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第11話 誰でもいい訳じゃない4(坂城恭治)
「姉さんに連絡したら、夜勤だから迎えにこれないって。父さん、母さんは町内会の旅行に行ってるし、お前を頼まれちまったから」
恭にいは運転をしながら、ことの経緯を俺に教えてくれた。
あの時、滋野も担任として状況を確認したいということで、二人で俺を教室まで迎えにいくつもりだったらしい。そうしたら、田中に襲われている俺がいたと。
職員室は大騒ぎで、俺は被害者として話を聞かれて更に夜遅くなり、母さんが迎えに来れないというとことで、結局恭にいが俺を家まで送ってくれ、ついでに母さんが帰ってくる朝まで一緒にいてくれることになった。
「あいつ……これが初犯じゃないみたいなんだよ。みたい、っていうのは、証拠がなかったから立証されてなかっただけで、被害者は結構いると見てる」
やっぱりか。きっと、俺みたいな平凡で大人しそう(?)な生徒を狙っていたのだろう。最低なやつ!
「お前のおかげで、現行犯として捕まえることができた……」
お!俺お手柄?っと思うが、恭にいの声色が褒めてるように聞こえない。寧ろ、怒っているような声だ。
恭にいにもらった氷のうで両頬を冷やしながら、運転している恭にいを見ると、声と同じように怖い顔で前を睨んでいた。
「別に、お前じゃなくてもよかったんだ」
「何?」
声が低すぎて聞き取れなかったので聞き返すと、相変わらず怖い顔のまま、さっきより少し大きい声で、独り言のようにしゃべりだした。
「あいつの現場を抑えるなんて、お前じゃなくてもよかったはずだろ!あんな!誰もいない廊下で!お前を一人で教室にいかせるなんて!俺が……俺がお前を襲わせようなものじゃねえか」
ああ、恭にいは後悔しているんだ。俺を一人で教室にいかせたことを。
俺は、俺でよかったと思っている。結局助かったし、何も知らないいたいけな子が教われるより、多少すれてる俺のほうが心の傷も浅いだろう。気持ち悪いのは、どうしようもなかったけど。
そんな趣旨のことを話すと、恭にいはますます怒った顔をこちら向け、道路の退避スペースに乱暴に車を止めた。
「俺はよくないっ!お前が俺以外の誰かに抱かれるのも、お前のことを知りもしないやつらがお前のことを誰にでも股を開く淫乱だと見ていることも、許せない」
「誰でも、いい訳ないだろ!本当は、怖くて、でも逃げられないし……。こんな思いを、他の誰かがするくらいなら……俺で終わりになってよかったって……そう、思って」
止まったはずの涙が再び溢れ出す。恭にいが俺の気持ちを理解してくれているのはわかってる。でも、納得できない。なんだよそれ。恭にい以外に抱かれるのか許せない?
「俺のこと、抱いたことないくせに」
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