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一週間の始まり
また新しい一週間が始まる。
昨晩は先生は帰ってしまった。てっきり連続して泊まっていってくれるもんだと思っていたから、ちょっと寂しかった。だけど先生は俺より早く学校に行かなきゃいけないし、色々と準備もあるよね。
しょうがない……
初めて長い時間を先生と二人で過ごしてしまったから、なんだかすぐに先生が恋しくなってしまう。近くなればそれだけ欲が湧いてくる……もっと一緒にいたい。もっと俺のことを見てほしい。俺に夢中になってほしい……そう、こういう思考もわがままなのはちゃんとわかっているんだ。
俺も早く支度して学校に行こう──
教室に入るなり荷物を置いて、俺は真っ直ぐ保健室へと歩く。ガラガラと扉を開けるとコーヒーのいい匂いが鼻を擽った。
「先生おはよう」
声をかけたら先生が驚いた顔をして俺を見た。
「早いね……どうしたの?」
どうしたの?って……
そんなの先生に早く会いたかったからに決まってんじゃん。
「ん? 別に。早く来ちゃマズイの? 俺の勝手でしょ」
先生の素っ気ない態度にムカついて嫌な言い方をしてしまった。先生をチラッと見ると少し寂しそうな顔に見え、申し訳ない気持ちになる。
「教室行ったら俺が一番だったよ。早すぎたかな?」
ベッドに腰掛け、先生に笑いかけた。
「どうして早いのかなんて、先生に早く会いたいからに決まってんじゃん……どうしたの? なんて聞かないでよ、わかってるくせに」
そう言うと、やっと先生が笑ってくれた。
「昨日話したCMの仕事ね、撮影今週なんだ。でも時間的に学校休まなきゃいけないからしばらく先生に会えないね」
「じゃあ夜、志音の部屋に行くよ……」
凄い嬉しい事言ってくれる。
「嬉しいんだけど、ごめんね……泊まりなんだ」
「そっか……ならしょうがないな。頑張ってきなね」
……なんだろう。なにか物足りない。
「ねぇ先生……」
ん? って俺の顔を見る先生に、恥ずかしいけど言ってみた。
「先生、頭撫でて……」
途端に顔を赤くして先生が俺に抱きつく。
「なに急に可愛いこと言ってんの! ここ学校だぞ。俺、今はちゃんと保健医モードになってんのに」
何だよそれ。保健医モードって……
でも先生はギュッと抱きしめて髪がくしゃくしゃになるくらい頭を撫でてくれた。
うん、これで先生の補充完了。
「じゃ、教室に戻るね。ありがと先生」
俺は満足して教室に戻った。
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