誰かが先生と喋ってる── 「……だろ？ ……ねぇな………じゃねぇの？」 知らない声。 俺は微睡みながら、少しだけ布団から顔を出した。 「そうそう、一年。 志音っつったっけ？ あんなのどこがいいんだか。ただひょろっとデカくてさ、何であんなにチヤホヤされてるんだか不思議だよな 」 「仁奈のあのポスターもあいつなんだろ？ 調子乗り過ぎだっつうの！」 目が覚めた俺は、カーテンの向こうから聞こえる会話に聞き耳を立てる。先生の前で言いたい放題言いやがって、寝覚めが悪い。 「そんな事言わないの。僕は知ってるよ……志音くん、凄い努力してるしいい子だよ」 優しくフォローしてくれる先生の声が嬉しかった。 「はぁ？ 先生目ぇおかしいんじゃねぇの？ あいつ生意気だって有名だよ。あんなのの肩持つことねぇって」 俺は自分のことを言われるのはなんてことないけど、先生をバカにされるのは堪らなく嫌だと思った。 「おはよう先生。うるせぇから目が覚めちった……あれ？ 先輩？ 見たことねぇけど先輩だよね？ 人がせっかく休んでるのにさっきからうるせぇんだよ。僻みかな？ 悪いけど俺、あのCMだって好きでやったわけじゃないからね。仁奈が俺じゃないと嫌だって言うからしょうがねぇじゃん？ それにさ、ただひょろっとデカイだけじゃねーから。一応鍛えてるし、あんたらみたいに贅肉だらけじゃモデル出来ないからね」 思いっきりまくし立ててやったら、先生に睨まれた。 「ほら！ 志音くんもやめなさい！……そもそも君たちが志音くんの悪口言ってたからでしょ！ 保健室で喧嘩なんてさせないからね！」 俺の悪口を言っていた先輩二人の背中を押し、先生は保健室から追い出した。 扉を閉めてから俺の方を振り返る。 あ…… 顔が怒ってる。 「……なんだ今のは？ あの態度はダメだろ！ ただでさえ志音は目立ってんだから、ああいうのは堪えないと……逆恨みされたらどうすんだ？」 「だって、俺の事だけならともかく、あいつら先生の事バカにしてんだもん！ムカつくじゃんか！ 」 少し呆れたような顔をして、先生が俺の頭をガシガシと撫でた。 「ほんと、心配だから……ああいうのは我慢してくれ。ケンカ売るような事しないでくれよ。な……？」 「大丈夫だよ。俺だって仏様じゃねぇんだから、ムカつく時だってあんの！」 先生が優しく宥めてくれるけど…… やっぱりイライラは治らない。 「俺、教室戻るね。最近またサボってるから、そろそろちゃんとしないとね。先生庇ってくれてありがとう」 一応お礼を言って、俺は保健室を出て教室へ向かった。