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28-11 トオル

 ほんまにそうやで。まあ、(くわ)しくは言わんけど、(とおる)ちゃん、()()げなってた。  そら燃えるんやでえ、だって俺、炎系(ほのおけい)ちゃうもん。火には弱いんやもん。  ただ、殺しても死なん、無限(むげん)の生命力と、(へび)のようなしぶとさで、なんとか消えてへんかっただけ。 「(へび)、どうしたんや。どうしたん⁉︎︎」  蛇花火(へびはなび)の終わった後のやつみたいになってる俺を見て、鳥は急に(あせ)ってきたらしい。  地震(じしん)でやられて、瓦礫(がれき)になってる空き地に俺を下ろすと、鉤爪(かぎづめ)のある足でユッサユッサしてくれた。  やめろ、()()りなったらどうすんねん。  ちょっと休ませてくれ。若干(じゃっかん)、消えそうやから。 「熱かったんか? そんなん言うてくれな……分からへんやん! 死なんといてくれ! 俺、こっからどうしたらええのか、お前がいてへんと分からへん」  死んでるで、もう。いま再生中(さいせいちゅう)や。  それに、あかん死ぬ熱いって、俺、言うたと思うで、お前に引っ掴(ひっつか)まれて飛びながら。  (みんな)がお前やお前の兄貴(あにき)みたいに燃やしても爆発(ばくはつ)しても平気(へいき)(わけ)やないんや、(おぼ)えとけ……。  そんな有難(ありがた)い勉強になる話に耳を(かたむ)ける気配(けはい)もなく、鳥さんはびっくりしてもうたんか、スルスルっと人間の姿(すがた)(もど)ってもうて、メソメソ泣いた。  俺が消えてもうたらどないしようって思ったら、心細(こころぼそ)くなったんやろうな。  それでのうても寛太(かんた)(なみだ)もろい(やつ)やねん。  不死鳥(ふしちょう)(なみだ)や。都合(つごう)に合わせて、女優(じょゆう)さんみたいに泣かなあかんしな、その霊威(れいい)()ちた再生(さいせい)(なみだ)で、人々を(すく)っちゃうのが不死鳥(ふしちょう)なんやから。  寛太(かんた)はこの時も、全然(ぜんぜん)意図(いと)はせず、俺を(すく)っちゃった。  ポロポロこぼれ落ちる寛太(かんた)(なみだ)が、焼け()げた俺の蛇体(じゃたい)()れると、そこから新しい皮が生まれて、俺はベロンて脱皮(だっぴ)した。  めっちゃシュールやった。  ベロンてな、()けてん。  ごめんな、こんな話して。(へび)イヤやって人も()るかもしれへんのにな。  でもな、めっちゃシュールにな、ギャグ漫画(まんが)かよっていうノリでな、ベロンて()けて、中から俺様(おれさま)再生(さいせい)してん。  (きず)ひとつない真珠(しんじゅ)色に(かがや)大蛇(おろち)蛇体(じゃたい)が、現れたんや。  あらまあ! 気分爽快(そうかい)! (よみがえ)っちゃったわ!  これ、イイ。イケてる、すごく。  寛太(かんた)! お前、神やないか!  すごいで、こんなん。お前、マジもんの不死鳥や⁉︎︎  信太(しんた)の目に(くる)いはなかったんやなあ! 「あれ、無事(ぶじ)やん。なんや、よかった」  寛太(かんた)はポカーンと俺を見て、言うた。  アホなんか、お前。気付け、自分の再生(さいせい)能力に。  俺は自分もなんとなく、人型(ひとがた)(もど)ろうかなって思って、(もど)った。  被災地(ひさいち)丸太(まるた)ぐらいある白い大蛇(おろち)が出たら、(こわ)いやろ。  人間の気配(けはい)もしたんや。見られたら、ややこしい。  せっかく寛太(かんた)も人型に(もど)ったしな、俺も合わせとこうかなって、思って。  そしたらな、俺、全裸(ぜんら)やったわ。  いやああん、(とおる)ちゃん服どこ置いてきたの?  生まれたまんまの姿(すがた)になってもうてるやん⁉︎︎  変転(へんてん)する時な、普通(ふつう)は服も持っていくねん。俺はそうや。  でないと、また人型に(もど)るときに、スッポンポンなってまうやん?  まあ、俺様の美しいヌードを見られても別に(こま)ることはないんやけど、(こま)るやん。スッポンポンやで?  せやし服も持っていくねん。  この時かて、持っていったはずや。  でも、燃え尽(もえつ)きてもうたんかな? ウラヌスのせい?  それとも、寛太(かんた)再生(さいせい)(なみだ)(よみがえ)った時に、服()げてまうのん?  (おそ)ろしいオプション機能やな。よう分からん。 「はだかや」  俺を指差して、寛太(かんた)がポカンと言うた。  うっさい! お前の服()いでよこせ。  (だれ)のせいで全裸(ぜんら)なんや。せめてパンツぐらい残せ。  しかも(だれ)か来たし、やばいやばい! 人間や!  どないしよどないしよう! とりあえず変転(へんてん)か!  何に⁉︎︎ (へび)ヤバイ。(ちょう)か?  それともあれか、(ねこ)科のバニーガールか?  でもあれも(はだか)やったら、それもそれなりにヤバイ!  うわあ、って思ったらな、やって来たのはなんと、破戒神父(はかいしんぷ)神楽(かぐら)(よう)やってん。  真っ白い戦闘用(せんとうよう)僧服(そうふく)ヴァチカン謹製(きんせい)に身を(つつ)んだ、金髪(きんぱつ)碧眼(へきがん)(よう)ちゃんが、瓦礫(がれき)になった家の向こう側から、大丈夫(だいじょうぶ)ですか、どなたか()られますか、言うて、さっと現れた。  そして、全裸(ぜんら)の俺と、泣いてる寛太(かんた)を見て、目が点なってた。  目が点なって口開いてる顔文字みたいやった。  俺も寛太(かんた)静止(せいし)した。  お互い、なんで? っていう思考停止(しこうていし)から、すぐには復帰(ふっき)でけへんかった。  その間にも、寛太(かんた)はえぐえぐ言うて泣いていて、瓦礫(がれき)の中から、確かにほんまや。向日葵(ひまわり)が、()き始めたんや。  それに神楽(かぐら)はますます目が点になってた。  奇跡(きせき)や、とか思ってたんやろな。 「何しとうのや……ここで」  あんぐりのまま、神楽(かぐら)(よう)はやっと聞いてくれた。  お前、(はだか)やで、どこ見たらええんやっていう目で、神楽(かぐら)(よう)は俺ではなく寛太(かんた)のほうを見た。  でも俺に言うてんのやで。  お前、()ずかしいんか、俺が(はだか)やと。  俺も()ずかしいわ、態度(たいど)には全然出さへんけど! 「アキちゃんとこ向かってる途中(とちゅう)や。服が燃えてしもて(こま)っててん」

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