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二人で朝食

俺は先生の腕に抱かれたまま、朝までぐっすりと眠った。 目が覚めると目の前には愛しい人が静かに寝息を立てて眠っている。俺はそれを見ながら凄く幸せな気持ちに包まれた。 気持ちよさそうにまだ眠っている先生を起こしたくなくて、俺は暫く寝顔を眺める。 ……先生、綺麗な顔。最初に会った時も思ったけど、やっぱり先生、かっこいい。 先生の寝顔を見つめながら、昨晩の事を思い返した。 先生はキスが凄い上手だった。エッチな事も慣れた感じだ…… そりゃ俺より全然歳上だし? それなりに経験もあるだろうから当たり前なんだけどさ…… 好きになった人とちゃんと付き合った事がないって言ってたよな? でもこんなにセックスも上手くて手慣れてて…… 先生の過去に嫉妬したり想いを馳せてもしょうがないのはわかっている。それでもどうしたって考えてしまい嫌な気持ちになってくる。 先生は俺と付き合う前にはどれだけの人を抱いてきたんだろう。 それを思ったらふと昔からの付き合いだという悠さんの顔が頭を過ぎった。二人の見せる独特な雰囲気。考えたくないけど、もしかしたら体の関係があったのかな……と勝手に想像して、どうしようもないやきもちを妬いて辛くなった。 俺、馬鹿みたいだ── 一人で悶々と嫌な気持ちになってきて、目の前で幸せそうに眠っている先生の鼻を思わず抓ってしまった。フゴッって変な音を出して慌てて起きる姿に俺は可笑しくて笑った。 「……ん? おはよ、志音……今なんかした?」 少し寝惚けながら先生がもぞもぞと俺に抱きついてくる。あどけない表情を見せる先生にまた頬が緩んだ。 「おはよ、先生。何もしてないよ。そろそろ起きよ…… 朝ごはん食べる?」 先程までの嫌な想像を頭から追いやり、先生の鼻先にキスを落とす。過去のことなんて俺には関係ない。これからのことを考えればいいんだ。 「んん、朝飯いらない……志音とまだこうしてたい」 甘えたような声を出し、先生の手が俺の服の中に入ってきて直接肌に触れる。慌てて俺は体を起こし、先生から離れた。 「なんだよ志音、逃げんなよ」 「ダメだよ先生。今日はデートしてくれるんでしょ? ドライブ連れてってくれるんじゃないの?」 俺、先生とのデート、楽しみにしてたんだ。あんな風にベッドにいたら、きっと一日中先生に抱かれて終わってしまいそうだと本気で思った。 先生は「あっ!」って顔をしてのろのろと体を起こす。もしかして忘れてたのかな? 昨晩先生が自分で言ったんだよね? 「ねえ今さ、面倒くさい……って顔しなかった? 俺とデート、嫌?」 わざと怒った風に言ってみると、ドタドタと俺の所まで慌てて来てくれた。 「嫌なわけねぇだろが。もうちょっと志音と一緒に微睡んでたかっただけだよ、ごめんな」 ふわっと抱きしめキスをしてくれた。一々先生は優しくて、俺はこんなに幸せでいいのかな? なんて思ってしまう。 「なあ、志音が作ってるそれは何?」 俺はキッチンで葉物の野菜とフルーツを適当に切り、ミキサーにかけてる。 「ん? 俺の朝飯……」 俺は大した料理ができるわけでもないし、いつもギリギリまで寝ているから簡単に栄養の取れるこのやり方を長い事続けていた。 最初は朝飯なんて食べてなかったんだけど、真雪さんに怒られてからは朝もちゃんと何かしら腹に入れるようにしている。 「え? さっき可愛く朝ごはん食べる? なんて聞いてこなかったか? ……まぁどっちでもいいんだがな。もし俺が食べるって言ったら俺もこれ飲まされんの?」 そう言ってミキサーを指差す先生。明らかに嫌そうな顔。 「ふふ……そんな顔しないでよ。先生が食べるって言うなら卵とベーコンでも焼いてパン出そうと思ってたよ」 先生が俺の事ジッと見てる。なんだろう? 「俺、やっぱり朝飯食べる。志音作って!」 さっきいらないって言ったのに…… 今更ちょっと面倒だなって思ってしまった。 「あっ、志音嫌そうな顔した! 作ってよ! 俺は志音のエプロン姿が見たいんだよ」 カウンターの回転椅子に座り腰をグルングルンして駄々っ子みたいに口を尖らす。 「もう……しょうがないな。作ってやるから待ってて……」 俺は先生のご所望のエプロン姿で、スクランブルエッグとベーコンを焼き、トーストとヨーグルトを用意してやった。 こんな簡単なものでも凄い嬉しそうな顔をしてちゃんと手を合わせて「いただきます」と言ってくれる。美味しいと言ってガツガツ食べる先生の姿を見て、こういうのやっぱりいいなって思った。 先生のためにもうちょっと料理も覚えてみようかな……

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