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仲直り
涙が止まらなくなってしまった俺に、悠さんは戸惑いながらずっと慰めてくれていた。
みっともない。
酷く情緒不安定だ。
悠さんの事、先生の事、仕事の事、友達の事……
何故だかいろんな事がぐるぐるし始めて、自分でも何が何だかわかんなくて泣いている。
「志音、大丈夫か? もう泣くなって。大丈夫だぞ? お前はちゃんとみんなから愛されてるから……安心しろ」
うん、うん……ありがとう。
カウンターの端で、しばらく俺はバカみたいに泣いていた。
そんな中、店のドアが開き客が一人入ってくる。
悠さんは顔を上げ、俺の頭をポンと叩いた。
「ほら、お前の涙の元凶が間抜け面してノコノコ来やがったぞ」
振り返るとそこには先生が立っていた。先生は俺の顔を見るなり急に怖い顔になる。
「おい! なに志音泣かせてんだよ! ……志音に何した? 悠!」
結構な剣幕で悠さんに突っかかる先生に驚き慌てて止めると、そのまま先生は俺をギュッと抱きしめた。
「馬鹿じゃないの? 誰のせいだよ! 悠さんは俺の事慰めてくれてたの! 泣いてんのは陸也さんのせいだろ! この馬鹿っ!」
俺の事を抱きしめる先生の腕から逃れると、俺は頭にきて怒鳴ってしまった。
「俺、あんな事聞きたくなかった! 陸也さんのせいで悠さんにも迷惑かけちゃったんだから、謝って! 今すぐ! 俺と悠さんに!」
俺が言うと、シュンとした先生は悠さんに向かって深々と頭を下げた。
「ごめんな……迷惑かけた」
悠さんはションボリしている先生を見てクスクスと笑っている。
「志音……本当にごめん。怒らないで。俺が悪かったから……もう泣かないで」
先生の温かい手が俺の頬に触れる。
指先で涙を拭い、俺の事をフワッと抱きしめてくれた。
だから……
他の客もいるんだから恥ずかしいだろ……
でも、嬉しい。
先生、ちゃんと来てくれた。
俺は先生の背中に腕を回すと「怒ってごめんね。ありがとう」と小さくそう呟いた。
カウンターの中から悠さんが声をかける。
「もういい? 陸也のベタ惚れっぷりに鳥肌たつよ。お前そんなキャラだったんだな。面白いもん見た」
ニヤニヤしながら悠さんは先生にそう言った。
「ほんとごめんな。志音の事ありがとうな」
気まずそうな顔で先生は悠さんにそう言うと、俺にコートを着せ外に出ていく。
「悠さんありがとう。ごちそうさま……また来るね」
支払いを済ませ、俺は店から出て先生を追った。
もうこんな時間。
人影はほとんどなく、静かなこの場所には俺と先生だけ。先生は俺が追いつくのを少し先で待っててくれていた。早歩きで追いつくと、先生は俺の手を取り黙って歩き始める。
「……陸也さん?」
手を繋いだまま黙々と歩く先生の顔を覗くと、気まずそうな顔で俺の顔を見た。
「ほんとごめんな。俺には志音だけだからさ……信じてよ」
繋いだ手にギュッと力が入る。
ちょっとだけ情けない顔をして笑う先生が可愛くて愛おしくて、俺も手をギュッと握り返した。
「俺もだから安心して、陸也さん」
いっぱい泣いたからか、気持ちがちょっとスッキリした──
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