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第12話 誰でもいい訳じゃない5(坂城恭治)
俺は睨むように恭にいを見るが、両頬は腫れ、そこに氷のうをあてる姿はアホ面に違いない……。
俺にあらゆる快感の得方をレクチャーしたくせに、本番だけは絶対にしてくれなかった恭にい。叔父と甥という関係なので、当然といえば当然なのだが、じゃあその前に悪戯するなって話だ。
最初は性教育って感じだったけど、どんどんエスカレートし、本番以外はほぼヤった。今さら本番だけしないというのも、納得できるものではない。
ほぼ……というのは、誰ともしたことがない……キスのことだ。
「俺が大事にとっておいた処女をほいほい他人に捧げたのはお前だろうがっ」
はぁーと長いため息を吐くと、恭にいは恨みがましい目付きで逆に俺を睨んでくる。
「知らねえよ!俺がいくら欲しいっていってもくれなかったくせに!」
「だから、18歳になったら抱いてやるっていっただろ!」
「だったら、そのころに仕込めばいいだろ!気持ちいいの知ってから数年間もお預けとか無理だし!十代なめるな!」
「誰かに仕込まれる前に手を付けておきたかったんだよ。焦ってたんだ。」
恭にいはそう言って、ハンドルに額をつけると頭を抱えるように丸くなった。
遊ばれてると思っていたけど、恭にい実は俺に本気だったの?
……え?
「決めたっ!!」
がばっと勢いよく顔を上げると、ぎらついた雄の目で俺を真っ直ぐ見つめた。
「今日、お前を抱く」
え?
俺は驚き過ぎて頬に充てていた氷のうを両方とも膝の上に落としてしまう。
その冷たさにすぐに拾い上げたいと思うのだが、恭にいの眼力が強すぎて動くことができない。
ずっと願ってきたことだった。
いつか、恭にいに抱かれたいと。
でも……。
「む……無理」
「は?」
「だって、尚親くんと、約束しちゃったし。尚親くん以外と、エッチしないって……」
数時間前のやり取りを思いだし、俺を好き好んで抱きたい人なんかいないし、っとなからやけくそで約束したのだが、まさかこんなに早く求められるとは思ってなかった……。
「お前、西と付き合うことになったのか?」
訝しげな表情で聞いてくる恭にいに、素直に首を横に振る。別に、付き合うとは言ってくれなかった。
「はぁ?なんで恋人でもない西に操捧げるんだよ、アホか」
だって、あのままアナルずたずたにされるより、優しく抱かれて気持ちよくなりたかったし……。
そっちの方は素直に言うわけにもいかず、だんまりを決め込む俺の頭をわしわしと乱暴に撫でると、恭にいはまたハンドルを握りレバーをドライブにいれた。
「西に連絡入れろ。坂城先生のモノになったので、もうエッチできませんってな」
そういうと、ゆっくりと車を発進させ家路に戻った。
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