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邂逅―1―

「ここは………?」 目を覚ますと洞窟っぽい場所に寝かされていた。 自分の体を確認して見るが痛みも、傷跡もない……?? 夢……じゃないよな? もうどこからどこまでが現実かわからなくなってきた。 「目を醒まされたのですね!サクラ様!!」 あ。 リナーシア様、目を覚ましたんだ。 無事みたいで良かった……。 「マーニャさんは……?」 「今はユミル様と水を汲みに行っております」 ユミル様……?誰?王子様そんな名前だったけ? 「気がつかれましたか?」 低めの甘い声が耳に心地好く通る。 洞窟の奥から姿を現したのは、リナーシア様と同じ色彩を持つ美形。 きっとこの方が王子様なのだろう。 リナーシア様と並ぶ姿はまさに美男美女。 「お体の調子はどうですか?」 柔らかい物腰……これがリアル王子か……。 やはり仕事柄、美しいモノを見るのは大好きだ。見事な造形美。 こんな人にポスターのモデルやってもらったら、何の小細工も無しで製品の売り上げ倍増しそうだなぁ。 「あの……サクラ様?私の顔に何かついていますか?」 じっと見つめる俺の視線に居心地の悪さを感じたのか王子にたしなめられた。 「あ……不躾な真似をして申し訳ありません」 俺は居すまいを正し、正座をして深々と頭を下げた。 だって相手は王子。 俺は権力には無条件で屈する主義なのだ。 「サクラ様、私のようなモノに頭を下げるのはお止めください。私こそサクラ様の美しい瞳で見つめられ緊張をしてしまったもので、申し訳ありません」 自分の手に俺の手を乗せて俺の体をエスコートするように起こして、恭しく手の甲に口付けを落とされた。 「―――っっ!!!」 にゃ、にゃ、にゃ、にゃにを―――っ!? 何これ!キザっ!!歯が浮く!! なのに、なのに自然で様になってて……!! 人との触れ合いに免疫の無い俺は、プチパニックを起こした。 「お兄様っ!!」 「はははっ、サクラ様があまりにも可愛らしかったのでつい……失礼致しました」 どうやら揶揄われたようだ、こちら世界のジョークは心臓に悪い。 「あはははは……」 俺も乾いた笑いで曖昧にごまかしておいた。 「あの、俺を助けてくれたのは……王子…様ですよね……」 「リヒト・スリジュ・プリールメです。リヒトとお呼びください」 「あ……ご丁寧に……佐倉 悠壱です」 遅まきながら、妙なタイミングで自己紹介をする。 長くて覚えられそうにない。 名刺をもらえたら良いのに。 「リヒト王子が「リヒトとお呼びください」 「……リヒトさん「リヒトです」 王子様は随分と押しが強い……。 「リヒトが助けてくれたんですよね?ありがとうございます」 ちょっと変わった人だけど命の恩人にかわりないのでもう一度、頭を下げた。 「お礼を言うのはこちらの方です。妹を助けていただきありがとうございます。マーニャからサクラ様の事は聞いております」 マーニャさんか……あの人の事だからかなり歪曲した伝わり方してそうだな……。 「……!!サクラ様っ!!お目覚めになられたのですね!!」 噂をすればなんとやらで、戻ってきたマーニャさんに抱きしめられた。 「私!私……無力で……!何も出来なくて!もう駄目かと……」 「俺こそ守れなかったし……皆さんにも迷惑かけて……すみません」 顔を上げるとマーニャさんと共に戻ってきた男の人と目があった。 その人は一瞬渋い顔をして……困ったように笑った……。

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