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26-5 トオル

 な・し。  な・し?  な・し……?  って、どないなっとんねん!  ふっざけんな。なんでアキちゃんの今生(こんじょう)のラスト・エッチのお相手(あいて)が、水煙(すいえん)様やねん。  俺やろ普通(ふつう)! ヒロインやねんから!  (とおる)ちゃんがやるとこやないんですか!?  おっかしい……なに風呂(ふろ)入っとんねん、この青い人。  なんで可哀想(かわいそう)な俺が下僕(げぼく)のごとく、この包丁(ほうちょう)風呂(ふろ)に入れてやらなあかんねん。  俺からラスト・エッチ(けん)(うば)ったらしい、この、えげつない(おに)にご奉仕(ほうし)して、風呂(ふろ)までお姫様(ひめさま)()っこしてやらなあかん、どんな理由が俺にある?  そんなもんあるわけあるかい。行きかがり上や。  あたかも当然のごとくに、水煙(すいえん)様が、ゆさゆさ俺をお起こし(あそ)ばし、(とおる)(とおる)風呂(ふろ)入りたいから湯を()ってくれ、(ぬる)いほうがええなあ、と言わはりましたもんで、ええ、なんで風呂(ふろ)、と()ぼけつつ、うっかりご奉仕(ほうし)しちゃったのよ。  見たとこ、水煙(すいえん)の体には、(のろ)われてるような形跡(けいせき)はなかった。  綺麗(きれい)さっぱり、ぷにぷにのお(はだ)やった。  青いから、特に何とも思わへんけど、肌色(はだいろ)やったら絶対(ぜったい)エロい。  (たし)かにケツも華奢(かしゃ)可愛(かわい)い。  アキちゃん(ごの)みか……。  しかし、勿論(もちろん)やけども、その時点では何かこう、何かしちゃったような形跡(けいせき)は、なんもなかったんやで。  (あせ)一つかいてるわけでなし。  ただ、水棲(すいせい)で、水に()かってると(なご)むから、風呂(ふろ)入りたいだけみたいやった。  ほんなら風呂(ふろ)ぐらい入れたろかと思うたんや。  そして()こけてる犬とアキちゃんをベッドに残して、水煙(すいえん)横抱(よこだ)きしてやな、風呂(ふろ)()()もうとしていたら、部屋(へや)のドアがバーンと開いて、ものすご(おこ)ってはる怜司(れいじ)兄さんがご登場やった。  ざけんな先生、(だれ)()せと、(たえ)なる美声(びせい)怒鳴(どな)()んできはってな、(にい)さん、音にびっくりしたんか、反射的(はんしゃてき)に俺に()きついてた水煙(すいえん)と、それを()っこしている俺を、愕然(がくぜん)みたいに見てた。  ほんまに十五秒くらい、お口()いてた。ものすご気まずい静止(せいし)画像(がぞう)やった。 「なにしてんの、(とおる)ちゃん。水煙(すいえん)と、やるの?」  愕然(がくぜん)のまま、怜司(れいじ)(にい)さんはマジとしか思えない口調で(たず)ねてきて、ものすご水煙(すいえん)のケツをガン見していた。  若干(じゃっかん)戸惑(とまど)ってはるようやった。  これ美味(おい)しいのかな、みたいな、そんな戸惑(とまど)い方やけどな。  俺はふるふる首を()って、ちがいますとお答えしていた。  そんなわけない、俺は怜司(れいじ)兄さんとは(ちが)うから。  下ではするけど、上ではいい仕事せえへんのやで。  ツッコミ入れへん。俺は基本(きほん)、ボケやから。  それに恋敵(こいがたき)とやる趣味(しゅみ)もない。宇宙人(うちゅうじん)ともや。  お前もなんとか言え、水煙(すいえん)。むかつく誤解(ごかい)やろ。否定(ひてい)しろ。  しかし水煙(すいえん)は、(おぼろ)を見るのも(いや)なんか、知らん顔のお()ましで、俺に()きついていた。  お高いような神さんやけども、運ばれるのは()れてるらしい。  (だれ)かに()きかかえられるのを、(はじ)やと思うてない。駕籠(かご)(かご)か輿(こし)(こし)にでも、乗ってるようなつもりらしいで。 「(はよ)風呂(ふろ)行け、水地(みずち)(とおる)目障(めざわ)りなモンが来た」  つんと()まして愛想(あいそ)ない、水煙(すいえん)様の全身を、怜司(れいじ)兄さんは眉間(みけん)皺寄(しわよせ)せて、しげしげと見て言うた。 「お前、ちゃんと足もケツもあるんやなあ。あの、下半分が(へび)みたいなのと、どないしてやるんかと、実は(なや)んでたんや」  余計(よけい)なお世話や。怜司(れいじ)兄さん、本気で(なや)んでたみたいな顔で言うてた。 「でも、ケツはあっても(あな)無しなんやで」  もっと(なや)ませたろと思って、俺は教えてやった。  それには水煙(すいえん)が、ぎょっとしていた。 「余計(よけい)なこと言わんでええねん、このアホが!」  水煙(すいえん)が俺の耳元(みみもと)怒鳴(どな)っていた。  キイキイうるさいような、水中対応(たいおう)超音波(ちょうおんぱ)みたいなのまで、ぎゃんぎゃん怒鳴(どな)っていた。  (へび)やし聞こえる、俺かて耳ええんやから、そんなに怒鳴(どな)らんといてくれ。 「えっ、マジで無いの? ちょっと見せてみろ」  知的(ちてき)好奇心(こうきしん)かなあ。そう言うて、ずかずか近寄(ちかよ)ってきた怜司(れいじ)兄さんが、いきなりケツに(さわ)ったもんやから、水煙(すいえん)はキャアアアアアっ、て、イルカみたいな悲鳴(ひめい)を上げてた。  怜司(れいじ)兄さん、びっくりしていた。  びっくりしたで俺も。まさか水煙(すいえん)が、そんな悲鳴(ひめい)上げられるやなんて。  いつもお高くとまってんのに、まるで(おそ)われた女みたいやないか。  いやん。ちょっと可愛(かわい)いな、お前。  そんなん俺に思わせんといてくれ。変な気起きたらどないすんねんな。 「(さわ)るな、阿呆(あほ)っ。何しに来たんや、この淫売(いんばい)がっ」  蹴飛(けと)ばせるもんなら()りたいと、そんな目付きで、水煙(すいえん)怜司(れいじ)兄さんを(にら)()けていた。  でも若干(じゃっかん)涙目(なみだめ)やった。  なんで泣いてんのや。何を泣くようなことがあったんや。  怜司(れいじ)兄さんはそれに(にら)まれ、ますます愕然(がくぜん)みたいな顔をして、水煙(すいえん)()れた手を、(ちゅう)()かせていた。 「なんや、このケツ。ぷにっぷにやないか、気持ちよすぎ!」  真面目(まじめ)(さけ)ぶような話やなさすぎ……。

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