落とし、ギュッと抱きしめる。わかってくれ。俺だって一緒にいたいんだ。
「今日は帰るよ。愛してるよ、志音」
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