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21-43 アキヒコ

 でも、なんでか瑞希(みずき)被害者(ひがいしゃ)として、無罪(むざい)放免(ほうめん)された。  どうやって、お(まわ)りさんに理解してもらったか。俺は()いてへんのに、瑞希(みずき)は教えてくれたで。天然(てんねん)やねん、こいつ。無防備(むぼうび)というかな。  俺はこういうふうにして(さわ)られたんや。()んでて動かれへんのをええことに、オッサン(また)()ってきやがったんやと、こうですこう、みたいに、お(まわ)りさんに実演(じつえん)させてやったらしい。  魅惑(みわく)現場(げんば)検証(けんしょう)やったな。その若いお(まわ)りさんが、今ごろどうなってはるか、俺は心配や。  真っ赤になって、わかったわかったと言わはったらしい。被害届(ひがいとどけ)書くから、住所と電話番号を教えろと言うその人に、瑞希(みずき)は親にバレんのが(いや)やったもんで、なんで知りたいんや、そんなことと、身構(みがま)えて()いたらしい。  それが性犯罪で傷ついた美少年の神経(しんけい)過敏(かびん)に見えて、被害者(ひがいしゃ)にトキメいている下心(したごころ)がバレたんかとお(まわ)りさんはビビり、ほなもうええわと、さらに赤くなったらしい。  その制服が、紺色(こんいろ)やしな。それで顔赤いから。赤と青と両方ついてる半分ずつの色鉛筆(いろえんぴつ)みたい。なんであの赤と青のやつ、絶対青が最後に(あま)るんやろう。不条理(ふじょうり)やわ。先輩は、なんで一本に二色入ってる必要あるんやと思いますかと、それが瑞希(みずき)の話のオチで、ネタやない。マジで言うてた。  俺は最高に気まずかった。要点(ようてん)、そこやないやろ。教務課(きょうむか)のオバチャンも、絶対に心の中で力一杯(ちからいっぱい)、お前にツッコミ入れてはったで。  しゃあないから、俺は教えてやった。携帯性(けいたいせい)を高めるためやないか。事務作業でよく使う二色が、一本にまとまっていたら、携帯性(けいたいせい)が高いし、それに、引っ()り返したら反対側の色が使えるんやし、機能的(きのうてき)やから。  ああ、そうか、って、瑞季(みずき)はものすご感心(かんしん)してたわ。さすが先輩、頭ええわって。  それを真面目(まじめ)に言うてるところが、こいつのアホみたいで、可愛(かわい)いところやねんけど。でも、えげつないところでもある。  俺はそんなことを回想(かいそう)しつつ、なるべく気を遠くに持って、瑞希(みずき)の体を愛撫(あいぶ)してやっていた。服の上からでも、俺の手が形のいい小作りなケツを()でると、もどかしいみたいに瑞希(みずき)(あえ)いだ。ヤバいヤバい、声が可愛(かわい)いから!  俺はなんか汗かいてきた。(ひたい)にじっとり汗が浮くのを、(けわ)しい顔で感じとってた。  あかん、なんかもう、一瞬でも(みだ)れてもうたら、俺は何するかわからへん。  俺も(とおる)とは大概(たいがい)、いろんなことしてる。それが普通になってる。  でも、それが瑞希(みずき)にとって、気持ちいいかはわからへん。  もう()がせたほうがええのかなとか、まだ早いかなとか、そんなことを必死で考えていた。  まるで(なつ)かしい童貞(どうてい)の昔に戻ったみたいやで。(きら)われたらどうしようかなって、ビビりながら抱いている。必死すぎてな、自分が興奮(こうふん)してんのかどうかも、よう分からんくらいやねん。  まさか自分がそんなセカンド・バージンみたいな男やとはなあ。余裕(よゆう)やろうと思ってたんやけど。経験値には自信があるつもりやった。だって(へび)とは連日(れんじつ)連夜(れんや)(こし)くだけるほどやってるんやから。 「先輩……()らさんといて」  俺の胸に(すが)って、瑞希(みずき)は泣きそうな声やった。ちょっと(おそ)すぎやったか。  俺はなんとなく真っ白なってる頭のままで、(あわ)てて瑞希(みずき)のベルトに手をかけた。()がせようとする俺を、瑞希(みずき)はじっと不安そうに見つめていた。まるでこっちも初体験(はつたいけん)みたいやった。  ある意味そうかもしれへんわ。俺とするのは初めてやから。どこまでやってええのかなみたいな。(きら)われたらどうしようって、そんな腹の(さぐ)り合いやわ。  俺がそのあと(さぐ)ったのは、腹ではないのやけどな。 「あ……っ、ヤバい」  ()がして()れると、瑞希(みずき)は俺の(うで)の中でじたばたしていた。ぎゅうっと閉じられた赤い目元が、(あえ)(くちびる)が、(もだ)える体の感じてるもんが、苦痛ではないことを物語ってる。 「めちゃめちゃ感じる……先輩、どうしよ……」  どうしよ言われても。俺も今、ノー・アイデアやから。頭真っ白を続行中(ぞっこうちゅう)やから。  びくびく引きつる生白(なまじろ)い体を片腕に抱いて、俺は一生(いっしょう)懸命(けんめい)やった。気持ちよくしてやらあかんし、やるんやったら、体も開いてやらなあかんし。それに、そっちにばっかりに集中したらあかんらしい。  キスしてくれって強請(ねだ)られるんで、(うわ)(そら)(くちびる)(かさ)ねながら、開かせた(あし)の、ずっと奥のほうの熱い感触(かんしょく)を、指先で確かめながら、ゆっくり()めた。  固いなあと、俺は思った。ええと。中の感触(かんしょく)がやで。(とおる)はもっと、(やわ)らかいというか、こんなに緊張(きんちょう)してへんしな。まあ、()れてるんやから、当然やけど。  でも、瑞希(みずき)はめちゃめちゃ(かた)かった。全身緊張(きんちょう)してた。このまま入れたら、絶対(ぜったい)痛いんやろうなと、俺はぼんやり考えて、そんなん、したくないなあと思った。  (いや)やねん。そういうの。ぎゃあ痛い、みたいなの。苦手やねん。  女の子でも、相手が処女(しょじょ)やと()えんねん。そんなん責任とられへんて思って。やめといたほうが無難(ぶなん)やわって、俺は逃げに入るんや。  でも、もう瑞希(みずき)は、やっぱやめようかって言うてええような雰囲気(ふんいき)やなかったし。何とはなしに(なみだ)ぐんで、赤い顔して俺に抱きついていた。されるがままで、一種のマグロやった。犬やけどな。

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