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22-15 トオル

 お前はイケてる。(とら)、イケてる。ものすご格好(かっこう)いい。抱かれたいリスト上位ランクイン。それは俺だけか。そうでもないか? (みんな)はどんな感じ?  俺的には、そうやなあ。今の気持ちで、抱かれたいリストは上から(じゅん)に、アキちゃん、藤堂(とうどう)さん、ジョン・ローン、(とら)、ぐらいやな。四位か。微妙やな。俺がジョン・ローンのこと思い出してへんかったら三位やったのになぁ、()しい。  本人には言わんといたろ。自信なくすやろから。ええねん別に、鳥さんにとっては永久不滅(えいきゅうふめつ)の、抱かれたいリストのダントツ首位(しゅい)やねんから。ぶっちぎりですよ、ほんまに。  ええんですよ、ラブラブしてくれる相手なんて、一人()ったら充分(じゅうぶん)なんです。いっぱい()ったらアキちゃんみたいになるんです。悪い男に!  信太(しんた)は、ほなまたなー、と、軽い調子で水煙(すいえん)連れて出ていった。  アキちゃんが風呂(ふろ)から出てきたのは、それとほとんどすれ違いみたいやった。  水煙(すいえん)()らんようになっちゃったって、アキちゃんはちょっと探すような(せつ)ない目をしてた。俺はそれに、もちろん、イラッと来てた。俺もいますが気づいていますか、アキちゃん。 「(めし)食って、(まち)行こか」  それはたぶん俺に言うてくれてるんですよね。そう思うのは俺の自意識過剰(じいしきかじょう)ですか。  いや。そうではなく。アキちゃんは俺に()いてた。 「(まち)行って何すんのん」  俺、(さび)しいんですけど。アキちゃん、朝チュー忘れてへんか。  そんなニュアンスを眼力(がんりき)にこめて、俺はジトッと横目(よこめ)にアキちゃんを見てやった。でも、この男は(にぶ)い。そんなん、耳クソほども気がついてへん。 「瑞希(みずき)に首輪()うてやろうと思って。それに、服も。水煙(すいえん)着替(きが)えがいるし」  俺は? 「お前も(ひま)やったら来るか?」  ついで?  アキちゃんの、心の抱きたいリスト、今の気持ちで言うと、水煙(すいえん)瑞希(みずき)ちゃん、そして俺? 三位?  微妙(びみょう)……。  ラジオか鳥さんか神楽(かぐら)(よう)()ったら四位やったんちゃうか。まさかな。まさか、それはないよな、アキちゃん。俺がダントツ首位(しゅい)なんやろ、アキちゃんにとって。  そうやって言うてくれ!  そうでないなら、俺は死ぬ。負けたくないねん、誰にも。そのリストではいつも、二位以下をはるかに引き(はな)した、ダントツ首位(しゅい)でいたいねん、俺は。  二位以下が、()ってもええよ。それはもう、仕方ない。俺にも()るしな。というか、俺のそのリスト、たぶん余裕(よゆう)で地球を七回り半ぐらいできるニョロニョロさやし。そっと心に仕舞(しま)っておくのにも、若干(じゃっかん)場所とりすぎてるような長さや。  アキちゃんのこと、とやかく言われへん。たぶんまだアキちゃんのは、手で持っても足に(とど)かへん程度(ていど)可愛(かわい)い長さなんやろうからな。  でも。でもな、重要なのは、そこに書いてある名前の順位(じゅんい)や。お前の(いと)しい(へび)が一位でないなら、(ゆる)せへんのやで。 「()れて行きとうないんやったら、(さそ)わんといて……」  俺は必死でそう()いた。そんなことない、お前が()らんと俺は死ぬって、アキちゃんが返事するのを期待(きたい)しつつ。ちょっとばかし、(いの)るような気持ちで。 「連れて行きたくない訳やないけど。でも、お前は何も用事ないやろ。来たくなかったら、無理に付き合わせんのも、どうかなあと思って」  遠慮(えんりょ)したように、アキちゃん言うてた。  どうも、俺が怒ってると思うてるらしい。ビビってる。  俺はその顔を見て、ピンと来た。()うてへんかったんや。昨日も、ラジオと一発やったこと、(おぼ)えてんのや。俺を口説(くど)いた時のことは、全然(おぼ)えてへんくせに、ラジオ口説(くど)いた時のことは、(おぼ)えてる。それで後ろめたいんや。 「そうか……アキちゃん。ほんなら俺は行かんわ。犬連れて行け。俺はお前のペットと違うしな、うろうろ後付いて歩いたりせえへんねん」  うわっ。何言うてんのや俺は。言うてもうてから、自分の声が、めっちゃ(うら)んでるようなのに(おどろ)いた。  アキちゃんはそんな俺を、(こま)ったように悲しそうに見て、タオルでごそごそ髪()きながら言うた。 「ごめんな……」 「ごめんで()むか……」  ごめんで()()む! アキちゃん愛してる! 素直(すなお)になれ俺。  昨夜(ゆうべ)、どんだけ必死で探したか。  水煙(すいえん)が、アキちゃん中々(なかなか)帰って来えへんかったんで、まさか神隠(かみかく)しではと心配していた。俺がアキちゃんはもしかすると、ラジオ(ねら)いやないやろかと話したせいやった。そんなことをメリケンパークで、アキちゃんの耳に()き込んでもうたのは俺やしな。  ラジオは昔、アキちゃんのおとんと何やかんやあったらしい。(しき)の一人や。そらまあ、何かあるやろ。  せやけど(やつ)は、ただ時々抱いてもらえるローテーション組やのうて、アキちゃんのおとんがストレス発狂(はっきょう)したときに、シケ()んで逃げ(かく)れする(かく)()みたいな相手やったらしい。  アキちゃんのおとんも、大概(たいがい)悪い子やったんやわ。  何か()(がた)いことがあると、ふらっと消える。さすが(げき)やというべきか。誰にも気づかれずに、ふわあーっ、と消えられるらしい。水煙(すいえん)ですら、気づかんかったらしい。とにかく()らんという事になって、皆、必死で探す。それでもどこにも()らんらしいねん。

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