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体育祭の真実

体育祭が終わってからの休み明け。俺は今日はいつもより早めに学校に着いた。 先生が泊まっていってくれると何故か安心できてグッスリと眠れるので、翌朝はとっても寝起きがいい。 先生は俺の安眠剤だ── 廊下を歩いて行くと、教室の前で誰かが何か揉めている。 よく見ると、康介君が先輩らしき人と口論をしていて、その少し離れたところで別の先輩が竜太君の肩を抱いて何かを言っていた。 明らかに様子がおかしかったから俺も二人に声をかけた。 「ちょっとなにやってるの? 竜太君、教室はこっち! 先輩、誰? 離してください」 その先輩からぐいっと竜太君を離し、自分の腕に抱き寄せる。 「竜太君、早く教室行こっ」 そう言ってさっさと竜太君を連れて教室に入った。明らかに竜太君は元気がないし、あんなに親しげに竜太君の肩を抱く先輩、周さんが見たらどうなっていたことやら…… 教室に入ると、すぐ後に不機嫌MAXな康介君が入ってきた。 いったいどうしたんだろう? 「ありがとう、康介。志音、助かったよ……」 竜太君が俺らに礼を言うけど、俺は状況がよくわからないまま。 「ねえ今の誰? 二年? 三年? 竜太君の知ってる人……じゃないよね?」 聞いても竜太君は知らない奴だと言う。 はぁ? 知らない奴があんな馴れ馴れしくしてくんの? 「竜も! あんなのダメ! もっと強気で拒否らないと!……まあグイグイくるからビビったけどさ」 康介君はそんな竜太君を怒ってる。 「うん……ごめんね。ほんと、あんなに直球で来るとは思わなくて僕もびっくりした。次からは気をつける」 ……? なに? 何かあったの? 俺が意味がよくわからない顔をしていたのがわかったのか、簡単に康介君が説明してくれた。 体育祭での出来事と、先輩達の理不尽なお遊びの話を── この学校の体育祭では二年と三年が賭け事をするらしい。入学したばかりの一年はその事実を知らない。何故ならその賭けの「景品」が一年生の中から選ばれた一人だから。 景品が選ばれた一年生。 選ばれた一年との一日デートを賭けて、参加者は金を払う。 優勝した組の中から、その一年生が一人選んでデートをする。 賭け金がデート資金になるんだって。 賭け金は一人500円。 今年集まったデート資金は50,000円超え…… 景品になる一年生は、文化祭とかで写真部が沢山撮った写真を後夜祭でスライドショーをした際に先輩達がそれを見て選んで決めるらしく、運悪く女装で可愛い姿を晒していた竜太君が選ばれてしまったらしい。 そして今日から一週間、優勝した青組の先輩達からの求愛行動に追われることになる竜太君。 「はぁ? なにそれ? 誰がそんな馬鹿な事考えたの?……暇なの? アホなの?」 俺は思わず叫んでいた。 理不尽な上にバカバカしい…… あ、そうか。だから体育祭の練習も凄かったんだ。 で、竜太君のために周さんが必死になって練習してたんだ。 あれ? 周さんは何組だ? 康介君に聞いたら周さんは紅組。でも優勝した青組には、康介君のお兄さんの陽介さんがいるみたいだから、竜太君は陽介さんを選ぶ事になっているんだって。 おまけに陽介さんは、圭さんと付き合っているから安心でしょ? なんて言われて心底驚いた。 陽介さん、圭さんと付き合ってたんだ…… 全く気づかなかった。 少し安心するも、求愛行動は一週間もあるみたいだから、今みたいにならないように竜太君は絶対に一人にならないように注意しないと……そう康介君と話し合った。

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