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失言
先生はそのまま俺の中へググッと押し入ってきて、俺の気持ちのいいところを探るようにグイッと腰を動かす。
いきなり最奥へと突き立てられ、体が仰け反った。
「や……いきなり、んんっ……奥まで……はぁ……あ…… 」
強い快感に堪え切れず先生の首にしがみつき顔を埋める。
「ソファ、狭っ 」
先生はそう呟いて、おもむろに俺の腿を抱え込んだ。
ズンっと深く突き入れられたかと思ったら、体がフワッと宙に浮く。
……?
「んぁっ! ……え? ……ひぁっ……あっ、まじで?」
先生は俺に挿入したまま俺を持ち上げ、いわゆる駅弁スタイルで立ち上がっていた。
あっ、これダメっ……
先生にズンズンと突き上げられ、揺さぶられ、俺は今まで味わった事のない感覚に襲われる。
「やだ、待って……ひぁっ……怖いっ……あ……あっ」
あれ? 移動してる?
気づいた時には、俺はベッドに落とされていた。
凄い。あのまま寝室まで移動したんだ……
「さすがにずっと抱っこしてるわけにもいかないからな」
先生はそう言って笑うと、また俺に覆い被さりキスをする。
その後はいつものようにベッドで先生は優しく激しく俺を抱いてくれ、二人で欲を吐き出した──
俺は先生の胸に抱かれていつものように微睡んでいる。
「ねぇ陸也さんって凄い力持ちだよね?……前にも思ったけど、凄いよね」
俺をお姫様抱っこしたり、さっきみたいな体位だったり…… そういえば酔っ払った俺をおんぶで家まで運んでくれたこともあったな。
「いや、だって志音は軽いもん。余裕だよ。悠なんかもっと重いし…… 」
「……え? 悠さん?」
なぜか引き合いに出された悠さんの名。先生の胸から顔を上げると真顔になった先生と目が合った。
あ、これ……なんかダメなやつ。でもこんな顔されたら俺は黙っていられなかった。
「なに? 陸也さん、悠さんともこういう関係だったの? どういう事?」
……薄々感じてたんだ。先生と悠さんの関係。きっとつい口が滑っちゃったんだろうな。気まずそうな顔で、先生は俺と目を合わせられないでいる。
「あ……いや、その……ちょっとだけ昔な。志音と出会うずっと前。今は違うぞ! 誤解すんなよ!」
「そんなのわかってるよ……そっかぁ。悠さんと付き合ってたんだね」
先生と悠さん。お似合いだし、俺の知らない先生の過去が知った相手ならまだ少しは気持ちも紛れる。悠さんなら凄くいい人だし、俺も好きだし、悠さんが相手ならしょうがないかって気持ちにもなれるから……
でもやっぱり複雑な気分で俺がそう言うと、先生は大きく首を振った。
「違うよ。悠とは付き合ったことはない」
え…?
「なにそれ……付き合ってなくて……体の関係だけって事?」
先生は当たり前のようにうんうんと頷く。
悠さんの先生を見るあの目……あの態度。多分悠さんは先生の事が好きだったはず……
なんだこの感情。
俺にはもうどうする事も出来ないけど、本当の事は何もわからないけど……とにかく無性に腹が立った。
先生、鈍感すぎるよ。
「俺、帰る!」
先生がキョトンと俺を見る。
「へ? 帰るって……ここ志音の家だよ?」
そうだった! 間違えた!
「陸也さん、もう帰っていいよ!」
「えぇ? 何でだよ、怒ってんの? ごめんって……」
先生に怒ってる?
違う……
当時の悠さんの気持ちを考えたら、なんだかどうしていいのかわからなくなった。いや、俺は先生の事が好きだからどうしようもないんだけど……
とにかく俺は今は先生の顔を見たくなかった。
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