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先生を待つ

康介君の携帯が着信を伝える。 竜太君からの連絡かと思った康介君は、明るい口調で電話に出るもすぐに怖い顔になり携帯に向かってなにやら怒鳴り始めた。 「康介君……?」 どうしたんだろう。 聞くと、竜太君が何かを言ってるけど泣いちゃって何を言ってるかわからないらしい。 電話を切るなり血相変えてどこかに行こうとする康介君の前に修斗さんが立っていた。 康介君の慌てっぷりに驚きつつも、事情を知ってるらしい修斗さんは落ち着いて説明をしてくれた。 どうやら周さんが怪我をして、竜太君も付き添って病院に行くらしい。竜太君は周さんが怪我をしたのを見て動転して腰まで抜かしてしまっていたから、ちゃんと喋れなかったんだろうね、と修斗さんは笑った。 それを聞いて少し安心した康介君は、このまま体育館に残って後夜祭を楽しむと言い修斗さんとお喋りを始める。俺は二人に挨拶をし、体育館を出て帰る支度をした。 後夜祭はやっぱりいいや。 早く帰って先生が来るのを待とう…… 今日も誰もいない部屋に「ただいま」と独り言を言い靴を脱ぐ。 ちょっと寂しいこの瞬間だけど、今日は違う。 この後 先生が来てくれるんだ。 楽しみだな。 泊まってくれるんだよな。 あ、バスタオルとかスウェット用意しとかなきゃ。 俺は浮かれる気持ちを抑えながら、いそいそと部屋を片付けて先生のために酒の用意をした。 先生が俺の部屋に泊まってくれる。一晩共にするということは……そういうことだよね? あの保健室の続き── 意識してしまったら途端にドキドキしてしまう。 保健室での事を思い出し一人そわそわしていると、テーブルの上の携帯が点滅したのに気が付いた。 あれ? メッセージ……かな? 携帯の画面を確認すると、先生からのメッセージが入っていた。 『ちょっと遅くなる。ごめんな。絶対行くから』 遅くなるってどのくらい? 絶対行くと言ってくれてるから信じて待つけど、早く会いたい。先生に触れたい。 楽しみにしていたから、こんな些細なことでもかなりがっかり。気分が一気に落ちていった。 でも思ったより早く玄関のチャイムが鳴り、申し訳なさそうな顔をした先生が「ごめんな」と言って、部屋に入って来るなり抱きしめてくれた。 先生とやっとふたりきりになれたのが嬉しい。 自分の家のようにリラックスして寛いでくれるのが嬉しい。 ソファに座る先生に、俺は冷蔵庫で冷やしておいたグラスにビールを注ぎ持っていく。冷えたグラスを見て「気がきくな」と褒めてくれた。 俺も先生の隣にぴったりとくっ付いて座り、甘えるように寄りかかる。キスしたいな……なんて思った途端に俺の携帯が着信を知らせた。 ……なんだよ。誰だよ。 内心舌打ちしながら電話に出ると、電話の相手が竜太君でちょっと驚いてしまった。何の用かと思ったら打ち上げのお誘いだった。 竜太君の声と背後から聞こえてくる賑やかな声。D-ASCH のみんなと康介君と一緒に打ち上げをしてるらしい。そして打ち上げの会場になってるのが、俺と同じくここのマンションの住人 ボーカルの圭さんの部屋。 すぐ近くにいるし、志音の事も友達として紹介したいし、よかったらおいでね……と竜太君は言った。

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