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仕事終了

次の日も撮影は問題なくスムーズに終わり、早めの解散となった。 真雪さんは終始ご機嫌で「いい仕事ができたわ」と俺の頭をクシャクシャにする。 真雪さんが喜んでくれると俺も嬉しかった。 宿泊先のホテルに戻り、携帯をチェックすると先生からメッセージが何件か届いていた。 『学校で志音の姿が見られないと寂しい』 『保健室のドアがノックされる度に志音かと思って期待してもムサい野郎ばっかでウンザリする』 『いつ帰ってくるんだっけ?』 『志音が帰ってくる日は部屋に行くから』 ………こんなのばっかり。 先生、どんだけ俺の事が好きなの? 可笑しくて思わず携帯に向かって笑ってしまった。 「バカだな全く……」 先生も俺も、浮かれすぎだよね。 そんな俺を見た真雪さんが不思議そうな顔をしてこちらを見ている。 「あ、こないだ話した人から。俺に会えなくて寂しいんだって」 手に持った携帯の画面を遠巻きに見せてそう教えると、真雪さんはクスッと笑った。 「よかったわね。最近志音、表情が柔らかくなってきたのはその人のお陰かしら? でも、気をつけなさいよ。まだ影響はあまりないと思うけど、メディアに出るようになれば少なからず周りの目が出てくるから……」 そんなのわかってる。それが嫌だからあんまりこういう仕事はしたくないのにな。 「……わかった」 俺は適当に返事をした。 まだ学校の時間……今日は確か体育祭の日だったはず。 そう思いながら、俺は携帯を取り出した。 『今日帰ります。先生来るの待ってるよ』 そうメッセージを送ると間髪入れずに返信が届いた。 先生、体育祭の最中じゃね? 全く何やってんだか。 それでもやっぱり嬉くて、早く会いたいと思ってしまう。 夕飯は頑張って俺がまた作ろうかな? 明日は休みだし、泊まってくれるかな。 帰りの車の中で真雪さんがスケジュールの話だか何やら話していたけど、俺は上の空でたいして話を聞いていなかった。 俺の頭の中は、先生のことと今晩の夕食メニューでいっぱい。 俺が作れるもの…… たいしたもの作れないから、適当に買い物をしなくちゃな。 冷蔵庫は何が残ってたっけ? ビールはあったかな? こんな事を考えているだけで幸せに感じる。先生と会えるのが楽しみになってきた。 しばらくすると、呆れ顔の真雪さんに気が付いて思わず苦笑い…… 「志音? 大丈夫? にやけっぱなしで気持ち悪いわよ。全くいい男が台無し。どうでもいいけど、仕事はちゃんとしてよね」 あまり話を聞いていなかったのがバレていたのか、また軽く怒られてしまった。

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