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私は18歳以上です
三都幻妖夜話(3)神戸編 18-20 トオル | 椎堂かおるの小説 - BL小説・漫画投稿サイトfujossy[フジョッシー]
目次
三都幻妖夜話(3)神戸編
18-20 トオル
作者:
椎堂かおる
ビューワー設定
230 / 928
18-20 トオル
覗
(
のぞ
)
きまくってるやないか、お前! センチメンタルな俺の世界を! 確かにそんなこと言うた。心の中でやで。確か、
喫茶
(
きっさ
)
「いつも
朝飯
(
あさめし
)
」を出たあたりでや。 トミ子、いつからストーカーしとってん。まさか
常時
(
じょうじ
)
か。
常時
(
じょうじ
)
監視
(
かんし
)
か。俺がうだうだ考えてたことも、実は全部知っとったんか。それで俺がトミ子来てくれって
頼
(
たの
)
んだから出てきたんか? ひどい、もっと早うに来てくれよ! 「プラチナ……?」 アキちゃんがぽつりと言うて、俺を見た。
皆
(
みんな
)
、俺を見た。
蔦子
(
つたこ
)
さんもボロ泣きしながら俺を見た。
半笑
(
はんわら
)
いで
神楽
(
かぐら
)
遥
(
よう
)
も見た。
苦笑
(
にがわら
)
いで
藤堂
(
とうどう
)
さんも見た。 見るな
皆
(
みんな
)
、俺の赤い顔を! 「なんでもない! なんでもない!!
要
(
い
)
らんこと言わんでええねん、
聖
(
せい
)
スザンナ。ありがとう、もう帰ってええわ! もう用事ないならとっとと帰ってくれ!」 顔を
隠
(
かく
)
して、俺はほんまにジタバタしていた。知らんもん、こういう時にどのようにやり過ごすもんなのか。 アキちゃんは、そうかプラチナかぁ、って、ぼけっと言いやがるし、何の話どす、って
蔦子
(
つたこ
)
さんは泣きながら
興味
(
きょうみ
)
津々
(
しんしん
)
すぎるしやな。
堪
(
こら
)
えきれずに、しおしおなって席に戻って、テーブルに
突
(
つ
)
っ
伏
(
ぷ
)
していた俺を、トミ子は
薔薇
(
ばら
)
に包まれて、
有
(
あ
)
り
難
(
がた
)
い
後光
(
ごこう
)
を
背負
(
せお
)
って
見下
(
みお
)
ろすし、それがサービスとでも思ってんのか、俺の頭の上に
薔薇
(
ばら
)
の花びらと何や知らんキラキラしたもんを、じゃんじゃん降らせてた。 「
悪魔
(
サタン
)
を
改心
(
かいしん
)
させた
偉業
(
いぎょう
)
を思えば、次なる
蛇
(
へび
)
も何とかできるやろ。よろしゅうお
頼
(
たの
)
み
申
(
もう
)
しますって、我が
主
(
しゅ
)
からの
預言
(
よげん
)
です。
神戸
(
こうべ
)
は大事な
布教
(
ふきょう
)
の足がかりやし、ここらで一発、ど
派手
(
はで
)
な
奇跡
(
きせき
)
を見せとこかって、そんな
思
(
おぼ
)
し
召
(
め
)
しやさかい、なるべく
派手
(
はで
)
めにお願いいたします。天の父なる
主
(
しゅ
)
には
栄光
(
えいこう
)
。
地
(
ち
)
には、
御心
(
みこころ
)
に
適
(
かな
)
う人々に平安を。
讃えよ
(
ハレルヤ
)
、
讃えよ
(
ハレルヤ
)
、
救いの御業を
(
ホザンナ
)
。父と子と
聖霊
(
せいれい
)
の
御名
(
みな
)
によりて、
かく行われるべし
(
アーメン
)
」 じゃんじゃん花を
撒
(
ま
)
き
散
(
ち
)
らしながら告げ知らせ、
聖
(
せい
)
スザンナは
猛烈
(
もうれつ
)
な光を発して、一瞬にして店内から
掻
(
か
)
き消えた。 後にはまだしばらくの間、
沢山
(
たくさん
)
の
薔薇
(
ばら
)
の花と、その
芳香
(
ほうこう
)
が残されていた。そしてもちろん、気まずい
沈黙
(
ちんもく
)
も残されていたんや。 わあわあと、テレビ
中継
(
ちゅうけい
)
の阪神戦が、よそ
事
(
ごと
)
みたいな
歓声
(
かんせい
)
を上げていた。 俺は
未
(
いま
)
だに
恥
(
は
)
ずかしく、テーブルに
突
(
つ
)
っ
伏
(
ぷ
)
したままでいた。 ほんまに
勘弁
(
かんべん
)
してくれトミ子。いずれ
折
(
おり
)
を見て返事しようかなって、そんなほのかな気持ちでいたのに。なんで
暴露
(
ばくろ
)
すんねん。しかも
衆人
(
しゅうじん
)
環視
(
かんし
)
のもとで。
恥
(
は
)
ずかしいやないか。 えへん、と、
餅
(
もち
)
が
咳払
(
せきばら
)
いをした。 「見ちゃいましたね、天使」 初めて見たわあ、って、そんな感じで、
餅
(
もち
)
は
感慨
(
かんがい
)
深そうにコメントをした。 「見てもうた。ほんまに
居
(
お
)
るんや、天使……」 くらくら来たみたいに、
藤堂
(
とうどう
)
さんが
呟
(
つぶや
)
いた。 なんやねん、
居
(
お
)
らんと思ってたんか。見たことないもんな、普通。俺かて
正真正銘
(
しょうしんしょうめい
)
のは初めて見たわ。
勝呂
(
すぐろ
)
はもう
堕天使
(
だてんし
)
やったしな。 「ほんまに
居
(
お
)
るんや、神様」 しみじみと言う
藤堂
(
とうどう
)
さんの声がして、俺は
突
(
つ
)
っ
伏
(
ぷ
)
した腕の
合間
(
あいま
)
から、その
険
(
けわ
)
しい顔を
盗
(
ぬす
)
み見た。
居
(
お
)
らんと思うてたんか。なんで。
居
(
お
)
らんと思うぐらいやったら、一体あんたは何を
恐
(
おそ
)
れてたん。 信じてたやんか、ずうっと信じてた。神様
居
(
お
)
るって、思ってたやん。それで
蛇
(
へび
)
が怖かったんやないか。 天使出てきて、ビビってもうたか。
遥
(
よう
)
ちゃんと別れよか。
藤堂
(
とうどう
)
さんも、そう思ったんかもしれへんわ。
冗談
(
じょうだん
)
言うてた。
神楽
(
かぐら
)
遥
(
よう
)
に。 「やっぱり無かったことにしよか」 にやにや笑って
訊
(
き
)
く
藤堂
(
とうどう
)
さんを、
神楽
(
かぐら
)
遥
(
よう
)
は青い顔して、じろっと
睨
(
にら
)
んだ。 「何を今さら言うとうのや。こうなったら
居直
(
いなお
)
りですよ。天使もこの
蛇
(
へび
)
を
祝福
(
しゅくふく
)
していったんや、何でもありです。僕は別れませんから」 神父はビビってもうて、返ってヤケクソなってきたらしい。ブチキレたみたいに小声で宣言いた。 「ロレンツォ……」 目をしょぼしょぼさせて、
餅
(
もち
)
が
神楽
(
かぐら
)
遥
(
よう
)
を呼んだ。それに
破戒
(
はかい
)
神父はびくっとしていた。 怖いんやったら、やめてもええんよ、
遥
(
よう
)
ちゃん。離婚して
元鞘
(
もとさや
)
戻るという手もありよ。 「あのね、今のやつね、報告書にまとめてヴァチカンに送っといてくれるかな? 写真撮ってみとけばよかったなあ。絵でもいいんだけど。確か
本間
(
ほんま
)
さん、絵描きさんでしたよね?」
餅
(
もち
)
がアキちゃんに、今の
奇跡
(
きせき
)
の絵を描いてくれと
頼
(
たの
)
んでた。 さすが
大司教
(
だいしきょう
)
、
強者
(
つわもの
)
や。アキちゃんに少女漫画みたいな光景の絵を描かせようとは。 「描けますけど……ああいうのは、こいつの方が
得意
(
とくい
)
ですし、こっちが描いてもいいですか」 こっちって誰。俺やないか。 アキちゃんは俺に、神父がヴァチカンに送る
添付資料
(
てんぷしりょう
)
の絵を描けと言うてた。 あのなあアキちゃん、俺は
蛇
(
へび
)
やで。教会の敵なんやで。その俺がなんで、ローマ教皇に少女漫画ふうイラスト描いて送ってやらなあかんねん。どんな仕事やそれは。
大司教
(
だいしきょう
)
、あかんて言うわ。 「いいですよ、別に誰が描いてくださっても。広報に使ってもいいですか」 「いいですよ、タダやないなら」 さらっとアキちゃんはそう答えた。何言うてんの、ケチやなあ、ボンボンのくせに。
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椎堂かおる
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