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邂逅―4―

マーニャさんの話に重苦しい空気になり、この世界の人にとって世界樹がとても大切なものなのだという事がわかる。 リナーシア様は涙を流しながらも俺の方を向いて気丈に笑ってみせた。 「でも……世界樹様は、サクラ様がきっと助けてくれますよね。サクラ様いらっしゃってから世界樹様の喜びの感情が流れ込んできますもの……」 「…………」 俺は何も答えられなかった……。 守る為の術などわからない……。 助ける力があるのか、ないのかもわからない。 自分の無力さに落ち込んでいるのがばれたのか、ユミルそんが振り返り頭を撫でてくれた。 「サクラ様、サクラ様とは聞いていたが……まさかユーイチのことだったとはな……お前が獣に襲われた時は、リヒトの奴が抱き込んでて顔を見れなかったからなぁ」 「あ……そう言えば、結構かじられた記憶があるんだけど……傷痕が全然ないんだけど、これも魔法?それとも夢……だった?」 自分の姿を改めて見ると服は破れてしまっているが、傷は見当たらない。 「申し訳ありません。緊急でしたので、サクラ様の葉を回復薬として、使わせていただきました」 あぁ、気を失う前そんな事を聞いた気がするな。 そう言う事だったのか。 これは夢ですよって言って欲しかったなぁ。 「この木ってそんな力があるんだね……ねぇユミルさん、ここって異世界って奴なの?」 実感が湧かず、現実逃避して夢だと思い込もうとしていた時は平気だったけど、急に恐怖がわいてくる……逃げられない……逃げる場所も無い……。 ……ユミルさんの服をギュッと握った。 「ああ……ここはお前がいた世界とは違う。まさかこの世界でユーイチと再会するとは思わなかったな」 「俺だってそうだよ……ユミルさんもこの世界に飛ばされちゃったの?」 「……ユミルは私が幼い頃から近衛騎士として傍におりました。サクラ様の世界の者ではありませんよ。いきなり見知らぬ土地に飛ばされ、知らない者に囲まれ、見知った者の側が一番安心するのはわかるのですが……こちらに来てユミルとの関係をお聞かせいただけませんか?ユミル、お前も何故サクラ様とお知り合いなのか聞かせてくれ」 リヒトがいつの間にか横にきて俺の手を取っている。 頼る人も他になく、これから行動を共にするかもしれないのに確かに失礼かもしれない。 それに王子様にここまで下手に出られては俺も無碍に出来ず、導かれるまま、おずおずとユミルとリヒトの間に腰を下ろした。 正面でまたマーニャさんが鼻血を出している。火のそばで熱いのだろうか? 皆に注目され話しづらい事この上ないが…… 「えっと……ユミルさんとは20年前に公園で助けられまして。それからよく一緒に遊んでもらってました。中学生の頃に両親が死んで引っ越して会えなくなってしまったのですが……ユミルさん、すみません。お別れも言えなくて……」 「「……は?」」 俺何か変な事言ったかな……? みんなが目を見開いて俺を凝視してくるので居心地が悪くなり、ユミルさんの後ろに移動しようとしてら、リヒトに腕を引かれて何故か膝の上に乗せられた。 早く皆に馴れるように気を使ってくれているのかもしれないが、王子様はパーソナルスペースが近いな……。 ちょっと苦手かも……。 「サクラ様、20年前と仰ってましたが……失礼ですが年齢は?」 「……?30歳になりましたけど……」 「「えぇ〜!?」」 洞くつに響いてエコーがかかる。 リヒトが側で大声を出すから、耳がキーンとして痛い。 ……て、言うか何でユミルさんまで驚いてんの? 「サクラ様申し訳ありません、私より下だと思ってました…」 「こんなに可愛いらしいサクラ様が年上なんてギャップ萌えもいいとこです!どれだけ私のツボを刺激するのですか!」 「まだ成人前だと思っていたのですが……ふふ……そうですか……」 「そ……そうか……あっちでは20年経ってたのか……」 みんな自由に思い思いの感想を述べてくれる。意味不明な言葉も聞こえたけど……。 俺はそんなに童顔ではなかった筈だが? この世界の人たちは皆、背が高いとは思う。170cmだった俺がリナーシア様と同じくらいだからなぁ。 だから幼く見えるのか? 「ユミルさん、『あっちでは』って言ってたけど、こっちは違うの?」 「ん?あぁ、それも含めて俺の話をしよう。その前に……まずはこの世界に伝わる世界樹の物語をしようか……」

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