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世界樹の夢 ―1―

………………昔、大国に囲まれたラスタリア国という小国がありました。 けして豊かな国ではありませんでしたが、心優しい王様のもと、民は平和に暮らしておりました。 王国の中心の広場には国を見守るように1本の大木が立っており、国民の憩いの場として親しまれておりました。 ある日、この国の王子が城を抜け出し大木の広場へ足を伸ばした。 そこで王子は美しい女性と恋に落ちたのです。王子は自分の伴侶にと、王様を説得し女性との結婚の許しを貰いました。 女性との間に子も授かり、王位を継ぎ、幸せに暮らしていた王となったでしたが、近隣の国に不穏な動きが出始めました。 攻めこまれれば、戦う力を持たないラスタリアはすぐに落とされてしまうでしょう。 王様は悩みました、敵国はあまりいい噂を聞きません。 投降して自分はいいが愛する妻と子はどうなる? 属国になったとしても民の幸せは補償されません。 悩む夫に妻は言いました。 『今まで騙してごめんなさい。私は貴方と出会った広場に植わっている木の精です』 王は驚きましたが、彼女への愛は変わりません。 王が妻へ変わらぬ愛を告げると…… 『ありがとう、貴方と貴方の子孫が笑って暮らせるように。いつまでも見守り続けましょう』そう言うと妻の姿は消えてしまいました。 その瞬間、大きな地響きがして、ラスタリアを囲うように大きく深い谷が生まれ外界から国を守ったのです。 国は守られましたが、妻を失った王は嘆き悲しみます。 悲しみにくれる王をある日、子が広場へと連れ出しました。 『父上、母上は常に私たちを見守ってくれております。母上の声が聞こえませんか?』 王が耳を澄ますと 『泣かないで、愛しい人。貴方が立派な王として国を、民を幸せに導く姿をここで見守り、お手伝いをしてまいりましょう』 王の耳にも妻の声が聞こえました。 そうして王は、愛する妻に見守られながら、平和な国を築き上げて行きました。

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