66 / 165

文化祭始まる

せっかく会えたのに、先生は俺を送っただけで帰ってしまった。 なんで? 今日くらい泊まってけばいいのに…… やっぱり俺と先生はキス止まり。 一人溜息を吐き、冷蔵庫からペットボトルの水を取り出した。 酔いもさめたし、シャワーを浴びてベッドに入る。一人では大きすぎるキングサイズのベッド。 今まではなんとも思わなかったのにな…… 枕に顔を押し付け「先生……おやすみ」と呟き俺は眠りについた。 次の日、準備もあるので早目に学校へ行く。 いつもの教室は可愛らしいテーブルクロスのかかった机が並び、立派に喫茶店に変化していた。 教室の中で、康介君と一緒にホストの格好に着替える。康介君が言うには、カーテンの向こうで竜太君と斉藤君が女装の準備をしているらしい。 しばらくすると、廊下の方が騒がしくなった。 一斉に上がる歓声。 口々にみんな「可愛い」「ヤバイ」と言っているのが気になってしまい、支度が済んでからすぐに俺は廊下に出た。 目の前には凄い可愛らしい女の子が二人。 一人は制服風のミニスカート姿。もう一人はこれまたミニスカートのメイドさん。よく見ると、制服風のミニスカートで立つ女の子は竜太君だった。 ……驚いた。 斉藤君もなかなかのものだけど、竜太君が可愛すぎて見てるこっちが恥ずかしくなる。 なんていうんだろ、女の子として可愛いっていうより、可愛い男の子らしさが際立ってしまってる……って感じ? もちろん 女が好きな男から見ても、女の子として竜太君は可愛すぎる。 これはほんとヤバいだろ。 この人混みに一人でいたらナンパ野郎が寄ってくるのは必至。竜太君一人じゃ絶対立ち回れないと思い心配になった。 竜太君に見惚れていると、 「なんだよイケメンが! なんかムカつく」 「志音やべえ! さすがモデル! 似合いすぎだ!」 「女子の客、いっぱい連れてこいよ!」 とクラスの奴らに捲し立てられた。 ……なんか煩い。 俺なんかより竜太君を何とかしてほしい。 俺の心配をよそに、近づいてきた竜太君に見つめられ不覚にもドキッとする。 「二人とも凄いかっこいいよ!なんだかドキドキしちゃうね!」 興奮気味に俺と康介君に話しかける竜太君が爆発的に可愛くて眩暈すら覚えた。 無意識に俺は竜太君の肩を抱きよせ、彼の頭頂部にキスを落とす。周りのどよめきに気が付き、自分がした事を自覚した。 「ちょっと! 志音?」 びっくりした顔で俺を見上げる竜太君に「竜太君があんまりにも可愛いからつい……」と平謝り。そんな俺にクラスのみんながスケベだのたらしだのと騒ぎ立てた。

ともだちにシェアしよう!