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二人で食事を

しばらく待っても志音は現れなかったので、真雪さんと二人で食事を始めた。 俺の保健医としての仕事の話…… 志音と出会った時の話。 付き合い始めた頃の話…… 俺の家族の事。 真雪さんは俺に色々と聞いてきた。 俺も何も隠すことなく素直に真雪さんに話をした。 真雪さんはとても砕けた物言いで、話も弾んだ。この人は人の話を聞くのも、話をするのも上手い。 頭が良くて魅力的で……凄く強い。 俺の真雪さんへの第一印象。 俺は正直女は苦手なんだけど、この人の場合不思議ともっと話していたいと思えてくる。 包容力? なんだろうな……この安心感。 会ったばかりの志音の境遇を見抜き、なんの躊躇いもなく自分の子として受け入れたのも、この人なら納得がいった。 俺の緊張もとっくに何処かへ飛んで行ってしまい、そのうちに俺は志音とのノロケ話を晒し始め、真雪さんをゲラゲラと笑わせた。 「高坂さん、気に入ったわ。随分と歳上だって聞いてたから少し心配だったの。志音は若くて綺麗でしょ? ふふ……でも志音の事をすごく大事にしてくれてるのがわかって安心したわ。真剣にお付き合いしてくれてるのよね? 嬉しい……志音の事をこれからもよろしくお願いします」 「………… 」 俺は若くて綺麗な男の子の体目当てのオッサンかと思われてたのか? でもよかった。 俺と志音の事、認めてもらえた。 真雪さんのひと言で、なんだか胸がいっぱいになってしまった。 話も弾みに弾んで、コース料理ももうデザートになっていた。 志音はまだこない。 ……どうしたんだろう。 「志音ったら何やってんのかしら。高坂さんのところにもメッセージ入ってないわよね?」 「はい。僕もさっきメッセージは入れておいたんですけど。こんな事初めてですよ」 本当に…… 約束をすっぽかしたり、連絡も取れなかったり…… 志音らしくない。 俺は志音が襲われた事を思い出し、不安になった。 この事はきっと志音は真雪さんには話してないだろう…… 言うべきだろうか? そう迷ったと同時に、俺の携帯がメッセージの着信を知らせた。

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