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第7話
「っ!?」
意識が戻った俺の目の前には月雪の顔があった。
閉じた目を長い睫毛が縁取っているのが見える距離。
「~~~んん!???」
唇に生温かい感触が………
唇を押し付け合うだけの軽いキス……ではない。
食い付かれてるっ!!
口を開けろという様に唇を舌で舐められる。
滑った感触がざわざわと体を擽る。
うわあぁっ!!初めてなのに!!初めてなのにっ!!何で男と!!
じんわりと目が濡れてくる、グッと拳に力を込めて
「ふざけんなぁ―――っ!!」
思いっきり月雪の顔を殴った。
手が痛い。
キスしたのも初めてだが、人を殴ったのも初めてだ。
腕で唇をごしごし拭う。
「佐藤…そんなに擦ったら………」
「ふざけんな…ふざけんな…ふざけんな………」
何で俺がこんなっ……何したってんだよ……!!
月雪から伸ばされた手を叩いて、怒りで震える手でなんとか鍵を開けて部屋を飛び出した。
「ふふ……相変わらず、すぐ手が出るんだね」
教室を飛び出した俺は、殴られた頬を嬉しそうにさする月雪の姿を知らなかった。
――――――――――――――――――――――
それから、月雪の事を徹底的に避けまくった。
あいつから話しかけられたらどうしようと考えていたが、接触はなかった。
月雪問題はとりあえず、今のところ大丈夫そうだが……あの問題は片付くどころか、ますます悪化していた。
夢はこの際良い、問題なのはあの白昼夢だ。
童貞の俺には濃厚こってりすぎる絡みを見せられ続けて、俺の精神力ゲージは0に近い。
あの白昼夢が現れる回数は、
1日目は1回だった。
2日目は2回で。
3日目は3回。
4日目4回。
昨日は5回だった。
今日はきっと6回…ははっ。
後、1回でノルマクリアだ。
明日は7回くるのだろう。
明後日は8回…..。
一ヶ月後はどうなってるんだろう……。
もう、何も見たく無い……真っ暗な個室に閉じこもっていたい。
「佐藤、お前顔が真っ青だぞ?大丈夫か?」
「武田か……朝から純正リモコンがどの凡用リモコンとでも音量を上げるテレビに嫉妬してな……」
「は?リモコン?嫉妬?」
「……いや……何でもない、大丈夫……」
武田に話しても俺が変態認定されるだけだ……。
次の授業は視聴覚室へ移動しなければならない。
いつまでも座ったままの俺を心配して、声をかけてくれたんだな…。
立ち上がった俺は、立ちくらみで膝が崩れた。衝撃を覚悟していたけど武田が受け止めてくれたようだ。
「どこが大丈夫なんだよ…このまま保健室連れていくぞ」
「ん〜ありがとう。でも一人でいけるから武田は授業行って…」
保健室など妄想しほうだいな気がして、行きたく無いが、体が不調すぎる……。
どこにいても逃れられないなら、どこでも一緒かと、俺は武田の好意だけ受け取って保健室へ向かった。
あ〜保健室ってこんなに遠かったっけと廊下を進んでいると後ろから声をかけられた。
「佐藤」
わ~……今一番会いたく無い男No.1の月雪君の登場で〜す……。
一度振り返って、無視して歩き出す事にした。
「………来い」
あれ?お怒りですか?
どうやら怒らせてしまったようです。
俺引きずられて連行中です。
体がだるくて、抵抗する気力もございません。…そもそも…怒ってるのはこっちだ。
「………」
この先にあるのはもしやあの部屋でしょうか?
「月雪…離せ」
お…俺が無視したから、無視返しか。
これ以上は流石に身の危険を感じる。
「やだ…俺、お前嫌い」
精一杯足を踏ん張り、腕を振り払おうとしたが失敗。
反撃にあい、お姫様抱っこという屈辱を受ける事となった。
落ちそうで怖いし、騒いでこんな姿を誰かに見られるのも嫌だ。
ようやく降ろされた場所は、やっぱりあの部屋でした。
俺がファーストキスを失った場所だね……。
「佐藤…」
後ろから抱きしめられて方に月雪の頭が乗っかる。耳元でささやくのやめていただきたいんですけど……。
「佐藤…もうこれ以上、辛そうなお前を見ていたく無い…」
いやいや、だったら離れてくれませんかね?
俺の悩みの種のひとつは、あんた何ですけど……。
「…月雪、離せ」
「辛いんだろう?だったら辛いって言えよ!また俺を置いて死ぬ気か!?」
え~怒りのツボがわかんない……俺死んで無いし、もしかして月雪って実は痛い子??
「呪いは始まっているんだろ?…カイル」
……ッ!?
「月雪…お前、何で…」
月雪の正体は……
①呪いをかけた女
②ユリウス王子
③ユリウス王子の後ろに隠れていた女
④俺の心を読める超能力者
「わからないか?ユリウスだ…俺のせいで苦しみ続けるお前を助けたいんだよ」
正解は王子様でした。
「呪い…ってなんなの?」
俺は呪いがなんなのか、詳しい事は何も知らない。
それを察したのか、ユリウス王子こと月雪は丁寧に説明をしてくれた。
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