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ひとり

つい口が滑った…… とんでもないことを喋ってしまった。 本当に無意識だったんだ。 自分のデリカシーのなさに嫌気がする。 志音に部屋を追い出された。 そりゃそうだ。当たり前だ。弁解のしようもないし、ひたすら謝るしかない…… でも、怒って当然なのに、志音はあまり怒っているように見えなかった。志音も悠と仲がいいから? 俺の気のせい? 俺の願望? とにかくほとぼりが冷めるまで、俺からは何も言わない方がいいと思い、下手に弁解とかするのをやめた。 部屋を追い出された俺は考え込みながら自然と悠の店に足を向ける。店に入るとカウンターに立つ悠と目が合った。 「あれ? こんな時間に珍しいね。いらっしゃい」 いつもと変わらず、笑顔で俺を迎える悠。 黙って俺はカウンターに座り、なんでここに来ちゃったんだと少し後悔した。 「あれあれ? 浮かない顔してどうしたの?……喧嘩でもした? いい男が台無しだよ」 笑いながら、悠が俺の頭を軽く叩く。 「………… 」 「……あれ? 結構深刻? 陸也、大丈夫?」 俺の雰囲気を察したのか、悠は真面目な顔で聞いてきた。 「うん、俺やっちまった」 ……あ、でもこれは悠に話してもしょうがない。 俺が何を言うのかと続きを待ってる悠を無視して、話題をそらした。悠は不思議な顔をしたけど、これ以上は詮索せずに俺の話に合わせてくれる。 悠のこういうスマートな所、俺も見習わないとな…… そのまま当たり障りのない話を楽しんで、俺はほろ酔いで家に帰った。 誰もいない静かな部屋。スウェットに着替え、ベッドに腰掛ける。 ひとりが寂しい。 ……俺、何やってんだろな。 携帯の画面を眺める。 ……声が聞きたい。 志音はもう寝たかな? 俺は志音に「おやすみ」とメッセージを送ってからベッドに横になった。 次の日の朝、携帯を見ても志音からの返信は無かった。 いつものように学校へ行き、保健室へ入る。朝からチラホラと生徒がやってくるけど、やっぱり志音は来なかった。 恋愛相談、昼寝、お喋り…… ぼんやりと暇な奴らの相手をしながら、気づけばもう放課後になっていた。 今日は志音、来なかったな…… 学校には来たのかな? 俺は一日中、志音の事で頭がいっぱいだった。

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