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夢から醒めて思うこと―1―
「リヒト!?」
ユミルさんの話を聞いて、いきなり立ち上がり洞窟を飛び出した。
リヒトを追いかけようとして、ユミルさんに腕を捕まれ制止される。
「しばらく、一人にしてやれ…」
「でも…外は…」
危ないと言いかけて、俺より強いだろうリヒトを俺が追いかけても意味ないかと、座り直した。
「世界樹はこの国を恨みながらも、愛する子どもの子孫の為にいまだ教会に利用され続けている。世界樹は癒し与える力しか持たない。愛する者を守るためには、加護を与え続けるしかなかった……」
ユミルさんの話しにショックを受けたようで、リナーシア様もマーニャさんも顔が真っ青だ。
「世界樹様に……愛された一族と言われ……祈りを捧げ……加護を要求していた……私の行為は世界樹様を苦しめ続けていたのですか?」
リナーシア様はポツリポツリと自分で確認するように、自分の過去を思い出しながら、静かに言葉をこぼしていく。
「愛されているなどと……世界樹様を追い詰めていた!教会が何をしているのか疑いもせず!世界樹様が苦しんでいるのを気付きもせず!私は……!私はっ!!」
リナーシア様は大声をあげて泣き出した。
マーニャさんは何も言わず、抱き締めてリナーシア様の背中を撫でていた。
俺は関わりの浅い、遠い異国の物語に……正直、感情は移入出来ていない。
自分は人の気持ちのわからない冷たい人間なのだろうか。
ただ、世界樹が異世界から来た人間と言うことが気になった。
その末路は自分の未来かもしれないから。
沈黙の時が進む。
リナーシア様も涙は枯れたのか、マーニャさんに抱き締められたまま、たき火の火を眺めていた。
「お兄様は……人一倍世界樹様の物語に心酔しておりました。小さな頃から世界樹様のような方を后に迎え、戦争無き世でけして樹に還す事なく守り抜いて共に歩いていくのだと、世界樹様にもよく語っておりました……夢見がちな子供のようでしょう?」
リナーシア様は小さな笑いをもらした。
「サクラ様と出会った時のお兄様の顔といったら。まるで無邪気な子供のように目をキラキラさせて宝物のように抱き締めておりました……」
俺は何だか申し訳なくなって、いたたまれなさを感じる。
憧れを壊すようで申し訳ないが、俺は世界樹でも美しい少女でも何でもない。
ただのおっさんだ。
「その夢が教会の良いように作り上げられた話だと知って……大好きな世界樹様の本当のお心を知って……自分たちはただの足枷でしかないと知って……お兄様は……」
自分だって辛いだろうに、優しいなリナーシア様。
俺は人の気持ちに寄り添えない。
優しい言葉を投げ掛けることも出来ない。
人が泣いているのも、苦しんでいるのも嫌いだ。
イライラする。
変わってやるから……涙も怒りも、全部寄越せと言いたくなる。
俺が全部抱えて死んでやる……。
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