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第6話
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「接地極付プラグ……お前、飲み過ぎだ」
「うるせぇ~なぁ、飲みたい気分なんだよ。帰りたきゃ一人で帰れぇ~。親父さ~んもう一杯~」
居酒屋のカウンターで机に突っ伏してるくせにまだ飲む気らしい。
「お客さん、大丈夫かい?もう止めときな」
「ら~いじょ~ぶ、ら~いじょ~ぶ~………」
聞こえてきたイビキに俺は溜め息を吐いた。
「親父さんすみません。迷惑かけて……連れて帰るので、タクシー呼んでもらっても良いですか?」
完全に酔いつぶれた同僚を見つめながら、タクシーを待った。
こいつがこんなになるまで呑むのは珍しい。
いつも余裕を持った出来る男だ。
こいつの余裕を無くしたのは、後輩のコンセントだ。
誰からも愛される可愛いげのある男。
誰にも甘えられない俺とは大違いだ……。
接地極付プラグの気持ちに気づいたのは、俺が接地極付プラグを見ていたからだ。いつも一人で溜め込む俺を、さりげなくサポートしてくれていた男。
好感が好意になって、気づいた時にはもう引き返せないくらい好きになっていた。
今日、社内の資料室の入口で固まるあいつをみた。
あいつが立ち去った後、資料室の中を覗いて見ると、コンセントが部長のモノを受け入れ、甘い声をもらしていた。
退社後、あいつの行きつけの居酒屋で一人酒を飲んでいる姿を見つけ、隣に座った。
既に出来上がっていたあいつは、コンセントの事を自分がどれだけ愛していたのかを語る。
「俺だってずっとコンセントの事が好きだったのにっ!」
「わかってるよ。お前はずっとコンセントの事を気にかけてやってたもんな」
―――知ってるよ。俺だってお前をずっと見てたから。
到着したタクシーに酔っぱらいを突っ込んで、家呑みで、何度か訪れたことのある住所を告げる。
「ほら、着いたぞ。鍵何処だ?」
「うぅ~」
ゴソゴソとポケットを漁り渡された鍵で扉を開ける。
久々にきたこいつの部屋は昔とかわりなく、何となく嬉しく感じる。
リビングのソファーに座らせて
「スーツシワになるぞ。掛けとくから脱いでおけよ」
水を取りにキッチンへ向かおうと立ち上がりかけた時、後ろから接地極付プラグに抱き止められた。
俺とコンセントは背格好が似ていて、後ろ姿だとよく間違われた……まさか……。
「おい、俺はコンセントじゃないぞ。良くみ……ろ…」
腕を振り払いながら振り向いた先に、接地極付プラグの情欲にギラつく視線があった。
はっ、と息を飲み逃げ出そうとした俺の体に接地極付プラグの体が覆い被さる。
体格で負ける俺は、床へと押し倒された。
「接地極付プラグ!!止めろ!俺はコンセントじゃない!!」
声をあげて抵抗する俺の唇にあいつの熱を持った唇が重なり、舌がねじ込まれた。
あいつの厚い舌が俺の口のなかを思う様に蹂躙する。
(冗談じゃない!!コンセントの代わりなんてふざけるな!)
いくら好きな相手でも他人の代わりで抱かれるなんてプライドが許さない。
「んんっ!ん~んんっ!」
背中を叩いても、押しても引いても離れない。
「はぁっ!んん……ふはぁ……はっ…」
執拗な口内の愛撫に、多少酒を飲んでいた俺も、頭がマヒしてくる。
薄目を開けて盗み見た、あいつの顔が泣いている様で、ほだされてしまったせいかもしれない。
シャツをはだけられた胸に愛撫を受け、ズボンから取り出されたモノを握られ、刺激を与えられる。
「あっ、あっ、接地極付…プラグ……あぁっ!」
俺のお尻にあいつのモノが押し付けられる。
いれようとしてくるが、何の用意もしていないソコはあいつを拒む。
単純な刺激だけで先走りを流し出した接地極付プラグのモノは、少し滑りが良くなり、俺の孔に引っかかった。
「ッ!!」
要領を得たという様に、少しずつ、少しずつ押し広げてきた。
だがソコはその程度のことで入る様な場所ではない。
体位を変えられ、後ろから突きつけられる。
徐々に進入を進めてくる男の動きが止まった。
少し息をついた刹那。
「うああああぁ~っ!!」
目の前に電気がスパークした。
メリッと穴が裂けた感覚。
接地極付プラグのモノが無理矢理、俺の孔を切り裂いて埋め込まれてきた。
あまりの痛みに涙が溢れる。
「ひぐっ!うぅ…ぅぐっ!う、う、う」
俺の流した血が潤滑油がわりになったのか、あいつの動きが早くなる。
「うぁ……接地極付プラグ……あぁっ!」
腰を捕まれ、なお大きな動きで打ち付けられる腰がパンパンと音をたてる。
「……コンセント……」
―――――――――っ!?
非情に耳の中でこだまする、彼の想い人の名前。
「コンセントッ!……コンセントッ!」
急に自分の姿が情けなくなる。
彼の愛撫を受けているのも、彼自身をその身に埋め込んでいるのも俺ではない。
コンセントだ。
「嫌だっ!嫌だっ!俺はアース付きコンセントだっ!俺の…俺の名前、呼んでっ!あいつの名前を呼ばないでっ!!」
一層の激しさをもって体を揺さぶられる。
「いやっ!いやぁっ!」
俺の中に全てを吐き出したあいつが、果てる瞬間に呼んだ名は……
「……コンセント……」
しばらく涙が止まらなかった。
自分は何なのだろうか?
空しくて、虚しくてなまらなかった。
俺達の出したモノで汚した床を掃除して……あいつの服の乱れを整える……。
痕跡は消せた。
きっとあいつは覚えていないだろう。
それで良い……責任感の強いあいつは責任をとると、言い出すだろう。
贖罪や同情で傍にいられるのはごめんだ。
最終確認をしてから玄関に向かい、最後に1度だけ振り返った。
「バイバイ……接地極付プラグ……俺だってお前のことずっと愛していたよ……」
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