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快人 5

聡司さんに連れられて来た先は、ホテルの宴会場を貸しきった広い部屋で、一歩足を踏み入れただけでその異様な雰囲気を肌で感じる。 若いホステスなのかタレントの卵なのかよくわからないけれど綺麗な女の人達がたくさんお酌していて、中には水着かってレベルの際どい衣装の人もいる。 そして、座っている男達はみな異常に眼光が鋭くて、笑っているのになんか怖い。 俺はこの雰囲気が嫌いだ。威圧感があるし、それに…。 「月人!」 「あ、会長!今すぐお側に連れて参ります!」 一番上座に座ってた会長が目敏く俺を見つけて声をかけた。 女の人達は会長に名指しされた俺に値踏みするみたいな視線を向けてきて、男達は俺と目を合わせない。 そんな中傍まで行ったらすぐに腕をひかれて隣に座らされた。 会長の回りに侍っていた女の人達はその様子を見て捌けていった。 「久しぶりじゃねえか。毎回来いと言ってるのに、お前も随分仕事熱心だな」 「恐れ入ります…」 熱燗を注ぐと、腰に手を回されて撫でられる。 「申し訳ありません会長。今度から毎回連れて来ます。仕事なんかキャンセルさせますから。何なら辞めさせて会長のお側に置きましょうか?」 「いや、いい。俺は月人に無理強いはしない。月人が自分から俺の物になりたいと言えば、喜んでそうしてやるけどなァ」 聡司さんのとんでも発言は、初めは驚いたが、今では聞き流せる様になった。それくらいお約束のやり取りだからだ。 「これは出すぎました。それでは私はこれで失礼します。朝もゆっくりなさって下さい。月人は昼までフリーですので…」 でもこれは聞き流せない。確か明日の午前中は常連さんの予約が入っていたのに、勝手にキャンセルしたな…。 恨めし気に聡司さんを見たけど、聡司さんもここではその他の男と同じ様に俺と目を合わせようとはしない。完全に人じゃなくて商品として扱われているみたいな嫌な気分になる。 「月人の注いだ酒は旨い」 「そうですか?」 「ああ旨いよ。若くて瑞々しいお前の肌の味がする」 「か、会長…っ」 会長が喋りながら俺の頬を舐めた。ゾワゾワするし、女の人達の視線が突き刺さって痛い。 「誰も見とらんよ。女達はお前に嫉妬してるだけだ。誰もが俺の特別になりたがってるんだから」 お前は果報者だよと言われたけど、そうは思わない。俺はこの人の特別になんてなりたくない。 この人に媚びれば、兄ちゃんの罪は赦されるのかもしれないけど、でもそれはこの人が飽きるまで飼われるってことだ。そんな事になるくらいなら、お金を稼いで自分の力でこの世界から脱出したい。 「まぁ食え。フグなんてお前の稼ぎじゃそうそう食えないだろ?」 会長から箸を向けられて、それにパクつく。フグ刺なんて初めて食べた。すげーあっさり。なんかちょっと味気ない。 次に向けられたのはフグしゃぶだ。うん、こっちの方が美味い。 還暦を過ぎた威厳あるヤクザの長に餌付けされる若い男というのは、異様なこの中にあっても特に異様だろう。 綺麗な女の人達からの「あれまじ?キモい」みたいな視線は毎度へこたれるが、ここに来た以上はこれに耐えて、会長のご機嫌取りをしなければならない。 「会長もどうぞ」 目の前の箸置きに置かれていた竹箸でフグ刺を数枚掬った。よくテレビなんかでみる、あれだ。こうするの、結構夢だったかも。 「てめえがしゃぶしゃぶ食いたいからって俺には刺身ばっかり食わせてるんじゃないだろうな」 掬うのが楽しくて、何回か会長の口にフグ刺を運んだらそう言われた。 「そうです。しゃぶしゃぶください」 あーんと口を開けたら、会長が豪快に笑って、こっちを…というか俺を見なかった男達が一瞬だけ一気にこっちを見た。その中には聡司さんの視線もあって、その目がグッジョブと言ってるみたいでちょっと不本意だ。別に聡司さんの為にこうしてる訳じゃない。俺はどんな時間でもできれば楽しく過ごしたいだけだ。 会長にフグしゃぶを口に入れてもらったら、ちょっとだけ生じた嫌な気持ちも吹き飛んだ。 考えてみれば、これも外食みたいなものだ。相手がちょっと緊張する相手で、ちょっと居心地が悪いだけで、美味しい食事にお酒もある。 「いい飲みっぶりじゃねえか!」 目の前のお猪口をグイっと傾けたら会長が嬉しそうに手を叩いた。 「もっと飲めや」 「はい」 会長に勧められるままに日本酒を煽ったら、段々楽しくなってきた。 「会長!勝負!」 「俺に挑むのか?」 そう言って会長はぐい呑みに注いでいた日本酒を煽った。 会長もたぶんかなり強いけど、俺だって負けねえ。お猪口でなんか飲んでられるか。 変な対抗意識で会長からぐい呑みを奪った。交互に椀を空にするゲームが始まって、相手はヤクザの親玉だというのに、遠慮も忘れて楽しんでしまった。 * * ううう…やべえ。 頭いてえ。 あのあと日本酒だけじゃ飽きたらず、焼酎とワインも会長と競う様に飲んだ。 こんなに足下ふらつく程酔ったの初めてかも…。 「お前もまだまだだな」 ふらつく俺の脇を抱えて歩く会長は、あれだけ飲んだのに足取りも呂律もしっかりしている。 本物のザルってたぶんこういう人の事だ。 「かいちょ、つおすぎ」 呂律って本当に回らなくなるんだ。具合悪いのに、なんかふわふわもしてて、これはあれだ。聡司さんにクスリを飲まされてた時と少しだけ似てる。あの時よりも大分意識ははっきりしているし、幻覚は見えないけど。 「月人、寝るなよ。久しぶりなんだから、たっぷりお前を味わいたい」 「うー……がんばりまふ」 とは言ったものの、眠い。 会長はこのホテルの最上階に部屋をとっているらしく、今は上に向かうエレベーターの中だ。 部屋まで待てないのか、後ろから俺を支えている会長がさわさわと服の上から俺の身体を擦る。 「かいちょ、くすぐったい」 脇腹やめてー。 「そそる身体だ…」 因みに、護衛の為か、俺と会長以外にも二人いかついオニイサンが同乗している。 チンとエレベーターが目的の階についた。 オニイサン達はさすがに部屋の中には入ってこなくて、会長と、会長に抱かれる様に支えられた俺だけがドアを潜った。 会長は俺を横抱きにして広くて豪華な部屋を突っ切って、ベッドルームに入った。 「月人には責任をとって貰わないと…」 会長がそっと俺をベッドに横たえながら言った。 責任?なんの? もしかして兄ちゃんがくすねたクスリのこと…? 「ノーマルだった俺が、この平らな胸と腹に情欲を覚えるようになった責任だよ」 「そんなの…」 俺に言われても……。 「それに、ここも…」 さわっと身体の中心を撫でられる。 「男のこれを可愛いと思う日が来るとは思わなかった」 「っ…あ……」 そこをなぞる様に執拗に刺激されて、重かった瞼が開いた。 ズボンを下ろされて、下着もずらされたら存在を主張していたそれがぴょんと飛び出して一気に顔が火照る。 やばい恥ずかしい…。 「黒ずんでなくて綺麗だ。なかなかこんなピンク色の奴はいない」 「かいちょ、恥ずかしい…っ」 俺は結構切に訴えているのだが、会長はそこの観察を止めない。 「今度型取りさせようか…」 「やらー!」 会長の変態! 人間長く生きていると、普通のプレイに飽きてくるのかもしれないが、それを型どってどうするつもりだ? 用途が全く分かりません。 「冗談だ」 会長カラカラ笑ってるけど、あなたの目は 真剣でしたよ。 「それより、俺のを型どったディルドを作らせて、月人にプレゼントしようか。うん、その方がいい」 「い、いらにゃいでふ…」 会長の凶悪なあれなんて、絶対いらない。 それこそ用途がない。 「ハハハ…残念だ」 そう言いながらズボンの前を寛げたら、これで60過ぎてるの?と疑いたくなるくらい元気なムスコが天を向いていた。 しかも、このムスコはデカイだけじゃない。 ずいと顔の前にそれを持ってこられたから、もはや条件反射の様に銜えた。 俺はフラフラで寝そべっているから、会長が腰を振って、口の中を突く。 「ふっ…ぅぐ…ん…んむ…っ」 会長のはデカさだけでも充分凶悪なのに、なんと都市伝説だと思っていたアレが入っている。中身の素材までは知らないけど、ちっちゃいボールみたいなアレだ。どうやって入れたんだろうって想像するだけで痛いし、現実的にはそのボコボコが舌を刺激するのが慣れなくて気持ち悪い。 やがて会長は身体を回転させて、俺の下半身の方に頭を向けた。 俗に言う69の形だ。 会長が腰を振りながら、俺のモノを舐める、しゃぶる。 男と寝たのは俺が初めてだったらしいが、年の功だろうか。相当のテクニシャンで、俺はいつもの様にあっけなくイかされてしまった。 「はぁ……はぁ…」 「堪え性のない奴だな」 イったと同時に口も解放されて、俺の顔を覗き込む会長。 「らって、かいちょ、うますぎ…」 「はっはっは…そうかそうか。もっとイかせてやる」 会長はまたさっきと同じ体勢になって、今度は俺の顔の前で腰を振りながらローション片手に俺の後ろを弄り始めた。 こっちのテクニックも相当で、俺は密かにゴールドフィンガーと呼んでいる。 気持ちのいい所ばかりグイグイ刺激されて、俺はまたあっけなくイかされた。 それから、会長のビンビンのモノを挿入されて、3度目の絶頂をした。 悲しいかな、もう俺は挿入だけでトコロテンしてしまう体質になってしまっていた。 これは普通にぺニスを刺激してイく時よりも気持ちがいい。でも、その分本当に疲れる。 俺が会長を苦手なのは、このボコボコもそうだけど、何よりも辛いのはセックスの主導権を握れない事だ。 会長が満足するまで何度もイかされて、夜通し啼かされる。 会長はバイ○グラでも飲んでるのか、この歳にして絶倫なのだ。その回復スピードたるや、光希さんも及ばない。 その上テクニシャンという最悪の組み合わせで、たぶん一晩でフルマラソン並みの体力を奪われてしまってると思う。 今回も夜明けまで啼かされて、昇る朝日を見て聡司さんに感謝した。 朝の仕事あったら、俺死んでたかも。

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