fujossyは18歳以上の方を対象とした、無料のBL作品投稿サイトです。
私は18歳以上です
三都幻妖夜話(3)神戸編 26-71 トオル | 椎堂かおるの小説 - BL小説・漫画投稿サイトfujossy[フジョッシー]
目次
三都幻妖夜話(3)神戸編
26-71 トオル
作者:
椎堂かおる
ビューワー設定
645 / 928
26-71 トオル
誰
(
だれ
)
あろう。それは
伏見稲荷
(
ふしみいなり
)
の
大権現
(
だいごんげん
)
様らしい。 神様やで、ほんまもんのな。
真
(
ま
)
っ
赤
(
か
)
っかな千本
鳥居
(
とりい
)
で有名な、
伏見
(
ふしみ
)
の
稲荷
(
いなり
)
神社に
祀
(
まつ
)
られている神さんやんか。 「ちょっと、ダーキニー様、やないわよ。なんやのん、うちの
留守
(
るす
)
中に! 出先で
留守電
(
るすでん
)
聞いて、びっくりしたやないの。
鯰
(
なまず
)
の
生
(
い
)
け
贄
(
にえ
)
になるかもしれませんが、すみませんて、すみませんやないわよ。何がどないなってそうなるんか、ちゃんと説明しなさい」 オバチャンは、
唾
(
つば
)
とんできそうな早口で、一気にそれをまくしたてた。 「いや……ダーキニー様の
携帯
(
けいたい
)
の
留守電
(
るすでん
)
、録音時間が三分しかないから。
要点
(
ようてん
)
だけ。ちゃんとお
目通
(
めどお
)
りしてご
挨拶
(
あいさつ
)
せなあかんとは思うたんですけども、どこの
御旅所
(
おたびしょ
)
にもいてはらへんし、お
忍
(
しの
)
びでどっか行ってはるていうから、
探
(
さが
)
したら失礼かなあと」 「失礼もくそもあらへんわよ! うち、びっくりしたわ! 虫の知らせで、変な
留守電
(
るすでん
)
入ってるっていうから、聞いてみて
腰
(
こし
)
ぬかして、
睫毛
(
まつげ
)
エクステンション植えんの
途中
(
とちゅう
)
でほったらかして、飛んできたわよ」 エステいってたんやって、ダーキニー様。お
忍
(
しの
)
びで。 俺ら、どんなリアクションしてええか、わからへんかったもんで、ポカーンのまま
静止
(
せいし
)
しとったわ。 「やめときなさい、
秋尾
(
あきお
)
ちゃん! やめときなさい! いくらあんたでも、
鯰
(
なまず
)
に食われたら、死んでまうんえ? せっかくの
不死
(
ふし
)
の身を、なんでそんな
粗末
(
そまつ
)
にすんのん。
茂
(
しげる
)
ちゃん死んでまうのが、あんたはそないに、つらいんか?」
真正面
(
ましょうめん
)
から
直球
(
ちょっきゅう
)
で
訊
(
き
)
かれ、
秋尾
(
あきお
)
は
一瞬
(
いっしゅん
)
、うぐって顔をした。 そういうことは、
訊
(
き
)
かれたくないらしかった。 でも、ダーキニー様、つまり
荼枳尼天
(
だきにてん
)
、もしくは、お
稲荷
(
いなり
)
さんとして
信仰
(
しんこう
)
されている神様の
化身
(
けしん
)
らしい、この、ふわふわ
白毛
(
しろげ
)
のオバチャマは、そんなこと気にせえへん
性分
(
しょうぶん
)
らしかった。 細かいことは気にせえへん。ぶっちゃけ
訊
(
き
)
いちゃう。
厳
(
おごそ
)
かさより、分かりやすさがウリやった。 さすがは
庶民
(
しょみん
)
派
(
は
)
の神さんや。 「つ……つらいです。だって、先生、
仙
(
せん
)
にしてくれって、長年、
願
(
がん
)
かけてはるけど、ダーキニー様はずっと、まだまだ
信心
(
しんじん
)
が
足
(
た
)
らんて、
出
(
だ
)
し
渋
(
しぶ
)
ってはるし。
大願
(
たいがん
)
成就
(
じょうじゅ
)
する前に、先生、死んでしまわはるんやないかと」
秋尾
(
あきお
)
はもじもじ、うつむいて、そんなことを答えていた。 「そんな、あんた……あんたはうちの
稲荷
(
いなり
)
の
眷属
(
けんぞく
)
やないの。そのあんたがそんな
不信心
(
ふしんじん
)
で、どないすんの! うちの
霊験
(
れいげん
)
を信じてへんのんか?」 「信じてますけど……でも、
不老不死
(
ふろうふし
)
の
仙人
(
せんにん
)
になりたいやなんて、そんなどえらい願い事、いくらダーキニー様でも、ちょっとやそっとじゃ
叶
(
かな
)
える
訳
(
わけ
)
にはいかへんやろうと思って」 「そら、そうえ。ちょっとやそっとじゃ、
叶
(
かな
)
えてやられしまへん。そやけど、
茂
(
しげる
)
ちゃん、
後
(
あと
)
もうちょっとなんやから……もうちょっとの
辛抱
(
しんぼう
)
やないの、
秋尾
(
あきお
)
ちゃん」 ダーキニー様、オタオタしてはった。 オタオタする神さん、俺は初めて見たわ。 いやまあ、そらな、俺かてしょっちゅう、オタオタしてるけどもや。 神社持ってるような、そんなセレブな神さんでも、時にはオタオタすんのやな。 「もうちょっと、って……いつですのん、それ。
僕
(
ぼく
)
もう、待ちくたびれてしまいましてん。先生もう、トシやしな……いつ何があるか。心配なんです」
秋尾
(
あきお
)
はしょんぼりしていた。 よかったな、しょんぼりするとき、しっぽ少年のほうで。
三十路
(
みそじ
)
スーツのほうやのうて。 だって、ちょっと
可愛
(
かわい
)
いもん、今。
秋尾
(
あきお
)
ちゃん、耳も
尻尾
(
しっぽ
)
も、ふにゃあ、ってなってた。
大崎
(
おおさき
)
先生、それに
衝撃
(
しょうげき
)
受けたみたい。 ツボやったんやない? やっぱり
爺
(
じじい
)
、そういう
趣味
(
しゅみ
)
やったんや。
爺
(
じじい
)
の
趣味
(
しゅみ
)
やったんや! アキちゃんな、そうやない
違
(
ちが
)
うって、いつも言いよるねん。 あれはきっと
単
(
たん
)
に
時代
(
じだい
)
考証
(
こうしょう
)
的なもんや、
秋尾
(
あきお
)
さんは平安時代から生きてんのや、せやしあれが
普通
(
ふつう
)
の
格好
(
かっこう
)
なんや、コスプレやない、しっぽあるのも
狐
(
きつね
)
やからや、少年ぽいのも、それが真の
姿
(
すがた
)
やから
仕方
(
しかた
)
ないんやってな、アキちゃん、ものすご必死で
否定
(
ひてい
)
すんねんけど、そんなこと、ありえる? ぜったい
爺
(
じじい
)
のツボなんやって。 関係ないか、それは今。なんやったっけ、今の話。 そうや、
秋尾
(
あきお
)
や。
秋尾
(
あきお
)
はものすごガックリ来ていた。 いつも、平気でにこにこしてるように見えていたけど、こいつ
案外
(
あんがい
)
、
堪
(
こた
)
えてたらしいで。 ご主人様の
大崎
(
おおさき
)
茂
(
しげる
)
が、世を去るのではないかという
件
(
けん
)
について、自分は
普通
(
ふつう
)
には死なれへん
霊威
(
れいい
)
を持ってるもんやから、
困
(
こま
)
っていた。 なんとかして死ななあかんと、どうやって後追い自殺するか、ずっと考えてたらしいで。
正気
(
しょうき
)
やないな! 頭おかしい。
怜司
(
れいじ
)
兄さんもやけど、
秋尾
(
あきお
)
もおかしい。 さすがは古いお
友達
(
ともだち
)
どうしや。 チーム頭おかしいを
結成
(
けっせい
)
していたんや。 ご主人様が好きすぎて、頭おかしいねん。
前へ
645 / 928
次へ
ともだちにシェアしよう!
ツイート
椎堂かおる
ログイン
しおり一覧