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嫌な予感
朝のワイドショーであの放送があったせいでまた志音に注目が集まる。
でも正直そこら辺の若手イケメン俳優達なんかより、志音はずっといい男だった。
今日はいつもよりちょっと遅めに志音が保健室に来る。
思った通り機嫌が悪そうだった。
きっと教室でも何か言われたんだろうな。
大丈夫か? と声をかけると案の定、クラスの奴らに嫌味を言われたと元気なく言う志音。でも康介君が庇ってくれて、嬉しくて逃げて来たって……
あぁ、また泣きそうになってる。
同年代の友達に庇ってもらったり優しくされたり……きっとこういうのには慣れてないんだろうな。
俺はそんな志音が愛おしくてしょうがなかった。思いっきり甘やかしてやりたいって思ってしまう。
「相変わらず、泣き虫だな。少し休んでけ」
そう言ってカーテンを閉めてやると俺は仕事に戻った。
机に向かってしばらくすると、保健室のドアが開いた。
入ってきたのは三年生の二人組。
こいつらは確か志音のアンチだ……
椅子に座るなり志音の悪口が始まった。
すぐそこに志音がいるっていうのに、黙れよこのガキ。うんざりしながら志音を庇う発言をしたら、更に酷くなってしまった。いい加減追い出そうと思ってたら、キレた志音がベッドから出てきてしまった。
嫌味全開でまくし立てる志音。
やめろよ……こいつら根に持ちそうなタイプだぞ。
志音を睨み、これ以上酷くならないように三年二人を無理矢理保健室から追い出した。
気持ちはわかるけど逆恨みされたらどうするんだよ。志音にそう言うも、イライラしながら俺のことをバカにしたから怒ってるんだと怒鳴られてしまった。
「だって、俺の事だけならともかく、あいつら先生の事バカにしてんだもん! ムカつくじゃんか! 」
その気持ちは嬉しいけどな、俺の事なんてどうでもいいんだよ。
まったく……
「ほんと、心配だからああいうのは我慢してくれ……自分からケンカ売るような事しないでくれよ。な?」
本当に心配だった。
ああいう風に、志音のとこを快く思ってない奴らだってたくさんいるはず。
「大丈夫だよ! 俺だって仏様じゃねぇんだから、ムカつく時だってあんの!」
心配してるのに、志音はイライラしたまま保健室を出て行ってしまった。
志音、本当に大丈夫かな?
なんだか嫌な感じがしてしょうがない。
チャイムが鳴ってすぐ、俺は一年のフロアに向かった。
もう休み時間だ。
教室にいるだろう……
そう思いながら、廊下から教室内にいるはずの志音を探す。
「あれ? 珍しいですね。どうしたんですか?」
後ろから声をかけてきたのは竜太君だった。
「朝、志音が保健室行ったんで、今迎えに行こうと思ってたんです……なんか志音の事を悪く言う奴とかいて教室に居づらそうだったから」
心配そうに竜太君が俺に話した。
「……?」
え?
「なぁ、志音くんまだ教室に戻ってないのかい? 保健室からはとっくに出て行ったんだけど……」
嘘だろ? 胸がドキドキして苦しい。
寄り道してる?
他で休んでる?
どこ行った?
「せ、先生? 大丈夫ですか? 顔色が……」
竜太君の声が遠くで聞こえる。
「あ、保健室戻るね。竜太くん、ありがとう……」
とりあえず、携帯だ!
なんで俺、携帯 保健室に置いてったんだろう。
携帯……携帯……
保健室に戻り、机の上の携帯を掴む。
指が震える。まさかな、ただ他の場所で休んでるんだよな?
何度電話をかけてみても志音が出る事はなく、俺の願望虚しく呼び出し音だけが鳴り続けた。
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