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26-6 トオル
そうなん? 水煙 のケツって、気持ちええんか。
そんなん俺、触 ったことないもん。
姫 抱 っこするとき、太腿 までは触 るけど、ケツまでは触 らへんもん。
確 かに太腿 もむにゅっとしてて気持ちええねんけど、ケツもそうなんか。
どんなんやねん。触 りたい衝動 に駆 られるから、言わんといてくれ。
「一発やろか、水煙 ? 穴 なしでもいい、何かテクい方法を、考えるから」
変な気起きたんか、怜司 兄さん。
ほんましょうがない人やあんたは。節操 がない。
さすがは蛇 の眷属 や。
「考えんでええねん! 何か用があって来たんやないのか! アキちゃんやったら、まだ寝 てる。出直 せ、朧 」
顔真 っ白 なって、水煙 様は俺の首をぐいぐい絞 めてた。
力あったら首ねじ切られてる。そんな気のする、八 つ当 たりめいた抱 きつかれ感やった。微妙 に苦しいよう。
「誰 でもええんやな、怜司 兄さん。てめえの仇 の青色 宇宙人 でもええんや」
感嘆 して、俺は褒 めた。褒 めてるんやで。
怜司 兄さんは、それに力強く頷 いてくれた。
「誰 でもいい。ケツ可愛 ければ、とりあえず入れてみる、それが宇宙 の法則 や。ラブ&ピースやで亨 ちゃん。それで全宇宙 が平和になれる」
どこまで本気かわからへん。
どこまでも本気やったら、どないしよ。
亨 ちゃん、思わず上 ずった笑い声やった。
だって、どないすんねんな。
「全宇宙 の平和もええけど、とりあえずは犬にしといてくれへんか。水煙 を怜司 兄さんにレイプされたら、うちのアキちゃん発狂 すると思うから、犬で我慢 しといて。あいつもケツは可愛 い」
俺は説得 した。
怜司 兄さんは、そうやなあって、素直 に頷 いてくれてた。
話のわかる人や。
「そういやワンワン、どないなったんや。腹 減 って死んだか、発狂 してへんか?」
「してへんよ。昨夜、アキちゃんバリバリ食うて、血吸 うて、すやすやネンネしとったわ。もう元気なってんのとちゃうか」
ぷんぷんしてる水煙 に、首を絞 められながら、俺はトホホ顔 で答えてた。
「ああ、そうなんか。良かったなあ、ワンワンも餌 もらえて。本間 先生も、我慢 プレイにもほどがある。それも心配しとったんや」
そう言うて、にこにこしている怜司 兄さんは、ほんまにホッとしたようやった。
水煙 ・龍神様 モードと、どないしてやるか悩 むついでに、それも心配してくれてたんか、怜司 兄さん。
案外 、優 しいんやなあ。
エロと、おとん大明神 以外のことも、考えてる時あるんや。
「ほなワンワン、もう大丈夫 なんやろ。ちょっと俺に貸 して。仕事手伝 わせたいんや」
俺に犬を貸 すとか貸 さんとかいう、許可 を与 える権利 があるんか。
怜司 兄さんは俺に訊 いていたけども、お答えのしようがなかった。
「貸 せ言われてもなあ……アキちゃん寝 てるし、わからへん」
「何言うてんの。お前が筆頭 の式 やないんか?」
怪訝 な顔して、怜司 兄さんは俺を見下ろした。
俺が筆頭 の式 ならば、勝手 にワンワン貸 してええんや。知らんかった。そんな権力 を手にできるとは。
「こいつは解放 されたんや。もう秋津 の式 ではない」
俺に抱 きついたまま、水煙 が偉 そうにぶつぶつと口を挟 んだ。
それでも朧 に背 を向けて、目も合わせとうないという態度 ではいた。
「なんや。そんなら、まだまだ、水煙 様は健在 か」
チッとあからさまな舌打 ちをして、朧 は伏 し目 になっていた。
淡 い鳶色 の目が、じいっと水煙 の青い背 を、見つめていた。
「俺はワンワンより上? 下? どっちやねん、水煙 様」
「……お前のほうが上でいい。あの犬は、経験 の面でお前に劣 る。いろいろ教えてやれ」
「いろいろ教えてやるわ」
ものすご含 みのある艶 めいた口調 で言うて、朧 はにやにやしていた。
「ほな、序列 的には、水煙 様、俺、可愛 いワンワンということで」
「そういうことや。今後もし、式(しき)が増 えたら、お前が面倒 をみろ」
俺にしがみついたまま、水煙 様は朧 に指図 した。
そうするのが当たり前みたいな、慣 れた口調やった。
そういえば怜司 兄さんは、昔も一時期、秋津 の式神 やったわけやから、実はほんまに慣 れてんのやろ。
蔦子 さんの式(しき)としても、はっきりせえへんなりに、喚 ばれたら出向 いていく程度 には、仕 えていたんやしな。
フリーダムみたいに見えて、これでも式神 キャリアのある人なんやで。
でも秋津 家では合わず、水煙 様に嫌 われて、追い出されたんやろ。
見たとこ、確 かにラブラブの二人 には見えへんけどもな、でも、そう険悪 にも見えへん。
オシゴトですからって、割 り切 って付き合うぐらいなら、やっていけそうやけどなあ。
なんせ、もう、水煙 様はおとんユーザーではない。
同じ男を取り合って、メラメラ燃 える必要は、もうないんやしな。
「俺はお前がランク落ちして、ヨソモンの蛇 にこき使われるところが見られんのかと、ちょっと期待してたんやけどなあ」
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