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修斗さん
保健室の前まで来ると、ドアのところに「外出中」の札が掛かっていた。
「あれぇ? 何これ、外出中だって。今までこんな札あったっけ? 見たことねぇよ」
修斗さんが札を手に持ち、しげしげと眺める。
先生がいなくて何となくほっとする。でも先生、どこ行ったんだろう?
「あ? でも鍵掛かってねえじゃん。とりあえず入っとこ 」
修斗さんは外出中の札を元の場所に戻すと中に入る。俺は修斗さんに促され、ベッドの上に腰掛けた。
「本当に大丈夫? ……見せてみ? うわぁ、痛そう! でも、顔は無事だな、よかったな 。ん? よかったって言っていいのか? 悪りぃ……」
修斗さんは甲斐甲斐しく俺の事を面倒みてくれる。取り敢えず気持ち悪いだろうから体を拭けと言って、俺のシャツを脱がせながら温かいおしぼりを取ってくれた。
「大丈夫です。ほんと、すみません……」
それにしても、先生はどこに行ってしまったんだろう。
ベッドに腰掛けた俺の隣にトスんと修斗さんも腰を下ろす。そしておもむろにポケットから三台の携帯をバラバラと落とした。
「……これ修斗さんの?」
「いやいや、まさか。いくらなんでもこんなに持ってねぇし。さっきの奴らのだよ。なんか写真やら動画やら撮ってたみたいだからさ、こういうのは没収だろ?」
そう言って修斗さんは笑った。
「ありがとうございます。修斗さんって強いんですね。驚いた…」
いつも何を考えてるかわからない雰囲気でヘラヘラしてるし、体の線も細くて色も白く女性的にも見えるこの人は正直強そうには見えなかった。
だから、あんなにいとも簡単に体の大きな相手を叩きのめしたのを見て驚いたんだ。
「あー、志音君ってば見た目で判断しちゃダメだよ。俺、そこそこ強いからね。頼りにしていいよ」
屈託無く笑うその顔はむしろ可愛くて、助けてもらったんだけど複雑な気分になってしまった。
「あ、修斗さん俺トイレ行ってきますね」
俺はトイレに行くのに一旦保健室を出た。
用を済ませ、また保健室に戻ると修斗さんが俺の携帯を持っている。
「それ……俺の携帯」
「あ、ごめん。今電話鳴っててさ、無視してたんだけどしつこく鳴ってるから代わりに出たよ……高坂センセだった。 なんか心配してたみたいで、今から戻るってさ」
電話……
あ、俺先生の登録の名前、「陸也」にしてる……変に思われたかな?
でも、修斗さん何もその事に触れないや。
気付かなかったかな?
まぁ、いいか──
「志音君、センセー来るからもう大丈夫だよね? 俺そろそろ行くね。あいつらの携帯はさ、センセーになんとかしてもらいなね。データの削除とバックアップの方も」
急に立ち上がり、そう言って修斗さんは保健室を出て行った。
俺は一人、保健室のベッドに腰掛けて自分の携帯を眺めた。
……先生、心配してくれたんだ。
悪い事しちゃったな。
戻って来たら謝ろう。
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