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三都幻妖夜話(3)神戸編 22-2 トオル | 椎堂かおるの小説 - BL小説・漫画投稿サイトfujossy[フジョッシー]
目次
三都幻妖夜話(3)神戸編
22-2 トオル
作者:
椎堂かおる
ビューワー設定
343 / 928
22-2 トオル
覡
(
げき
)
と
覡
(
げき
)
との戦闘は、いわば
闘犬
(
とうけん
)
みたいなもん。
式
(
しき
)
と
式
(
しき
)
とを戦わせるんや。手持ちがないわでは、勝負にならへん。犬が
要
(
い
)
るやろ? 怖いと
躊躇
(
ためら
)
うその一瞬で、アキちゃんの首が吹っ飛ぶかもしれへん。そんなん怖い話やなあ。 それを迷わず身を
盾
(
たて
)
にして
庇
(
かば
)
う勇気が、俺にはあるんか。 わからへん、それは。その時が来てみないと。 あるわと言いたい。でも俺はほんまに、死ぬのが怖いねん。だから自信ない。もし万が一、俺が
愛
(
いと
)
しいアキちゃんよりも、自分の身が
可愛
(
かわい
)
いようなことがあったら、その時はどうなるんやろ。 しかし、あの犬やったら、命は
惜
(
お
)
しむまい。
健気
(
けなげ
)
やし、それに思い
詰
(
つ
)
めている。アキちゃんのためやったら、あいつは何でもしよるやろ。
生
(
い
)
け
贄
(
にえ
)
にもなる。身を
捨
(
す
)
てて
庇
(
かば
)
う、生きた
盾
(
たて
)
にもなるわ。
水煙
(
すいえん
)
が
剣
(
けん
)
やったら、あいつが
盾
(
たて
)
で、それでアキちゃんは
完全武装
(
かんぜんぶそう
)
やわ。
式神
(
しきがみ
)
とはそういうものや。そのために
飼
(
こ
)
うておくんや。戦いに
臨
(
のぞ
)
むための、武器や防具を
揃
(
そろ
)
えておくようなもんやねん。怖いわ言うて逃げるような、なまくらな
盾
(
たて
)
やったら役に立たへん。 アキちゃんが、
可愛
(
かわい
)
いんやったら、せめて身を守る
盾
(
たて
)
を
飼
(
こ
)
うておくぐらいのことは、
許
(
ゆる
)
してやれと、
水煙
(
すいえん
)
様は俺を
躾
(
しつ
)
けた。 それはもちろん、
許
(
ゆる
)
してる。ただそれと、いちいち寝る必要はないってお前が言うから、俺も
納得
(
なっとく
)
してたんやないか。えらい話が違うんやないんか、
水煙
(
すいえん
)
様よ。
瑞希
(
みずき
)
ちゃん、抱いてくれな
嫌
(
いや
)
やて言うてるで。抱いて欲しい。愛してるから。好きやって言うてほしい。アキちゃんに、それに
応
(
こた
)
えろって、無理を言うてる。なんちゅう
我
(
わ
)
が
儘
(
まま
)
な犬や。 そら、抱いてほしいやろなあ。俺も抱いてほしい。好きやったら、それで正常や。 それを血をやったくらいで
誤魔化
(
ごまか
)
せるやろというほうが、
土台
(
どだい
)
おかしいねん。 あいつはただ
覡
(
げき
)
として、アキちゃんを
慕
(
した
)
っている
訳
(
わけ
)
やない。
惚
(
ほ
)
れてんねん。抱き
合
(
お
)
うて愛し合う相手としてアキちゃんが好きなんや。 それは心の問題で、
理屈
(
りくつ
)
やない。
我慢
(
がまん
)
せえ言われても、
我慢
(
がまん
)
はできへんやろ。好きな相手のことを、好きや好きやと思うのは。 俺はアキちゃんの血を吸うてても、抱いてほしくなる。腹減るからやない。愛してるから。抱き合いたいねん。ただそれだけ。 手を
触
(
ふ
)
れていたい。あいつの存在感を、
肌
(
はだ
)
で感じたいねん。 それかて
理屈
(
りくつ
)
やないわ。
我慢
(
がまん
)
できへん。 好きでたまらん。
力一杯
(
ちからいっぱい
)
抱き
合
(
お
)
うて、お前が好きやって
囁
(
ささや
)
き合いたい。ひとつになって、心地よく溶け合う感覚に
溺
(
おぼ
)
れたい。 切り果てのない
愉悦
(
ゆえつ
)
と
快楽
(
かいらく
)
。それが愛やろ。それが愛の、自然な形や。 それが全てとは言わへんわ。でも、それ抜きには語れへんもんが、愛にはあるわ。 俺には無理や。好きな男を前にして、指一本
触
(
ふ
)
れへん。ただじっと見てるだけ。そんな苦しい愛が百年続く。そんな
欲求不満
(
よきゅうふまん
)
の
我慢
(
がまん
)
プレイに
耐
(
た
)
えて、平気そうなお高い
面
(
つら
)
でいる。そいつが他のを
可愛
(
かわい
)
がるのを、ようやった
偉
(
えら
)
いと言って
褒
(
ほ
)
める。そんな
水煙
(
すいえん
)
みたいなことは、
到底
(
とうてい
)
できへん。 あいつ、
変態
(
へんたい
)
なんと
違
(
ちが
)
う? 絶対、頭
沸
(
わ
)
いているで。 元々、
穴無
(
あなな
)
しやったのかて、あいつの意志やで。抱こうったって抱かれへん、そういう体になってもうて、相手を
拒
(
こば
)
んでたんや。 俺は他のみたいに、
淫乱
(
いんらん
)
やない。
妾
(
めかけ
)
はやらへん。
見損
(
みそこ
)
なうなという意思表示やろ。 たぶん、つらかったんやろ。ああいう性格やから。 ひとつ
寝床
(
ねどこ
)
で抱き
比
(
くら
)
べられる、そういうのは
我慢
(
がまん
)
ならへんねん。
醜
(
みにく
)
い
掴
(
つか
)
み合いの
乱闘
(
らんとう
)
みたいなのには、
混
(
ま
)
ざらへん。いっそ
気高
(
けだか
)
く身を引いて、おとなしくしてたい。なるべく傷つかんように。
塔
(
とう
)
に住む
深窓
(
しんそう
)
の
姫君
(
ひめぎみ
)
よろしく、
蔵
(
くら
)
に
囲
(
かこ
)
われてる、
拝
(
おが
)
んで
崇
(
あが
)
めるのはええけど、抱いたらあかん神さんとして、
寄
(
よ
)
らば
斬
(
き
)
るぞと
拒
(
こば
)
む
姿勢
(
しせい
)
やった。 アキちゃんはその、
奥
(
おく
)
ゆかしいところが
萌
(
も
)
えるんやろけど、俺に言わせりゃ、やせ
我慢
(
がまん
)
やで。
水煙
(
すいえん
)
かて、
穢
(
けが
)
れを知らぬ身やないで。だって肉食うてんのやから。タマゴも食うたんやで。鳥さんとおんなじもん食うたんやから。ほんまやったら、あれくらいの性欲があるんやで。ただそれを
隠
(
かく
)
してるだけで。 だって、おとんとは
一緒
(
いっしょ
)
に寝たらしいやんか。ほんまに、ただ抱いて寝るだけなんやろけど。
太刀
(
たち
)
やしな。それでも
床
(
とこ
)
に入る時、おとん
大明神
(
だいみょうじん
)
は他のを
余分
(
よぶん
)
に連れ込んだりはせえへんかったらしいで。
潔斎
(
けっさい
)
して抱いた。
水煙
(
すいえん
)
を、
崇
(
あが
)
めてたんや。 それを
拒
(
こば
)
まん
程度
(
ていど
)
には、
水煙
(
すいえん
)
もおとんに
惚
(
ほ
)
れてたんやろ。
本音
(
ほんね
)
を言えば抱かれたかったんや。そうに決まってる。 もしもおとんがアキちゃん
並
(
な
)
みに
破廉恥
(
はれんち
)
で、
水煙
(
すいえん
)
を
太刀
(
たち
)
からサーベルに作り
替
(
か
)
えるだけやのうて、抱いて可愛がれる体に作り
替
(
か
)
えてやって、もっと身のある抱き方で愛してやってたら、あいつかて、アキちゃん好きやて
寝乱
(
ねみだ
)
れた。そうに決まってるわ。 抱いてほしいて、毎日毎晩もじもじしてたで。その味を、いっぺん体で
覚
(
おぼ
)
えてもうたら、
我慢
(
がまん
)
できへんようになる。自分から
跨
(
またが
)
って
励
(
はげ
)
むようになるわ。
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椎堂かおる
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