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呼ぶ声 ―6―
「サクラ様!本当に助けに来ていただけるなんて!ありがとうございます!」
「え……?何で俺の名前……っ!?」
いきなり手を握られ、俺の思考は固まってしまった。
女の子に手を握られるなんて、高校の時以来で……しかもこんな美少女に!
免疫の無い俺は何も喋れなくなって縮こまる。
「この方がリナーシア様の仰っていた救世主様なのですね!リナーシア様の危機に颯爽と現れるなんて本当におとぎ話の勇者様のようです!しかもこんなに可愛らしい方!」
きゅ……救世主!?俺が!?
固まる俺を余所に二人はなにやら興奮した様子だ。
「サクラ様、私はリナーシア様の侍女のマーニャと申します。危ないところを助けていただき、あぁ……ドルトフ様を放ったあの素晴らしい蹴り……私、感動です!」
あんな事があった直後なのに……逞しそうだ。
「あ…あの……はじめまして佐倉です。とりあえず場所を変えませんか?ここにいたら安全とは言えないでしょうし……」
何とか話を遮り、身の安全の確保を進言してみる。
「そういえばそうですね。舞い上がってしまい申し訳ありません」
マーニャさんはそう言うと扉を開けようとノブに手をかけた。
「やはり、扉は魔法で閉じられているようです……ちっ、卑しいエロ親父の癖に魔力だけは強いな……」
………後半の台詞は声が小さくて聞こえなかった事にしておこう。
マーニャさん、20代半ばくらいの綺麗なお姉さんだが中々クセのありそうな方のようだな……。
でも魔法あるんだ……じゃあ俺ももしかして魔法使えたりするのかな?
良いなぁ、やっぱ1度は使ってみたいって憧れる。
「サクラ様どうやってここから出ましょうか?」
「そうですね!サクラ様ならきっと!」
リナーシア様とマーニャさんが俺を見つめてくる。
いやいや……そんな期待した目で見られても俺何も出来ないよ?
魔法なんて使い方わかんないし。
ガラス蹴破って窓から……あ、5階建てくらいある……ガラスも厚そうだしココは無理だな。
うんうんと唸りながら部屋をウロウロしている俺の横をリナーシア様がスッと通りすぎガラスにをかけた。
『サクラ様、ここから出ましょう』
「へ……?でもその高さを流石に飛び降りるのは……」
振り返ったリナーシア様の瞳が桜色に変わっていて、話し方の雰囲気もなんだか違う人見たいで……たじろぐ俺の後ろから
「もう、リナーシア様にお任せすれば大丈夫ですよ。参りましょう」
と、マーニャさんが背を押してきた。
「???」
全く話についていけてない俺を余所にリナーシア様は床に膝をつき祈るようなポーズをとる、マーニャさんがその後ろで同じように膝をついたので、俺もつられてマーニャさんの横で同じように膝をついた。
えっと、これはお祈りすれば良いのかな?
誰に?
神様で良いのかな?
えーと……神様ここから出してください。
お願い致します……。
なんだか体がホワホワ温かくなってきた気がする……と、感じて目を開けると俺達3人の周りはシャボン玉のような光の中にいて体が宙に浮いていた。
リナーシア様が手を前にかざすとシャボン玉のようにフワフワとガラスに向かって進みだした。
ぶつかるっ!!
思わず目をつぶったが、するりとガラスを通り抜ける事ができた。
『……』
リナーシア様の体がぐらりと揺れ、マーニャさんが慌てて受け止めた。
「マーニャさん、リナーシア様は?」
「大丈夫です。大きな力を使い過ぎたのでしょう。お休みになられているだけのようです」
フワフワと進み続けるシャボン玉の中でマーニャさんはリナーシア様に膝枕をして、いとおしそうに頭を撫でている。
「あの……聞きたいことがいっぱいあるんですが……」
「私でお答え出来る事なら……」
マーニャさんは丁寧に俺の纏まりのない質問に答えてくれた。
所々、ブラックマーニャさんが滲み出てたのはスルー。
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