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大事なところは……甘えるな

次の日、学校だったけど俺は行くことができなかった。 この前のCMが放送された時だって、周りがうるさくてウンザリだったんだ。 また同じ目に合うのは目に見えていた── それでも真雪さんは学校にはちゃんと行きなさいと言っていた。 周りの目が気になるなら保健室で休ませてもらったっていいんだから……と。 でも俺、まだ先生に説明できてない。 それなのに、保健室なんて行けるわけがない。 そう思って俺は学校をサボってしまった。 午後からは仕事がある。 真雪さんの学校への迎えをなんとか誤魔化し、自分で事務所へ行き今日の仕事を終わらせた。 その後は真雪さんに送ってもらい、帰宅する。 部屋に入ると電気がついていた。 すぐにわかった……先生だ。 緊張しながらリビングへ進むと、キッチンで何かを作っている先生と目が合った。 「………… 」 「ただいま……陸也さん、来てたんだね」 「………… 」 陸也さんは俺の事を無視して料理を続けてる。リビングのテーブルを見ると、例の雑誌が置いてあった。 …….早くちゃんと説明して、謝らないと。何からどう話そう。頭の中がぐるぐるした。 その場で立ち止まって考えていると、丼を二つ持った先生がソファにドスンと座り、俺を見た。 「何突っ立ってんの? 晩飯まだだろ? とりあえず食えよ……」 怒ってるのかな……先生の表情がわからない。 でもちゃんと話さないと…… 嫌われたくない。 先生は美味しそうな親子丼を黙って食べている。 俺はどうしていいかわからず、立ったまま先生を見つめた。 しばらく黙々と親子丼を頬張っていた先生が俺の方を見ると、口を開いた。 「なあ、志音はこないだの土曜日、俺との約束すっぽかして女と浮気してたの?」 え…… 先生ならきっとわかってくれると思ってたけど、まさか浮気してたなんて言われるとは思わなくてショックだった。 「違う! そんなわけないじゃん!」 「俺よりもあの女の方が大事だったの?」 なんで? なんで? 俺が先生の事どれだけ大事に思ってるかわかってるでしょ! 「違うよ! そんなんじゃないって! 」 「なら、なんでちゃんと俺に説明しないんだ! なんで俺は志音からじゃなく他の奴からこの話を知らされなきゃならなかったんだ? ……俺はちゃんと志音の口からこの話を聞きたかった!」 あ……先生、怒ってる。 「もしかしてさ、志音。俺がなんでもわかってくれてるとでも思ってんのか? 愛してる……大事に思ってる、なんて言わなくてもちゃんと俺がわかってるって思ってねぇか?」 ……思ってる。違うの? 「俺は志音の事信じてるよ……信じてるしわかってるつもりだけどさ、大事な事はちゃんと伝えてもらわないと俺だって不安になるんだよ! 俺に甘えてもいいって言ったけど、そういうのは甘えるなよ。そういう大事なことはちゃんと言ってくれよ……お願いだよ……これ以上俺を不安にさせないでくれ」 そう言って先生は俯いてしまった。 ごめん……ごめんなさい…… 「ごめん! 陸也さん……ごめんね。俺、陸也さんの事大事だよ。嘘じゃない。愛してるし大好きだ。嫌われたくない……ごめんね。ちゃんと言わなくて……」 俺は慌てて先生のところへ寄り添い、抱きしめた。 「ちゃんと説明させて……聞いてくれる?」 「ん……もういいや。志音の事信じてるし。それより冷めちまうから、俺の特製親子丼早く食べてよ」 そう言って笑った先生の顔を見て、俺は胸が苦しくなった。 少しだけ目に涙が溜まってる。 先生の事、傷つけてしまった。 ごめんね…… 俺は先生のことを傷つけてばかりだ。 「ありがとう。いただきます」 俺は先生の横に座り、めちゃくちゃ美味しい親子丼を泣きそうになるのを堪えてゆっくりと味わった。

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