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三都幻妖夜話(3)神戸編 24-39 トオル | 椎堂かおるの小説 - BL小説・漫画投稿サイトfujossy[フジョッシー]
目次
三都幻妖夜話(3)神戸編
24-39 トオル
作者:
椎堂かおる
ビューワー設定
461 / 928
24-39 トオル
普通
(
ふつう
)
かどうかなんて、
誰
(
だれ
)
も気にしてへん。少なくとも
蔦子
(
つたこ
)
さんは気にしてへんわ。我が子が
不老不死
(
ふろうふし
)
になることだけに
着目
(
ちゃくもく
)
している。それ以外は、まあええかみたいな。 「
秋津
(
あきつ
)
は代々、
不老不死
(
ふろうふし
)
の
仙人
(
せんにん
)
を生み出すことを
悲願
(
ひがん
)
としてきた
家系
(
かけい
)
どす。
水煙
(
すいえん
)
から聞いてませんのか。あんたがその完成品や。ほんまに
不老不死
(
ふろうふし
)
なんやったら」 「あ……あのな、
蔦子
(
つたこ
)
おばちゃま。
誰
(
だれ
)
でもなれるわけやないんやで。運や
素養
(
そよう
)
が足りんかったら、化けモンなってまうリスクも、かなりの
率
(
りつ
)
であるんやで。それに
竜太郎
(
りゅうたろう
)
にはまだちょっと早いんやない? だって十三才とかやろ、あいつ。それで止まってまうんやで?
大人
(
おとな
)
になられへんのやで」 俺は
常識的
(
じょうしきてき
)
な線から
攻
(
せ
)
めてみた。
永遠
(
えいえん
)
の十三才というのは、さすがにちょっと
厳
(
きび
)
しいやろう。
秋津
(
あきつ
)
のおかんみたいな
永遠
(
えいえん
)
の十八才やったらイケてるけど、十三才はちょっと
若
(
わか
)
すぎやもんな。そうやない? 「かましまへんやろ、別に」 かましまへんのやって。俺はますます
汗
(
あせ
)
出てきちゃいましたよ。 「あの子は
龍
(
りゅう
)
の血を引いてますのや。
霊力
(
れいりょく
)
かて
人並
(
ひとな
)
み以上にあります。それで
素養
(
そよう
)
に不足はないやろ」 「もしかすると
霊力
(
れいりょく
)
は、そんなに関係ないねんで、おばちゃま。言いづらいけど、たぶん俺の
勘
(
かん
)
ではな、その
和合
(
わごう
)
には、愛が必要なんやで?」 そうやと思うねん。アキちゃんが俺よか
無節操
(
むせっそう
)
に進化したりしてへんかったらの話やけども。 俺は
過去
(
かこ
)
に何度かは、入れあげた相手を自分の
眷属
(
けんぞく
)
にしようと思ったことがある。 気に入った相手だけやった。それでも成功せえへんかった。
上手
(
うま
)
くいったと思えるのは、アキちゃんと、後はギリギリ
藤堂
(
とうどう
)
さんくらいのもんでな。その
二人
(
ふたり
)
の共通点て、たぶん、愛やと思うんやなあ。 でも
超
(
ちょう
)
言いにくい。今は言いにくい。せめてアキちゃんのおらんとこで話したい気持ちでいっぱいです。 愛してる、俺と
永遠
(
えいえん
)
にずっと、
一緒
(
いっしょ
)
にいてくれと思えるような相手にでないと、俺はその
不老不死
(
ふろうふし
)
を
授
(
さず
)
けられへんらしい。 失敗すると、相手を化けモンに変えてしまう。見るも
無惨
(
むざん
)
なモンスターにな。 相手の
霊力
(
れいりょく
)
、関係ないんやないか。だって、
確
(
たし
)
かにアキちゃんはすごい
神通力
(
じんつうりき
)
を持った
覡
(
げき
)
やけど、
藤堂
(
とうどう
)
さんは
一般人
(
パンピー
)
なんやで? それでも何か、言いしれぬカリスマは持ったオッサンやと思うけど、アキちゃんや
竜太郎
(
りゅうたろう
)
が持っているような
霊力
(
れいりょく
)
はない。 「リスキーすぎるで、
蔦子
(
つたこ
)
さん。
竜太郎
(
りゅうたろう
)
が化けモンなってもええんか?」 「
坊
(
ぼん
)
が
竜太郎
(
りゅうたろう
)
を愛してくれればええだけの話ですやろ」 ほんまや。そうやなあ。それであっさり
解決
(
かいけつ
)
やんか。
盲点
(
もうてん
)
やったなあ、気付かへんかった。
亨
(
とおる
)
ちゃん、うっかりしてたわ。 って、オイ。
誰
(
だれ
)
の前でその話しとんねん。
鬼退治
(
おにたいじ
)
は
大目
(
おおめ
)
に見よかみたいな事は思うたけどな、
竜太郎
(
りゅうたろう
)
は人間やんか。 あいつ今のままでも
充分
(
じゅうぶん
)
イケてるから。これ以上、
凄
(
すご
)
くならんでええから。アキちゃんが愛しちゃう必要ぜんぜんないやろ! ええかげんにせえよと思って、俺が
焦
(
あせ
)
って
眺
(
なが
)
めると、アキちゃんはさすがに、ドン引きしたような青い顔やった。 「
蔦子
(
つたこ
)
さん。そんな
簡単
(
かんたん
)
に言わんといてくれ。俺は
竜太郎
(
りゅうたろう
)
のことは
可愛
(
かわい
)
いけど、そういう意味でやないよ。年の
離
(
はな
)
れた弟みたいなもんやんか。それに俺は、あと一日二日で死ぬんやろ。それでどないせえ言うんや……ありえへんやろ」 「
朧
(
おぼろ
)
は
寝取
(
ねと
)
っていったくせに、よう言いますわ」 けろっと言われて、アキちゃんグサーッと来てた。たぶん
電柱
(
でんちゅう
)
ぐらいのが
刺
(
さ
)
さってた。 お前は手が早いと
罵
(
ののし
)
られている、それが死ぬほどショックみたいやった。 「でも……それは……
竜太郎
(
りゅうたろう
)
はまだ
子供
(
こども
)
やし。それに
親戚
(
しんせき
)
やんか」 「ウチとあんたのお父さんは
親戚
(
しんせき
)
やけど、
許嫁
(
いいなずけ
)
どしたえ。それにウチには
竜太郎
(
りゅうたろう
)
は、あんたに本気のように見える」
苦
(
にが
)
い顔して、
蔦子
(
つたこ
)
さんは言うた。アキちゃんはさらにもう一本、
電柱
(
でんちゅう
)
の横に道路
標識
(
ひょうしき
)
ぐらいは
刺
(
さ
)
さったみたいやった。
親御
(
おやご
)
さんに言われると、どうしてええかわからんよな。 「そういうのは、
困
(
こま
)
りますのんや、親としては。せやけど人が、ほんまの
恋
(
こい
)
をするのに、年が関係あるやろか。
登与
(
とよ
)
ちゃんなんか、アキちゃんのことを、
物心
(
ものごころ
)
つく
頃
(
ころ
)
から好きやったて言うてましたえ。あの子はそれをずっと、
胸
(
むね
)
に
秘
(
ひ
)
めてたんや」 「でも、俺は……
蔦子
(
つたこ
)
さん。好きな相手がもう
居
(
お
)
るんや」 ふらふらの小声で、アキちゃんはやっと言うてた。どないして身をかわせば
角
(
かど
)
の立たへん話か、ものすご
悩
(
なや
)
んでるらしい。 でも、ぶっちゃけアキちゃんはな、
竜太郎
(
りゅうたろう
)
がストライクゾーンから
漏
(
も
)
れてるだけやねん。中一とやる
趣味
(
しゅみ
)
はないだけ。これが五年十年たったら、正直わからんで。 でも、
困
(
こま
)
ったという、
切
(
せつ
)
ない顔をして、やむなくそうゲロってるアキちゃんの顔は、本気みたいやった。 自分にはもうツレがおるから、
他
(
ほか
)
のは好きになられへん。そんな気はないと、言うてるらしい。 どの
面
(
つら
)
提
(
さ
)
げてって感じやねん。今でもすでに俺と犬と、
朧
(
おぼろ
)
様を
侍
(
はべ
)
らして、
水煙
(
すいえん
)
にもくらくら来てる。そんな男がやで、好きな相手がもう
居
(
お
)
るねんやないよ。関係あらへんのが
現状
(
げんじょう
)
やないか?
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椎堂かおる
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