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まわりの目、優しい手

あの取材の日から一週間くらい経ったのだろうか? 俺はテレビはあまり見ないから、朝のワイドショーで放送された事にも気が付かず、いつものように学校へ行った。 今までも散々視線を感じていたけど、今日のは明らかに違っていた。 テレビ見たよ、とか明るく話しかけてくれる奴はいい。なんだか影でコソコソ言われるのはイライラした。 教室に入ると康介君と竜太君がいて、俺に気がつくと軽く手を振ってくれる。 いつもと変わらない光景。 「おはよう」 いつものように俺がそう声をかけると「おはよう」と返してくれる。 「テレビ見たよ。志音かっこよかったよ」 竜太君はそれだけ言って、普段の他愛ない話に戻った。 普通に接してくれるのがありがたい。竜太君と康介君と喋っていると、普段あまり喋ってない奴らに囲まれてしまった。 「なぁ、仁奈とCMだけならともかく調子にのって何でテレビになんて出てんの? タレントにでもなるん? それとも俳優? 志音はさぁ、何目指してんの?」 「………… 」 なんだか棘のある言い方。何目指してるかなんて余計なお世話だし、こいつ何様? 話すだけ時間の無駄。 「なに? お前ら言い方ムカつくね」 俺が無視していたら、康介君が今にもキレそうになってしまった。 「康介は関係ねぇじゃん! 外野は黙ってろや」 ちょっとちょっと……やめてくれよ。 「関係なくねぇよ!俺、志音と友達だもん。朝から気分悪いからお前ら向こう行っとけ!」 友達…… 康介君が吐き捨てた言葉にはっとさせられる。 「……ごめん、康介君ありがとう。俺、ちょっと出る」 「え? 別にごめんじゃねぇだろ? なに? どこ行くの?」 「………… 」 今更だけど、康介君の言葉に嬉しくて泣きそうになってしまった。 妬みや僻み、意地の悪い事は沢山言われた。そんなの言われ慣れているし屁とも思わない。でもこういう優しい言葉は慣れてないから…… 大したことないんだろうけど、なんか胸にグッとくるものがある。 まわりからの視線にもいたたまれなくなっていた俺は急いで保健室へ向かった。 「……先生ごめん、休ませて 」 それだけ言うと、顔も見ないで俺はベッドに潜った。 「志音? 大丈夫か? 」 先生が心配してくれてる。 「………… 」 先生は机に向かったままで俺の方へ話しかける。 「今朝のテレビ、見たぞ。朝からいいもん見た。 志音ちょっと緊張してた? 頑張って笑顔作ってたな。可愛かったぞ」 ケラケラと笑って先生は続ける。 「また注目浴びちゃうな……でも、あまりよく思ってない奴らなんかもいるから、気をつけろよ。なるべく一人でいるなよ」 俺は起き上がり、ベッドに腰掛けた。 「うん。さっきもクラスの奴らに嫌味言われた……でも康介君が庇ってくれてさ、すげえ嬉しくて……ここに逃げて来ちゃった」 先生が振り返る。 「逃げてきたって?……あぁ、また泣きそうになっちゃって…… 」 俺の方へ慌てて歩いてきた先生が、俺の頭を優しく撫でる。 「相変わらず、泣き虫だな。少し休んでけ」 そう言って、カーテンを閉めてくれた。 なんか疲れたし、ほんとに少し休んでこう。 またベッドに潜り込み、俺は目を瞑った。

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