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三都幻妖夜話(3)神戸編 23-12 アキヒコ | 椎堂かおるの小説 - BL小説・漫画投稿サイトfujossy[フジョッシー]
目次
三都幻妖夜話(3)神戸編
23-12 アキヒコ
作者:
椎堂かおる
ビューワー設定
395 / 928
23-12 アキヒコ
反
(
そ
)
らした白い背に、きらきら汗が浮いている。
悶
(
もだ
)
えるような腰使いに
揺
(
ゆ
)
れて、その汗が、
滴
(
したた
)
り落ちる
雫
(
しずく
)
に変わる。 汗まみれで
励
(
はげ
)
む、その顔の、美しいことといったら。ほんまにもう、絵に描いて残したいくらい。でもそれは、今まではずっと
我慢
(
がまん
)
してきた。 それはあかん。 いくらなんでも、あかんと思う。
亨
(
とおる
)
が別によくても、俺が
恥
(
は
)
ずかしい。だいたい、いつ描くんや。 今か。
変態
(
へんたい
)
すぎる。うちのおとんやあるまいし。セックスしながら絵を描くな。 その考えに、めちゃめちゃ
恥
(
は
)
ずかしなってきて、俺は勝手に
赤面
(
せきめん
)
していた。 あかんわあ。
恥
(
は
)
ずかしなったらあかん。精神状態、
如実
(
にょじつ
)
に出るから。下の人のコンディションに。 「どしたん、アキちゃん。もう、いきそうなんか? 早ない?」 「いけない想像をした……」 「どんな想像?」
責
(
せ
)
められて、苦しいみたいな
愉悦
(
ゆえつ
)
の顔で、
亨
(
とおる
)
が
訊
(
き
)
いてきた。俺の手を
握
(
にぎ
)
って。 「話したら、エロログに書かれるから
嫌
(
いや
)
や」 「書かへんて約束するから、こっそり教えて」 「
嫌
(
いや
)
や。教えへん」 俺は必死で首
振
(
ふ
)
って
拒
(
こば
)
んだ。自分の変な
妄想
(
もうそう
)
を
振
(
ふ
)
り
払
(
はら
)
いたくて。 変すぎる。それは俺が
裸
(
はだか
)
にした
亨
(
とおる
)
の
肌
(
はだ
)
に絵を描いている夢やねん。寝てるわけやないけど、夢みたいやった。筆が
滑
(
すべ
)
ると
亨
(
とおる
)
が
喘
(
あえ
)
ぐ。 たぶん、
朧
(
おぼろ
)
様に聞いたおとんの
武勇伝
(
ぶゆうでん
)
のパクりなんやけど、でも、想像すると、つらい。自分もそれが好きなような気がして。
要
(
い
)
らんとこばっかり似てる。悪いとこしか似てへん。
淫
(
みだ
)
らな
白日夢
(
はくじつむ
)
の世界で、筆が白い足指の間をなぞると、
亨
(
とおる
)
が
悶
(
もだ
)
えた。 代わりに本物のほうの足指を舌で
嬲
(
なぶ
)
ると、想い描いたのと、ほとんど変わらん
敏感
(
びんかん
)
さで、
亨
(
とおる
)
が
悶
(
もだ
)
えた。 それが俺には、むちゃくちゃ
堪
(
こた
)
えた。下の人も、もうあかんて言うてた。たぶん言うてたやろ。もし俺に、そんなヤバい声がほんまに聞こえていたら。 そんな
妄想
(
もうそう
)
に
悶絶
(
もんぜつ
)
しつつ、気がついたら俺は、ものすご激しく
亨
(
とおる
)
を
責
(
せ
)
めてた。それとも自分を
責
(
せ
)
めてたんか。
亨
(
とおる
)
の中の、熱くて
狭
(
せま
)
いところで、もう死ぬって
悶
(
もだ
)
えてんのは、俺のほうかもしれへん。 「もう
我慢
(
がまん
)
できひん……」 情けない気分になって、追いつめられた俺は、小さく
叫
(
せけ
)
ぶ声やった。 でも
亨
(
とおる
)
は、それを全然聞いてへんかった。今にも
極
(
きわ
)
まりそうな顔をして、熱く
悶
(
もだ
)
えて、はあはあと身を
仰
(
の
)
け
反
(
ぞ
)
らせてた。もう何も耳に入ってへんような、赤い夢中の顔やった。 「イクよぅ……アキちゃん、もう、あかん……もう、ダメ……あ……っ」
釣
(
つ
)
り上げられた魚みたいに、
亨
(
とおる
)
は激しく身を
捩
(
よじ
)
ってた。
留
(
とど
)
めをさしてくれと、
喘
(
あえ
)
いで苦しげにのたうち回る体に、俺は夢中で
追撃
(
ついげき
)
をかけていた。 それはやっぱり、
亨
(
とおる
)
を
責
(
せ
)
めてるんやない。自分を
責
(
せ
)
めてる。
亨
(
とおる
)
を
責
(
せ
)
めてる。どっちでも同じこと。 俺が
悦
(
よ
)
ければ、
亨
(
とおる
)
も
悦
(
え
)
えらしい。やりたいように暴れるだけで、
亨
(
とおる
)
は
悶
(
もだ
)
える。アキちゃん好きやって、いつも甘く
啜
(
すす
)
り泣いてくれる。 「アキちゃん好きや……好き、好きやねん、いっしょにイって……!」 必死で言うてる
亨
(
とおる
)
に、俺も好きやって言いたかった。でももう、それどころやない感じで、もう言葉にならん声あげて、最後の
愉悦
(
ゆえつ
)
を
極
(
きわ
)
めた
亨
(
とおる
)
の体を抱きしめて、俺も必死で
果
(
は
)
てていた。 ものすごく満たされて、混ざり合う感じがする。 きつく抱き合いながら、
喘
(
あえ
)
ぐ
亨
(
とおる
)
の
唇
(
くちびる
)
をキスで
塞
(
ふさ
)
いで、その甘い声を震える舌から
直
(
じか
)
に
舐
(
な
)
めると、
亨
(
とおる
)
が強い指で俺の背を
掻
(
か
)
き
抱
(
いだ
)
く。その
溶
(
と
)
け合うような
抱擁
(
ほうよう
)
と、その時、感じる
愉悦
(
ゆえつ
)
の深さに、ほんまに
魂
(
たましい
)
まで
溶
(
と
)
け合っているような気がする。 それも俺の
妄想
(
もうそう
)
かもしれへん。でも、この瞬間が、このまま永遠に続けばいい。 きっと天国って、
逝
(
い
)
けるとしたら、そういう所やという気がする。何も考えんと
亨
(
とおる
)
と熱く抱き
合
(
お
)
うて、好きや好きやって
朦朧
(
もうろう
)
として、
蕩
(
とろ
)
ける
愉悦
(
ゆえつ
)
の中にいる。 誰にも分かたれないぐらい、どろどろに
溶
(
と
)
け合って、混ざり合っている。そういう感じ。 だけど、もし、それが本当に永遠に続いたら、きっと頭おかしなる。幸せすぎて
耐
(
た
)
えられへん。 たぶん、ほんの何十秒か。せいぜい一分かそこら。長い一生の目で見れば、そんな一瞬で
過
(
す
)
ぎる世界やねんけど、でもその瞬間にだけ語り合える言葉でない何かが、あるような気がする。 やがて
過
(
す
)
ぎ去った、そんな熱い波の
名残
(
なごり
)
に、まだ
揺
(
ゆ
)
れているような
浮
(
う
)
かされた目で、
亨
(
とおる
)
は俺と抱き合ったまま、うっとり
間近
(
まぢか
)
に目を見つめてきた。 「好きや、アキちゃん。ほんまに愛してる。ずっと俺を、離さんといて……」 甘く
囁
(
ささや
)
く声で、
熱
(
ねつ
)
っぽく言うて、
亨
(
とおる
)
はそれで気が済んだみたいに、とろんと目を閉じ、小さく
唇
(
くちびる
)
を合わせるだけのキスをした。 そのまま身を寄せてくる白い
裸体
(
らたい
)
は、深く満足したような、しどけない
弛緩
(
しかん
)
の中にいて、ぐんにゃり俺に体を
預
(
あず
)
けてる。 ずっと離さんといてくれと、
亨
(
とおる
)
は時々俺に
頼
(
たの
)
んでる。俺はそれに、ずっと離さへんと答える。いつもやったら、そうやねんけど。この時ばかりは、目が
惑
(
まど
)
った。 甘い息をして、まだ胸を
喘
(
あえ
)
がせている、汗をかいた白い体を抱いて、お前は俺のもんやという、強い
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れんちゃく
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は感じたけども、それを口に出していいのかどうか、自信無かった。
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椎堂かおる
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