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三都幻妖夜話(3)神戸編 24-57 トオル | 椎堂かおるの小説 - BL小説・漫画投稿サイトfujossy[フジョッシー]
目次
三都幻妖夜話(3)神戸編
24-57 トオル
作者:
椎堂かおる
ビューワー設定
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24-57 トオル
理解
(
りかい
)
でけへん。
理解
(
りかい
)
できるか? 俺にはでけへん。
寛太
(
かんた
)
はどうや。
理解
(
りかい
)
でけへんのやったら、今からでも
遅
(
おそ
)
くはない。
誰
(
だれ
)
か
他
(
ほか
)
のに
乗
(
の
)
り
換
(
か
)
えるとか、せめて
理解
(
りかい
)
でけへんと、
虎
(
とら
)
に
絶叫
(
ぜっきょう
)
してやれ。 そんなもんも
一切
(
いっさい
)
なしで、死のうというのか、この
虎
(
とら
)
は。なんて
薄情
(
はくじょう
)
なやつや。
亨
(
とおる
)
ちゃんちょっと、ミス・チョイスした。これと
寛太
(
かんた
)
をくっつけたのは、
虎
(
とら
)
にとっては幸せやったかもしれへんけども、
寛太
(
かんた
)
には
済
(
す
)
まんことをした。 もしもまだ、
違
(
ちが
)
う
舵
(
かじ
)
を切れるんやったら、切ってくれ。 心変わりをすればええやん。そんなの
誰
(
だれ
)
でもやってるで。お前もできるよ。 もっと楽なほうへ。楽な相手のほうへ、気持ちを向ければええんやで。 そして、
明後日
(
あさって
)
より先の未来にも、へらへら幸せそうに、笑った顔して生きていけ。もしもお前が、実はただの火の鳥で、
不死鳥
(
ふしちょう
)
やないっていう事になっても。 だってそんな、いきなり神になれるかな。今までただのアホやったのに。 今もたぶん、大して
賢
(
かしこ
)
くはないのにさ。 だってアホでなきゃ、平気で
座
(
すわ
)
ってたりせえへんよ。もっと何か、リアクションあるやろ。自分が本気で
惚
(
ほ
)
れている
奴
(
やつ
)
が、
明後日
(
あさって
)
死ぬわと言うてんのやで。
湊川
(
みなとがわ
)
怜司
(
れいじ
)
と、しょんぼり
抱
(
だ
)
き
合
(
お
)
うてる場合やない。 「
心境
(
しんきょう
)
の変化というか、
時局
(
じきょく
)
の変化やで、
蔦子
(
つたこ
)
さん。予感やけども、何かいろいろ動き出すような気がするんや。ずっと
停滞
(
ていたい
)
していたもんが、やっと流れ出す」 「おやまあ、
怜司
(
れいじ
)
。あんたも
予知
(
よち
)
をするようになったんか? うちの血を飲んだせいやろか」
冗談
(
じょうだん
)
みたいに
蔦子
(
つたこ
)
さんは言うていたけど、静かに笑っているような目は、どことなく、満足そうやった。
朧
(
おぼろ
)
の
龍
(
りゅう
)
の
傷
(
きず
)
も
癒
(
い
)
えて、とうとう飛び立つ時が来たと、
蔦子
(
つたこ
)
さんは思うてたんかもしれへん。 「
嫌
(
いや
)
やけど、しょうがない。また
水煙
(
すいえん
)
と同じ
釜
(
かま
)
の
飯
(
めし
)
を食う
羽目
(
はめ
)
になるとは。これも
蔦子
(
つたこ
)
さんの言う、
時流
(
じりゅう
)
というのか。
紆余曲折
(
うよきょくせつ
)
あったけど、結局また
振
(
ふ
)
り
出
(
だ
)
しに
戻
(
もど
)
ったわ。俺はまた、あの青いのと、アキちゃんを取り合う
羽目
(
はめ
)
になんのか。
因果
(
いんが
)
は
巡
(
めぐ
)
るってやつか。今度はドジ
踏
(
ふ
)
まんようにしたいもんやで」 「あんじょうおやり。幸せに向かって
漕
(
こ
)
ぐだけどす。それが
時流
(
じりゅう
)
を
渡
(
わた
)
る時の、
基本
(
きほん
)
どす」
徒
(
あだ
)
っぽい
笑
(
え
)
みで言う
蔦子
(
つたこ
)
さんは、うさんくさいような女
占
(
うらな
)
い
師
(
し
)
の顔やった。 「
言
(
い
)
い
訳
(
わけ
)
するわけやないけどなあ、
朧
(
おぼろ
)
。いろいろ、ひどいことがあったやろ。せやけど、アキちゃんのことに関しては、うちはあれで、実は
最善
(
さいぜん
)
の未来を
選択
(
せんたく
)
したんやないかと思うんえ。生きて
戻
(
もど
)
ってこられれば、もちろんそれに
越
(
こ
)
したことはなかった。それでも結果、
戻
(
もど
)
ってきたんえ。うちはちゃんと、
会
(
お
)
うたもの。きっと帰ってくると思うてたわって、
登与
(
とよ
)
ちゃんはけろっとして言うてましたえ。結局そうして、ええようになる未来を、信じて待ってる子が勝つわけやしな、アホみたいやけど、あんたもそうしたらどないどす? どんだけ
視
(
み
)
ても、結局のところ、
未来
(
さき
)
は分からしまへんえ。その時が来て、
蓋
(
ふた
)
を開けてみるまでは、分からしまへん。人事を
尽
(
つ
)
くして、
天命
(
てんめい
)
を待つだけどすえ」 ここで、
蔦子
(
つたこ
)
おばちゃまの、ことわざ
豆知識
(
まめちしき
)
。 人事を
尽
(
つ
)
くして天命を待つとは、先のことはわからへん、人間は人間がやれるベストを
尽
(
つ
)
くして、後は
思
(
おも
)
い
悩
(
なや
)
まず、
天地
(
あめつち
)
の良きようにお
任
(
まか
)
せしなはれという意味どすえ。 ケ・セラ・セラやな。結局そこへ、合流したわけ。
The future's not ours to see
(
ザ・フューチャーズ・ノット・アワーズ・トゥシー
)
. 先のことなど、分からない。 未来は結局、人の
視
(
み
)
るもんやないから。何が起きるか、そこまで
実際
(
じっさい
)
、生きてみてからのお楽しみ。
悲観
(
ひかん
)
したらあかんな。どんな
怖
(
こわ
)
い運命が待っていても、それにはまだ、続きがあるかも。 自分の人生の
続編
(
ぞくへん
)
や第二部は、もしかすると、ものすごハッピーな話なんかもしれまへんえと、それが結局、
稀代
(
きたい
)
の予知
能力者
(
のうりょくしゃ
)
、海道
蔦子
(
つたこ
)
の人生の
結論
(
けつろん
)
らしい。 せやし
諦
(
あきら
)
めたらあかん。幸せ
探
(
さが
)
して、
漕
(
こ
)
ぎ
続
(
つづ
)
けなあかん。 「未来を
視
(
み
)
てる女にそう言われると、
含蓄
(
がんちく
)
があるわあ」 「そうどすやろ。あんたも
精々
(
せいぜい
)
、お
気張
(
きば
)
りやす」 さようならとは言わんけど、
蔦子
(
つたこ
)
さんの
微笑
(
びしょう
)
は別れの
笑
(
え
)
みやった。 「なにそれ。
送辞
(
そうじ
)
?」 「そんなもんどす。アキちゃんには、ウチからも、あんたは
息子
(
むすこ
)
に
乗
(
の
)
り
換
(
か
)
えたわけやないからと言うといてあげます。それとも、
乗
(
の
)
り
換
(
か
)
えたんか?」 「
乗
(
の
)
り
換
(
か
)
えてへん! 必死な
奴
(
やつ
)
らが
寄
(
よ
)
って
集
(
たか
)
って、へったくそなことしとるから、見てられへんようになっただけや」 何それ
兄
(
にい
)
さん、俺らのこと?
違
(
ちが
)
うよね。俺らのこと言うてはるのん? 「大体このボンボンのどこが……」
怜司
(
れいじ
)
兄
(
にい
)
さん、なんかアキちゃんのこと、
罵
(
ののし
)
ってやろかと思うたんやろか。じろっとソファの向かいにいてるアキちゃんに、
憎
(
にく
)
そうな
照
(
て
)
れ
隠
(
かく
)
しの目を向けた。 なんで
照
(
て
)
れてんの。なんか
微妙
(
びみょう
)
なんですけども。 しかしまた、それどころやなかった。 一時おさまってたはずの、アキちゃんの
霊水
(
れいすい
)
だらだらが、また始まりそうになっていた。 ものすご強い
後光
(
ごこう
)
を
発
(
はっ
)
して、アキちゃんはたらあっと
額
(
ひたい
)
のあたりから
垂
(
た
)
れてきた
透明
(
とうめい
)
な水のようなものを、ぽたりと
膝
(
ひざ
)
に受けて、まずいという顔をした。
朧
(
おぼろ
)
様もした。 「先生……
締
(
し
)
まりなさすぎ。また
漏
(
も
)
れてるで」
湊川
(
みなとがわ
)
怜司
(
れいじ
)
は
眉
(
まゆ
)
をひそめて、めっちゃ
蔑
(
さげす
)
むように言うてた。
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椎堂かおる
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