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奏人 1

快人…快人…。愛してるよ。 腰を動かす度に甘く啼く快人はただただ可愛くて、愛しい。 俺は間違ってなかった。これでようやく快人を純粋に愛せる。 快人にキスをしようと身を屈めた所で突然部屋のドアが開いて聡司さんが顔を覗かせた。 母さんを街まで車で送って行っていた筈だけど、帰ってきたらしい。 「もう始まってたのか」 「見れば分かるだろ」 快人の中を味わいながら邪魔するなよと睨み付けたけど、聡司さんは全く気にする素振りもなく部屋に入ってきた。 「奏人のタチなんてなかなか見れるもんじゃないから、見学させてくれよ。それにしても快人くん、相当出来上がってるね」 「あれと相性いいみたい」 快人に口付けをしたら、快人の腕が首に絡んで、俺の舌に夢中で吸い付いてきた。存分に絡めてあげて、また腰を動かしたら、快人の口からんーとかうーとかくぐもった声が洩れて、背中が弓なりに反った。 「凄いね…。初めてなのに。何ヒット使った?」 ソファのすぐ脇から声がして、名残惜しそうにする快人から唇を離した。 「3枚。すぐ吐き出されたけど、相当効いてるみたい」 「僕も混ぜろよ。これ使っていいから」 聡司さんの手には結晶を溶かした液体が入っている小瓶が握られていた。あれはかなり感度が良くなる。これ以上になったら、どうなるかな。 「なぁいいだろ?僕だって、ずっと快人を犯したかったんだから」 快人は今は俺だけの物だ。でも、俺の中では快人に対する2つの気持ちがある。 今だけでも独占したい気持ちと、めちゃくちゃにしてやりたい気持ちと。 今は…あの小瓶の誘惑に負けた。もっと乱れた快人が見たい。 「貸して」 ニヤリと笑った聡司さんから小瓶を受けとると、一旦快人の中から抜いて、クスリのせいでポッカリと弛んだままのそこに小瓶の液体を注いだ。 「聡司さんは俺の後だから」 すぐにベルトに手をかけた聡司さんに忠告して、液体が出てこない様に蓋をするみたいにすぐまた挿入した。 快人は恍惚として、俺が動く度に、叫ぶ様に呻いた。 粘膜から吸収されたクスリは、すぐに効いて、快人の身体は弛緩したり硬直したりを繰り返して、ビクビクと震えっぱなしになった。奥を突く度にイくのか、全身が波打って、性器からは壊れた蛇口みたいにトロトロと精液を溢している。 初めてのドラッグだったろうに、2種類使ったのはさすがに容赦なかったかな。 そう思ったけど、快人の中に残っていたクスリを俺も吸収したみたいで、俺の腰も2回出しても尚止まらなかった。 3回目を出し終えた後には、快人はもう声をあげる体力もないのか大分静かになっていたけれど、それでも身体は快楽に悶えて震え続けていた。 「ようやく終わりか?待ちくたびれたよ」 そう言いながらもスタンバイはばっちりな状態の聡司さんが、快人をベッドに運んで俺と入れ替わりに犯し始めた。 「見た目は同じでも、中はやっぱり少し違うんだな」 「どっちがいいの?」 「それは聞かない方がいいんじゃないか?」 「ふん!」 身体の内部まで俺は快人に負けているのか? さっきまでとは違う所を刺激されるためかまた激しく悶えて聡司さんの腕にすがり付く快人の仕草が可愛いくて、だからこそ憎々しい。 なんで快人ばかり愛されるんだ。 「聡司さん、バックでやってよ。銜えさせたいから」 「奏人、お前ガツガツしてるな」 「早く」 聡司さんが軽い快人の身体をひっくり返した。快人は力が抜けて身体を支えられないのか、くたっとうつ伏せになって、腰を上げられない。 聡司さんがそんな快人の背中に愛しそうにキスをして、骨盤を両手で支えて腰を持ち上げた。そしてまた揺さぶる。 「聡司さん、なんか扱い優しすぎない?もっと激しくしてよ」 「あんまり強くしたら失神するぞ」 「させればいい。すぐ起こしてやるよ」 「おいおい」 相変わらず生温く腰を動かす聡司さんに舌打ちして、快人の顎を掴んだ。 苦しそうに呼吸する快人の頬は上気して赤く、口の端からは透明の唾液を溢し、目は意思を持たずまるで白痴の様なのに、俺と目があった途端その小さな口が音なく「兄ちゃん」と動いて笑みを作った。 こんな扱いをされても、クスリを使われても、快人の本質は変わらなくて、それを愛しく思う半面どうしようもないくらいに憎い。 もう愛しいだけになったと思ったのに、聡司さんのせいだ。快人に優しくするから。 快人と兄弟じゃなければ。こんなに顔が似ていなければ、こんな複雑な感情を抱かずに済んだかもしれないのに。 口付けをすると、快人は嬉しそうに舌を絡めた。 聡司さんに揺さぶられ与えられる刺激に喘ぎながらも懸命に応え様とする快人が健気で可愛くて、顎までお互いの唾液でベトベトになるまで夢中で貪った。 「視覚的にクルねー。美しい双子の禁断の密事とかって銘打って売ったらかなり金になりそうだ」 聡司さんの言葉に顔を上げた。そういう事を聡司さんが言うととても聞き流せない。 「やめろよ」 「冗談だよ」 「あなたなら本当にやりかねない」 「まぁ確かにそういう伝もあるけどね」 「そういうのは困る」 「『快人』の不祥事はこれから奏人の不祥事になるもんな」 快人にゆるゆる腰を打ち付けながらニヤニヤと笑う聡司さんはやっぱり信用ならない。俺がいない間快人に何をされるかわかったもんじゃない。 ここでも快人がひどい目に遭えばいいと思う自分と、守りたい自分が半々で、どうしたいのか自分でもわからない。 「銜えさせるんじゃなかったの?してみせてよ。その方が3Pしてるって気分になるから」 「言われなくても」 微量でもクスリの効いた俺の性器は二人の交合いを見ているだけで結構限界だ。 快人の頭を無理矢理上げさせて、苦しくなった快人が手をついた所で弛んだ口にそそり立ったモノを突っ込んだ。 いきなり喉奥を突いたので、反射で喉が押し返してきて吐き出されそうになったけど、下を向かせない様に顎を固定してまた奥に捩じ込んだ。 快人、お前が悪いんだ。 お前が愛されすぎるから。 俺以外にも、沢山の人間に愛されるからいけないんだ。 俺がこんなに快人だけを愛しているのに、快人には俺以外にも沢山気にかける人間がいるのが悪い。 俺がこんなに汚れているのに、快人だけが何をしても穢れないのが悪い。 「おい奏人。そのやり方はあんまりじゃないか?快人が苦しそうだ」 「うるさい」 苦しくさせてるんだから。 俺は快人を誰よりも愛してるのに、時々憎しみが勝る時があって、そういう時には本当に殺してしまいたくなる。 輪姦されたと嘘をついて、面白いくらい俺の思い通りに動く快人を眺めるのは愉快だったけど、結果は俺の思った通りには行かず、快人は少しも汚れないし、嫌われないし、傷つかなかった。変態趣味のストーカーを演じて嫌がらせをしても、あのキモオヤジにレイプされたって、快人は相変わらず何でもないみたいな顔をしていて、何よりも穢れなく綺麗で、憎しみが増幅した。 これ以上快人を憎まない為にはこうするしかなかったのだ。 意思を奪ってクスリ漬けにして永遠に俺の元で眠ってもらうしか。 そして、俺が快人に成り代わって、快人が得てきた物も含めて、快人の全てを手に入れるしか。 だって理不尽だろう。 同じ母親の腹から生まれて、容姿だってソックリなのに、快人ばっかりがこれまでたくさんの愛を享受してきたんだから。 これからは俺が快人として愛されて、快人が奏人として虐げられ、泥水を飲むべきなんだ。 今日はちゃんと大学に通っていたとしたら、『奏人』の卒業式だった。 快人。今日からお前は奏人だよ。 大学生活も、快人の友達も、快人を愛した者達も、みんな俺に頂戴。 快人の喉奥に放って、口から性器を抜くと、快人の頭は力なくベッドに崩折れた。 聡司さんも限界が近いのか、腰の打ち付け方が激しくなった。 快人の顔を覗くと、口から唾液と俺の精液を垂らして意識を失いかけていた。ぐったりとしているのに、身体だけは聡司さんの動きに勝手に反応して痙攣を繰り返している。 頭を撫でてやると、間もなく聡司さんがイッて、快人の持ち上げられていた尻もぐったりとベッドに落ちた。 「失神しちゃった?ずっとイッてたもんな。さすがにチャンポンはまずかったか」 すっきりした顔の聡司さんも俺の隣で快人の顔を覗きこんだ。 聡司さんが快人の口元を拭おうとしたので、瞬間的に聡司さんからシーツを奪って俺が拭ってやった。 「気持ちはわかるけど、お前の一番の目的は、『快人』になることだろ?」 苦笑する聡司さんが言いたい事はわかる。これから快人と一緒に住むのも、快人が眠っていられる様にクスリを使うのも、聡司さんが行うのだから…。 「お前は早く『快人』になればいい。あとは僕に任せろよ」 聡司さんがただで俺の計画に協力してくれる訳もなく、代償は快人だ。 俺がいない間は、快人の身体を好きに使うと。長年俺にそうしていた様に…。 「今日は俺が快人の側にいる。聡司さんは明日からでいい」 「…まぁいいけど」 服を着た聡司さんが部屋から出て行って、俯せだった快人を仰向けにした。 顔と下半身を拭いて、快人の隣に潜り込んだ。 「快人、愛してる。俺がちゃんと快人を愛してあげるから、安心して眠っていてね」 快人をぎゅっと抱いたら、当たり前だけど温かい。その温もりすら愛しくて、快人のスベスベの頬に頬擦りをして、瞼を閉じた。

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