fujossyは18歳以上の方を対象とした、無料のBL作品投稿サイトです。
私は18歳以上です
三都幻妖夜話(3)神戸編 22-22 トオル | 椎堂かおるの小説 - BL小説・漫画投稿サイトfujossy[フジョッシー]
目次
三都幻妖夜話(3)神戸編
22-22 トオル
作者:
椎堂かおる
ビューワー設定
363 / 928
22-22 トオル
藤堂
(
とうどう
)
さんはじっと、それを見ていた。ちょっと、感激したふうに。 「
綺麗
(
きれい
)
な子やなあ……」 抱きしめたいみたいやった。それは俺の
被害妄想
(
ひがいもうそう
)
か。 「何を言うねん、このエロオヤジが!
萌
(
も
)
えとる場合か。
遥
(
よう
)
ちゃんに言いつけてやるで」
地団駄
(
じだんだ
)
踏
(
ふ
)
みたい気持ちで
呻
(
うめ
)
き、俺は
藤堂
(
とうどう
)
さんをビビらせようとした。
遥
(
よう
)
ちゃん言うといたらビビるやろうという、そんな
僻
(
ひが
)
みもあって。 あんた神父が怖いんやろ。神父やから怖いねん。罪を
咎
(
とが
)
められそうで。 よくも神聖なる
僧衣
(
そうい
)
の男を
犯
(
おか
)
しやがって。
罰
(
ばち
)
当ててやるって、ヤハウェが言うてくるんやないか。今にもキレた天使が、
神罰
(
しんばつ
)
当てるザマス言うて、
光臨
(
こうりん
)
するんやないかって、そんなふうに思えるんと違うか。
稲妻
(
いなづま
)
ビカーン、で
心臓
(
しんぞう
)
止まるんや。そういう話、キリスト教には多い。
破戒
(
はかい
)
したやつに、
罰
(
ばち
)
当たる話。 「平気や。今日は、
遥
(
よう
)
ちゃん
居
(
お
)
らへん」
苦笑
(
にがわら
)
いして、
藤堂
(
とうどう
)
さんは答えた。
留守
(
るす
)
なん、お
宅
(
たく
)
の
嫁
(
よめ
)
。 「なんで
居
(
お
)
らんの。もう
離婚
(
りこん
)
されたんか」 「
浮気
(
うわき
)
しとうのや。仕事の手はずで、今夜は
三ノ宮
(
さんのみや
)
の教会に
泊
(
と
)
まるらしい。ヴァチカンから荷物届いたんやって」 「きっと
懺悔室
(
ざんげしつ
)
で先輩の神父に
強姦
(
ごうかん
)
されてる」 「されてへん……」
情
(
なさ
)
けないみたいに笑う
藤堂
(
とうどう
)
さんは、アホかという目で俺を
眺
(
なが
)
めた。 でも、そんな話、ほんまにあるで。教会ネタには。
生臭坊主
(
なまぐさぼうず
)
はどこにでも居(お)るねん。
同性愛
(
どうせいあい
)
あかんて言いつつ、お前がホモやないかっていう神父や牧師も、中には
居
(
お
)
るねんで。 そいつが
懺悔室
(
ざんげしつ
)
で信者の
綺麗
(
きれい
)
な男の子やら女の子やらに、お医者さんごっこを
強要
(
きょうよう
)
する場合もあるらしいで。そんなんしてへんと神父さんごっこしろ、神父。 せやから
神楽
(
かぐら
)
もどうかわからんで。あいつも解放されてもうてるしな。パパいっぱい
居
(
い
)
てるような
奴
(
やつ
)
やねんから。ファーザーに無理矢理
犯
(
おか
)
されてるかもしれへんでえ。 「今日は、
本間
(
ほんま
)
先生は?」 話そらしたかったんやろ。
藤堂
(
とうどう
)
さんは、さっさと話題を変えてきた。
上手
(
うま
)
い逃げっぷりやった。お前には彼氏が
居
(
お
)
るやろと、思い出させるネタ選び。 「
居
(
お
)
るで、部屋に。
浮気
(
うわき
)
してるわ。
可愛
(
かわい
)
いワンワンと」 「犬?」 「犬みたいな、十代の
餓鬼
(
がき
)
や。ケツが
可愛
(
かわい
)
いねん。他もいろいろ
可愛
(
かわい
)
いけどな。
案外
(
あんがい
)
今ごろ、昨日食いそこねたケツに、突っ込み入れてる頃かもしれへん」 「何言うてんのや、お前は」
微
(
かす
)
かにビビった顔で、
藤堂
(
とうどう
)
さんは
眉
(
まゆ
)
をひそめて、俺を見下ろした。 言うてもしゃあない。
愚痴
(
ぐち
)
なんか。このオッサンが俺に
同情
(
どうじょう
)
してくれる
訳
(
わけ
)
ない。 どうやって
誘
(
さそ
)
おうか。
遥
(
よう
)
ちゃん留守(るす)なら
丁度
(
ちょうど
)
いい。今夜はお前も
干
(
ほ
)
されんのやろ。俺と一発やらへんか。 「
藤堂
(
とうどう
)
さん……
大司教
(
だいしきょう
)
に
頼
(
たの
)
まれた絵を、描いたんやけど。
遥
(
よう
)
ちゃん
留守
(
るす
)
なんやったら、
預
(
あず
)
かっといてくれへんか」
画板
(
カルトン
)
見せて、俺は
頼
(
たの
)
んだ。お
強請
(
ねだ
)
りの目で。 このオッサン
口説
(
くど
)
くの、久しぶり。八ヶ月ぶりやな。
懐
(
なつ
)
かしい。 前は毎日こんなことばっかりしてたけど。 キレて暴れたり、
可愛
(
かわい
)
い顔して
口説
(
くど
)
いてみたり、
飴
(
あめ
)
と
鞭
(
むち
)
とで、なんとかオッサン
籠絡
(
ろうらく
)
しようと、俺も
励
(
はげ
)
んだもんやったけど。 「お前が描いた絵?」 見たそうに、
藤堂
(
とうどう
)
さんは
半笑
(
はんわら
)
いやった。俺も笑った。
恥
(
は
)
ずかしそうに。 「そうやで。でも、ここでは見んといて。
恥
(
は
)
ずかしい絵やねんから。家で見て。笑わんといてくれよ。俺がこんな絵描けるようになったんは、
訳
(
わけ
)
ありやねんから」
渡
(
わた
)
された
画板
(
カルトン
)
の中身を、ものすごく見たそうな目をして、
藤堂
(
とうどう
)
さんは苦笑(くしょう)していた。 「どんな
訳
(
わけ
)
やねん」 「話そうか。せやけど、ここじゃなあ……」 首を
傾
(
かし
)
げて、俺は
悩
(
なや
)
んでるようなフリをした。そして、まだ効くんやろかと
悩
(
なや
)
んだ。俺の魔法は、まだこのオッサンに
効
(
き
)
くのか。いちかばちか、やってみるか。ダメ元で。 そう思って、顔を上げ、俺は
藤堂
(
とうどう
)
さんの耳元に、
囁
(
ささや
)
いた。
誘
(
さそ
)
いをかける、熱い息で。 「社長
椅子
(
いす
)
の、お
膝
(
ひざ
)
抱っこでやったら、話そうかなあ……?」 俺がそう言うと、
藤堂
(
とうどう
)
さんは、むっちゃ
微妙
(
びみょう
)
な顔をした。むすっとしたような、何か
堪
(
こら
)
えている顔や。俺には
見憶
(
みおぼ
)
えのある顔。 まだ京都のホテルの、インペリアル・スイートに
棲
(
す
)
んでいた頃、
忙
(
いそが
)
しくホテルの中をうろうろ働き
廻
(
まわ
)
っているオッサンが、俺のご
機嫌
(
きげん
)
をうかがいに来る。時々顔出さへんと、俺はキレて暴れたり、火付けたりする、怖い
蛇
(
へび
)
やったから。 そんなんされたら
堪
(
たま
)
らんと、
蛇詣
(
へびもう
)
でに来た
藤堂
(
とうどう
)
支配人に、抱いてほしいて耳
舐
(
な
)
めてやって、ねっとり
誘
(
さそ
)
うと、オッサンはこの顔をした。 そして大体、前は
拒
(
こば
)
んだ。すまんけど、会議があるねん。重要な来客が。電話せんとあかんねん。次の企画のセッティングがある。
嫁
(
よめ
)
や娘がやってくるからと、何やかんや理由をつけて、オッサンは断ってきた。
寂
(
さび
)
しいんやったら、誰かお前の遊び相手になるような、好みの男を買うてやろうか。それとも、せめて、優しく
嬲
(
なぶ
)
って、少しは満足いくように、ご
奉仕
(
ほうし
)
したろかと、オッサンは怖れる目をして、俺を見た。
前へ
363 / 928
次へ
ともだちにシェアしよう!
ツイート
椎堂かおる
ログイン
しおり一覧