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三都幻妖夜話(3)神戸編 25-68 アキヒコ | 椎堂かおるの小説 - BL小説・漫画投稿サイトfujossy[フジョッシー]
目次
三都幻妖夜話(3)神戸編
25-68 アキヒコ
作者:
椎堂かおる
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25-68 アキヒコ
水煙
(
すいえん
)
の
式神
(
しきがみ
)
チェックがなんで気になる。 お前はもう
秋津
(
あきつ
)
の
式
(
しき
)
でも、俺の
僕
(
しもべ
)
でもない。ただのツレなんやろ。
水煙
(
すいえん
)
が
瑞希
(
みずき
)
を
贔屓
(
ひいき
)
したかて、別にええやん。関係ないやろ。 「服着ろ、ジュニア。別に
普段着
(
ふだんぎ
)
でええから。急いで行こか。
茂
(
しげる
)
が
焦
(
じ
)
れて、
籤
(
くじ
)
取(くじと)り始めてまうわ。あいつは昔からイラチやからな」
瞬膜
(
しゅんまく
)
のある目で
瞬
(
またた
)
いて、
水煙
(
すいえん
)
は
部屋
(
へや
)
を出て行く
扉
(
とびら
)
のあるほうを見つめた。 はいはいと、俺は
慌
(
あわ
)
てて自分の服を着に行った。
亨
(
とおる
)
もなぜかオタオタしていた。 「えっ、ちょっと待てよ
水煙
(
すいえん
)
。俺の朝シャワーは?」 「お前は
寝
(
ね
)
とったらええわ。関係ない子やから」
水煙
(
すいえん
)
に、きっぱり言われて、
亨
(
とおる
)
は、ええっ、と大げさに
叫
(
さけ
)
んでいた。 「関係ない子って、なんやねん、それは。俺はアキちゃんの
配偶者
(
はいぐうしゃ
)
やで!?」 「関係あらへん、そんなことは。お前は
部外者
(
ぶがいしゃ
)
や。
秋津
(
あきつ
)
にとっても、
霊振会
(
れいしんかい
)
なるものにとっても。今は
主
(
あるじ
)
のおらん、お
野良
(
のら
)
の式(しき)やろ。それに
妻帯
(
さいたい
)
してるモンでも、連れ合いを
神事
(
しんじ
)
に
伴
(
ともな
)
ったりはせえへんのやで」 せやし、
亨
(
とおる
)
には席はない。そういう話を、
水煙
(
すいえん
)
は今さら、けろりと教えてやっていた。 なんで今まで
黙
(
だま
)
ってたん。イケズやねんなあ……。 「
嘘
(
うそ
)
お! ほな俺、どないすんの!?」 「京都に先に帰っといたらどうや? 家の
掃除
(
そうじ
)
でもしとけ」 「えっ……」
真面目
(
まじめ
)
に言われて、
亨
(
とおる
)
は
愕然
(
がくぜん
)
としてた。また、あんぐりしてた。 最近この顔、よう見るなあ。前には
想像
(
そうぞう
)
もつかんかったのに、最近よく、こいつにあんぐりされている。 なんでやろ。
理解
(
りかい
)
したくない。 まさか
非常識
(
ひじょうしき
)
さにおいて、俺が
亨
(
とおる
)
を
追
(
お
)
い
越
(
こ
)
したなんて。 「いわゆる
銃後
(
じゅうご
)
の守りや。お前は家でおとなしゅうしとき。ジュニアもそのほうが安心やろう。
危
(
あぶ
)
ないんやで、この
神事
(
しんじ
)
は。式(しき)にも
巫覡
(
ふげき
)
にも、死ぬものは少なからず
居
(
お
)
るんや。お前が死んでもうたら、アキちゃん悲しむやろう」 「で、でも、でもでもな、でも、どうすんの、例の
蔦子
(
つたこ
)
おばちゃまの
予知
(
よち
)
は。俺かてあの
水晶玉
(
すいしょうだま
)
の
映像
(
えいぞう
)
の中に、ちゃんと
居
(
お
)
ったやんか。チーム
秋津
(
あきつ
)
の
一員
(
いちいん
)
やないか?」 「
誤差
(
ごさ
)
の
範囲
(
はんい
)
や。お前が
居
(
お
)
らんでも、関係がない。もう
策
(
さく
)
は見つかったんや。
龍
(
りゅう
)
には俺を
貢
(
みつ
)
ぐことになったから、アキちゃんは無事に
戻
(
もど
)
ってくるよ」
亨
(
とおる
)
はぽかんと聞いていた。またまた、あんぐりしていた。
困
(
こま
)
ったような
動揺
(
どうよう
)
した目で、
水煙
(
すいえん
)
をまじまじ
眺
(
なが
)
め、それから助けを求めるように、
亨
(
とおる
)
はどんより暗い俺の目を見た。 「えっ……ちょっ、と待って。それやとお前はどないなんの?」 「どないなるのか俺も知らんな。なってみてのお楽しみやで」 にやにや
苦笑
(
くしょう
)
して、
水煙
(
すいえん
)
はもうとっくに
諦
(
あきら
)
めてるような、
悟
(
さと
)
りきった
口振
(
くちぶ
)
りやった。 それを
眺
(
なが
)
め、
亨
(
とおる
)
はなんや
情
(
なさ
)
けないような、
沈鬱
(
ちんうつ
)
な顔のしかめ方をした。 「みんなで
解決
(
かいけつ
)
するんやないのか、
水煙
(
すいえん
)
。チーム
秋津
(
あきつ
)
は
戦隊
(
せんたい
)
モノやろ。五人で乗り切りましょうって、そういうオチやったんとちゃうの?」 「ちゃうようやなあ、
生憎
(
あいにく
)
な。次回のおはなしで
活躍
(
かつやく
)
してくれ、
水地
(
みずち
)
亨
(
とおる
)
」 ふっふっふと
気味
(
きみ
)
良さそうに笑い、
水煙
(
すいえん
)
は細めた
眼
(
め
)
で、かすかに
喉
(
のど
)
を
反
(
そ
)
らせてた。 「そんなん、ないわ……ずるいで
水煙
(
すいえん
)
。俺がヒロインやのに!」 「今回は俺やねん。すまんなあ、
亨
(
とおる
)
」 しれっと言われて、
亨
(
とおる
)
はぐふっ、と
噎
(
む
)
せるような息をした。 「アキちゃん」
裏返
(
うらがえ
)
ったような声で、
亨
(
とおる
)
はまた俺に助けを求めてきた。何か言えということなんやろう。 でも、何を言えんの。俺、なんも言えることない。 そうか、と、なんか
妙
(
みょう
)
な
安堵感
(
あんどかん
)
もあった。
亨
(
とおる
)
、
関係者
(
かんけいしゃ
)
やないんや。
無関係
(
むかんけい
)
。 俺とデキてるからって、俺の
家業
(
かぎょう
)
に付き合わなあかん
訳
(
わけ
)
やない。 前は俺の式(しき)やったから、
否応
(
いやおう
)
もなく
引
(
ひ
)
きずり
込
(
こ
)
まれてただけで、そうやないなら、
手伝
(
てつだ
)
う必要なんもないんや。 そういえばそうかも。
新開
(
しんかい
)
道場
(
どうじょう
)
の
小夜子
(
さよこ
)
さんも、
剣道
(
けんどう
)
のことなんて、さっぱり知らんかった。
道場
(
どうじょう
)
のことは何一つ
手伝
(
てつど
)
うてへんかった。 時々の気まぐれで、
子供
(
こども
)
可愛
(
かわい
)
いって、おやつ出してくれたりするだけで、たまに
現
(
あらわ
)
れるだけの、ゲストキャラやった。
師範
(
しはん
)
は
奥
(
おく
)
さんには
道場
(
どうじょう
)
の仕事を
手伝
(
てつだ
)
わせてなかったんや。 そんなツレかているんやし、
亨
(
とおる
)
がそうでも、かまへんやんか。 こいつは俺と
一緒
(
いっしょ
)
に
絵描
(
えか
)
きたいとは言うてるけど、
一緒
(
いっしょ
)
に
鬼退治
(
おにたいじ
)
したいとは言うてへん。したないもんを、無理にせなあかん理由はない。 京都に帰っとけばええんや。
出町
(
でまち
)
の家で、俺の帰りを待っといてもらえばいい。 それって、全然、
普通
(
ふつう
)
やん?
旦那
(
だんな
)
の会社に毎日ついていく
奥
(
おく
)
さんおらへんやん。 家にいてたり、自分の仕事に出てたりするのが当然やんか。 何も
皆
(
みな
)
が
皆
(
みな
)
、
夫婦
(
ふうふ
)
でいっしょに
自営業
(
じえいぎょう
)
というわけやない。
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椎堂かおる
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