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24-50 トオル
この人、なんでこんなんなんやろなあ。
でも、こんな性格 やから、良かったこともあるんとちゃうか。
皆 、自分を基準 にもの考えるやろ。朧 様は本気で死ぬほど好きな相手がおって、それに夢中 になってても、焼鳥屋 で隣 に座 ったオヤジがイケてたら、ちょっと食うてみようかなと思うらしいで。
仕事場の上司 とかも、とりあえず食うとくらしい。
やりたい言うやつは、とりあえず食うとくらしいで。スキンシップとボディランゲージでしか分からんモンが、世の中にはあるらしい。
あるかもしれへんけどな。親睦 を深めるために、いちいちセックスする人、俺の知る中ではこの人くらいやなあ。相手を知るためには、とりあえず寝 てみれば分かるんやって。
それは鬼畜 米英 でもナチでも同じ。裸 に剥 いたらみんな同じ人間やったんやから。やることおんなじやから。話す言葉は違 っても、喘 ぐ声にはさほどの違 いはないんやから。
言葉を越 えれば無問題 。エロエロ国際化 。ラブラブで平和 に。それが怜司 兄 さんの戦後の哲学 らしい。
とんでもない事になってきています。エロで俺を越 えてる奴 が居 るとは、ほんまに世界は広い。
まあ、そんな、世界各国に体当たり取材 をかけている怜司 兄 さんには熱烈 なファンが多い。幼児 から爺 まで、いろいろ幅広 い層 から愛されている。
水煙 様を別にすれば、こいつが嫌 いやという奴 を、俺は見たことがない。こんなキワモノでありながら、怜司 兄 さんは誰 からも愛されるタイプ。そして誰 でも愛しちゃうタイプ。
そんな奴 やねんからな、独占 しようと思うほうが間違 っている。徒労 や。それを望 んだところで、いちいちしんどい思いをするだけや。
こいつをツレにしようと思ったら、まさしく神のごときキャパが必要になってくる。神にならんと無理。
俺がアキちゃんと連れ合 うたせいで、めちゃめちゃ悟 りをひらいてもうたように、激 しく突 き抜 けへんかったら無理。
信太 はその点、まだまだや。独占欲 が強すぎる。
もしかした朧 様とは、ご縁 がなかったんかもしれへんな。
それについて、おとん大明神 はどうなんやろか。昔、まだまだ生きてるボンボンやった頃 には、浮気 せんといてくれみたいなニュアンスむんむんやったっぽいけど。
浮気 って、てめえが浮気 で付き合 うとんのやないか。なにが浮気 せんといてくれや。じっと自分の胸 に手をあてて考えろ!
それでも、そんな我 が儘 なおとんに、朧 様は適当 に付き合 うてくれた。
浮気 せんかったんやないで。バカスカしたらしい。
もう、浮気 せんといてくれって言う気も起きへんくらい、バカスカしてやったんや。
しかもそれを暁彦 様に話す。あっけらかんとしてんねん。
そして暁彦 様が他 のと寝 ようが、ちょっと本気でのめりこんでようが、それに怒 るどころか、そんなにええんか、俺にも貸 せって言うらしい。
それこそ現実 の話と思われへんわ。爆笑 や。
だって他人事 なんやしな。俺には関係ないもん。
独占欲 の強かったらしい秋津 のおとんにとって、浮気 しまくる朧 様には常 に視線 が泳いだやろう。
せやけど自分にも手に入らんもんはある。美しいけど独占 でけへん野生 の鳥のように、朧 の龍 はふらふら夜空を舞 っていて、気に入った寝床 があればそこで寝 る。
そしてそれの何が悪いねんという態度 。気にせんとお前も気にあった相手がおったら夜を楽しめ。何なら三人で。それで足りなきゃ十五人ででも。気にすることない、適当 でええねんて、本気で言うてる朧 様は、まさに地獄 に仏 やったやろ。
なんで朧 が暁彦 様を独占 しようとしなかったのか。それは単純 な話やったらしい。これは後々本人から聞いたネタやから、間違 いはない。
暁彦 様はイケてる男や。みんな好きやろ。それで当然やと朧 は思うらしい。
暁彦 様も気の多い男やで、面食 いやしな。気に入る相手がごろごろ居 るわ。
それに仕事やというのもある。式 やら鬼 やら手なずけなあかん。それに失敗してもうたら、斬 った貼 ったの刃傷沙汰 やら、修羅場 やら。とにかく暁彦 様が泣くことになる。
それは可哀想 。それやったらセックスしといたらええやん。お前のこと好きやて言うといてやったらいい。それで平和にいって、暁彦 様がいつもにこにこしてられんのやったら、それでええわと思うんやって。
確 かにエロは気持ちええよな、俺も大好き。お前もやればええよと。
なんという深すぎて底知 れぬ愛の世界。ほとんど涅槃 の境地 やね。人間界の愛やないよ。弥勒菩薩 やで。
俺は正直、そこまでイカレたくはないね。なりたくないやろ、皆 も。
変やねん怜司 兄 さんは。まともな奴 とは連れ合われへんわ。
信太 では無理や、幸せになるどころか、お互 いしんどいばっかりで。合うてへん。
割 れ鍋 に綴 じ蓋 というか、こいつはほんまに暁彦 様と合 うてたんやで。たぶん、そこではきっと幸せそうにしていたんやろう。
そんな日が、なんとかまた来んものかと、俺は正直ちょっと思うてた。
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