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感じる指先

洗い物をしていると先生が後ろが抱きついてくる。 俺の肩に顔を乗せて、皿を洗ってる俺の手元をジッと見ていた。 「なに? 先生重いよ……」 ぞわぞわする首元からなるべく意識を遠ざけながら、俺は先生に文句を言う。いちいちドキドキしてしまうから、こうやって誤魔化すのも大変だ。 「なあ、手袋とかしねえの? 手荒れ大丈夫? ハンドクリームとか持ってる?」 そんなことを心配してくれてんだ。ちょっと意外でおかしかった。 クリームはちゃんと持ってると伝えると、後で先生が塗ってくれるって。 もしかして子ども扱い? 俺の手荒れの心配をしていた先生は、風呂の支度はしてあるから終わったら行けよと俺に言う。 冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し、先生にお礼を言って風呂へ向かった。 「あれ? 先生は? 先行く?」 準備までしてもらっちゃって俺が先に行くのもなんだか悪い気がしてそう聞いたら、もう済ませたと言って先生は笑った。 「俺は志音が圭君ちに行ってる間に入ったから大丈夫。ごゆっくり 」 いつの間に……ちゃっかりしてんな。 風呂から出ると、先生はソファに座ってテレビを見ていた。 天気予報をぼんやりと眺めながら、俺の方を見ずに話しかけてくる。 「明日は天気いいって。どっか出かけるか?……車でドライブデートとか?」 そう言って俺を振り返る先生に、俺は嬉しくって何度も頷いた。 デートって! うわ……なんか凄い嬉しい。 微笑みながら俺に手招きする先生に促されて、俺は隣に座る。さっき言ってた通りに、先生はハンドクリームを手にしてた。 「ほれ、志音、手だして」 先生に言われ、素直に両手を差し出す。 「はい。片っぽずつね……」 そう言いながら、先生は自分の手に出したクリームを両手で俺の手に擦り込み始めた。 指の一本一本に丁寧にクリームを塗り込む。 最初は手全体に満遍なく…… その後に指を開かせ、一本一本根元から指先へ先生が握り込みながら優しくマッサージするようにクリームを塗り広げた。 「どう?……気持ちいいだろ?」 先生が俺の手から視線を上げて、上目遣いで俺に聞いた。 先生の視線に俺はドキッとする。 「うん…… 」 気持ちいい…… 俺はちょっと変な気分になりながら、もう片方の手もやって欲しくて先生に差し出した。 先生は片方の手と同じように、クリームを丁寧に塗り込むと、指一本一本を絶妙な力加減でマッサージしていく。最後は両手を先生の手で包まれ、ひと撫でされるとお互いの両手の平を合わせ、指を絡めて握られた。 「捕まえた……」 先生はそう言って微笑むと、恋人つなぎ状態の手を口元に持って行き軽く俺の指先にキスをする。 そしてチラッと俺を見ると、そのまま両手をグッとソファの背に押しつけ俺を拘束した。 鋭い視線…… ドキドキし過ぎて胸が苦しい。

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