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何度言っても言い足りない…

「ねえ! 俺買い物がしたい。どっか雑貨屋さんないかなぁ。どこでもいいんだけど…… 」 帰りの道中で突然思い立ち、俺は先生にそう言った。 「もう少し行くとアウトレットモールがあるよ。そこ行くか?」 「賛成!」 到着したアウトレット。ここもやっぱりそんなに混んでなく、ゆっくりと順に店を見て回れた。 いい感じの雑貨屋を見つけて俺は足を止める。 「志音は何を買いたいんだ?」 先生は俺に合わせて何も聞かずについて来てくれたけど、流石に俺が何を買いたくてここに来たのか気になったらしく、ついにそう聞かれてしまった。 「先生が俺の部屋で使えるマグカップ。先生コーヒー好きだろ? それにね、箸とか茶碗とかお揃いで買いたいんだよ……俺の部屋、これからは沢山来てくれるだろ?」 「お前なぁ、そういう事を大きな声で言うんじゃないよ……しかも可愛い笑顔で」 照れながら先生はそう言うけど、男に向かって可愛いとか言っちゃってる方が恥ずかしいでしょ。 「もう、そんなんどうでもいいから、先生も一緒に選んで! どれがいい?」 なんだか沢山あり過ぎて迷ってしまう。俺はひとつひとつカップを手に取り、先生に聞いた。その度に先生は赤くなりながら「何でもいいよ」と適当な返事。 「志音ってば女子かよ……俺、このシンプルなやつがいい」 俺がこれはどうか? といくつか先生に見せていたら、やっと選ぶ気になってくれたのか、、黒くて英語がツラツラっとプリントされてるマグカップを指差した。 「じゃあ、俺はこれね 」 先生は黒、俺は色違いの赤のカップ。やっと決まった。しかも先生が選んでくれた物。 「ふふっ……新婚さんってこんな気分なのかな?」 嬉しくて思った言葉がそのまま口から溢れ出る。 「志音? 大丈夫? ちょっと浮かれすぎだろ。別に同棲するわけじゃないからな。下手したらバカップルに見られるぞ……」 わかってるよ。 嬉しいんだから しょうがないじゃんか。 俺はお揃いのマグカップと先生の部屋着のスウェットを購入して大満足だった。 買い物を終え、また車に乗り込み地元へ戻る。 「一旦部屋に戻って荷物置いたらさ、飯食いに行こ。俺がご馳走するよ」 先生にそう言われ、また浮き浮きしながら部屋に帰った。 買ってきたマグカップをキッチンで一度洗おうと水を流していると、先生に後ろから抱きつかれた。 「ん? 先生どうしたの?」 「今日は一日中、志音が可愛くてたまんなかった……いつもデートの時ってあんなんなの? あんな可愛いの、他の奴に見せてたかと思うと妬けて妬けてしょうがないんだけど」 そう言って、俺の腰に回す手に力が入る。 バカだな…… 「俺、デートでこんな楽しくて浮き浮きしたの先生が初めてだよ? ねえやめてよ、そんなこと言ったらさ、俺だって……」 言いかけて、今朝先生の寝顔を見ながら感じた焼きもちと悶々とした嫌な気持ちを思い出してしまい、悲しくなってしまった。 先生の方に向き直し、ギュッと抱きつく。 「俺……もっと昔に先生と出会いたかったよ。そしたらこんなに先生の過去にまで焼きもち妬かなくてすんだのに……」 泣きたくなるほど好きだなんて初めてなんだ。我ながら女々しい。でも初めてなんだからしょうがないだろ。 先生が俺の頭に手を乗せる。 「なんだ? 志音は俺の過去にまで嫉妬してくれてんのか?……ごめんな、叩けば埃しか出ないけど、今はもう志音しか見えないんだから……信じてくれ……な?」 そう言って先生は肩から俺の顔を離し、額を合わせてにっこりと微笑んだ。 「ほんとに志音が愛おしくてしょうがないよ……」 呟きながら先生は俺の頬に手を添えて優しく優しくキスをする。こうやって優しくキスをされる度に、俺の中で先生の存在が大きくなって、安心感が増していく。 何度言っても言い足りないや…… 「先生……大好きだよ」

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