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4-8 トオル
このところの道場通いの効果やろう。アキちゃんの胸は前よりちょっと、逞 しくなった。
それに抱かれると、なんかこう、守られてるような気になる。
実は俺のほうが強いんかもしれへんけど、それでも、なんでやろ。アキちゃんに抱いててもらうと安心する。
ここに居 るかぎり、俺は大丈夫。きっと幸せやって思えるんや。
「亨 、俺はお前と、離 れられへん。なんでやろ。お前が居 らんようになると思うと、めちゃくちゃ怖い。ほんまにずっと、俺と一緒 に居 ってくれるか」
俺の背を撫 で、頭に頬 ずりしながら、アキちゃんは何となく気弱 そうに訊 いた。
それが何や可哀想 に思えてきて、俺はもっと強くアキちゃんに抱きついた。
「ずっと一緒 やて、いつも言うてるやん。居 ってええんやったら、ほんまにずっと居 るよ。永遠にずっと」
「居 ったらあかん理由 が、どこにあるんや」
もどかしそうな声で、アキちゃんは抱いた俺の背に訊 いた。
そんな理由 は、いくつかあるような気がする。
俺が居 ったら、アキちゃんは強うなられへん。式 が増 えへんからな。
それに俺と居 ると、アキちゃんは普通からほど遠い。
結婚して子供できてって、そんな普通の幸せには縁遠 くなってまう。
それでもええのか、アキちゃんは。それでもほんまに幸せなんか。
俺は幸せ。アキちゃんと抱き合って、永遠に生きられたら、それで幸せやねん。
せやけどそれは、俺の我 が儘 やんか。それにアキちゃんを付き合わせてもうて、ほんまによかったんやろか。
俺はアキちゃんに幸せでいてほしい。ふたりで幸せやったら、それが一番ええけど、それが無理なら、俺はアキちゃんだけでもええから、幸せになってほしい。
最近なんでか、よくそう思う。ときどき発作 みたいに。
「亨 、そんな理由 、なんもないやろ」
黙 ってる俺に焦 れたんか、アキちゃんは抱擁 をゆるめて、俺の顔を見た。
切 なそうなような、不安そうな顔やった。
アキちゃんは俺といて、時々つらいんやないかと思う。そういう顔してる時あるわ。
「うん……ないな、そんな理由 」
切 なく見つめて、俺は微笑 んだ。
作り笑いやったんか。それでもアキちゃんを安心させてやりたかってん。
たとえ嘘 でも、そう言うてくれってアキちゃんが望んでるんやから。
淡 い笑 みでいる俺を、アキちゃんはつらそうなまま見つめ、顎 を上げさせてキスをした。熱いようなキスやった。
もう、数えきれへんくらいしたけど、アキちゃんとキスすると、最初にした時とおんなじくらい、胸が騒 ぐ。震 えそうに気持ちよくて、もっとしてって思う。
そうやって夢中 で貪 るようにして、ここまで来たけど、ほんまにそれでよかったんか。
アキちゃんに服を剥 がれながら、俺はそんなことを考えてた。
半裸 に剥 いた俺を、アキちゃんはどことなく焦 ったような手でベッドに押し倒 した。
そして続きを脱がされながら、裸の胸を舐 められて、俺は喘 ぐ息になってた。
「アキちゃん……俺、口に何か詰 めへんと、声が」
「そんなん気にせんでええねん」
どことなく、つらそうにそう言うて、アキちゃんは自分も脱 いだ裸 の胸で俺を抱いた。
触 れあう素肌 の感触 が、一瞬で胸を安堵 と愉悦 で満たしてきて、ふたり同時にため息ついてた。
「結界 張 んの?」
「そんなんせんでも、どうせ同じ穴の狢 ばっかりやないか」
吐 き捨 てるように言うて、アキちゃんは俺の体を知り尽 くした手で、どんどん煽 ってきた。
声は筒抜 けやろう。ここにも欄間 があった。
薄暗 い廊下 の天井 が、そこから透 けて見え、その向こうに、なんか小さいモンが、いっぱい居 てるような気がした。
俺は一応、声を堪 えた。それでも押し殺したような喘 ぎが漏 れてきて、アキちゃんはもっと歌えっていう手つき。
ほんまにキレると、何するかわからん男やで。
「あ……っ、気持ちいい」
中を撫 でられて、俺は仰 け反 ってた。ほんまにええねん。そういう体なんやろな。
アキちゃんの指は、早く入れよう、一刻 も早くやろうって、そんな感じの性急 さ。
「畜生 、なにが虎並 みやねん」
やっぱりそれでキレてんのか。
小さく呟 くアキちゃんの声に、俺は喘 ぎながら苦笑 やったわ。
虎並 みかあ。どんなんやろタイガー。
確かに惜 しいことしたんかもしれへんけど、今夜のアキちゃんもなかなかすごいで。たぶんこの一戦 に面子 をかけてる。
それでももう、深く考える余裕 はないんか、猪突猛進 型。とにかく激 しい。
いつにない強引 な手で愛撫 してきて、俺の体を開かせてから、アキちゃんは汗 だくで中に入った。
たぶん、相当 我慢 してたんやろ。入れるなり喘 いだわ。日頃 は堪 えてる声で。
それでも、口を衝 いてもそれは結局 、我慢 の声やった。
アキちゃんは近頃 いつも、俺とやるとき、ひたすら絶頂感 を堪 えてるらしい。入れた瞬間、イキそうに気持ちええんやって。
そら汗 も出るやろ。アキちゃんはほんまに、滴 るような汗 をかいてた。
それでも夢中 で、めちゃめちゃ激 しく俺を突いてた。
昇天 しそうやって、俺も朦朧 としてた。
気持ちええんやで。しみじみ言うけど。
アキちゃんてほんまに上手いと思うわ。狙 いは正確やしな、わざとかどうか謎 やけど、時々入る乱調 が、それはそれで堪 りません。
あまりの悦 さに、あっというまにドロッドロです。
体が溶 けそうみたいになってきて、声を堪 えるのなんか、綺麗 さっぱり忘れたわ。
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