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言えない理由
申し訳なさそうな志音の声──
遠慮がちに俺の背中を撫でている手をそっと掴むと志音の方へ体を向けた。
「昨晩はどうしたの?……ゴメンねばっかでまだ理由聞いてないよ?」
横になって志音の手を掴んだまま、俺は聞く。
「………… 」
「なに? 俺に言えないような理由なの?」
志音は俺の顔を見つめたまま、黙り込んでしまった。
「俺にとったらさ、真雪さんに挨拶するのって凄く大事な事だったんだ。出来たら志音も一緒にその場にいてもらいたかった……」
「……ごめん」
やっぱり志音は、すっぽかした理由は言ってくれない。
「俺が真雪さんに挨拶する事以上に大事な用事だったんだろ? それじゃあしょうがないよな」
俺は少し意地悪な言い方をする。
でも、志音が俺に理由を言わないなら俺はこれ以上志音と話す事は無い……
「………… 」
俺はまた志音に背を向け目を瞑った。
しばらく黙ったまま志音はそこにいたけど、鼻を啜る音が聞こえ始め泣いてしまったのがわかった。
俺も大人気ないよな。
泣かせるまで拗ねてどうすんだよ。
泣きながら、志音は俺の背中にぴったりと寄り添ってきて背中越しに話し出す。
「陸也さん……ゴメンね……理由は言えないんだ、どうしても。約束したから。でも、信じて。俺だって昨日は大事な日だって思ってた……ほんとだよ。行きたかったんだ俺も。ごめんね、ごめん……陸也さん、ごめんね…… 」
あぁ…… もう!
俺の背中を濡らしてる志音の方へ向き直ると、俺は志音の頭を抱えて抱きしめる。
「ごめん、わかってるよ、ちょっと言い過ぎた。もう泣くな」
志音の柔らかな髪を撫でながら、涙で濡れている顔を手のひらで拭ってやる。
「陸也さん……俺の事嫌いになってない?」
俺の腕の中から濡れた瞳でそんな事を言うもんだから、可愛くて思わず笑ってしまった。
「……なんで笑うのさ!」
半分泣きながら、不満そうな顔で志音が俺の顔を上目遣いで覗く。
「ごめん、可愛くってつい……大丈夫だよ。こんなことで嫌いになんてならないから。大好き過ぎてごめんな」
そう言って志音の唇を指でなぞり、俺は唇を重ねた。
志音の舌を絡め取り優しく吸い付く。
俺のTシャツの胸元をキュッと掴む志音の手に力が入るのがわかる。俺は志音の舌を舐りながら、スウェットの中に手を滑り込ませた。
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