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初めての味―1―
「くしゅっ」
くしゃみをした俺に慌てたリヒトは俺を抱き上げて洞窟へと走ってくれた。
入口ではユミルさんが待っていてくれた。
「戻ったか、遅かったな」
言葉に含みがある気がして……顔がかっと熱くなる。
マーニャさん、全てわかってます。
見たいな顔で微笑まないでください。
何もないですから!キスぐらいはしたけど……。
「サクラ様!大変!お風邪を召してしまいます!!早く濡れたお召し物を脱いで火の側へ!!」
心から心配してくれるリナーシア様、いい子だなぁ。
でも止めて、女の子に服を脱がされるなんて……服を脱がされる前にマーニャさんが魔法で乾かしてくれた。
「ユミル、俺のせいで話を中断させてしまってすまなかった。話の続きを聞かせて欲しい」
ユミルさんにリヒトが頭を下げていた。
リヒトは俺の思っている王子様とは違うみたいだ。
王子様ってもっと偉そうな感じかと思ってた。
「お前たちにとってはキツイ話だったからな。続きは飯でも食いながら話そうか」
リヒトの頭をぐしゃぐしゃかき混ぜてユミルさんは食事の提案をしてくる。
そう言われれば、お腹が空いた気がするけど……こんなとこに食べる物って……。
「食事?」
「お前たちがいたしてる間にマーニャが飯を準備してくれたんだ」
ユミルさんはニヤニヤ笑い、マーニャさんは訳知り顔で笑ってる。
リナーシア様まで……。
「い……いたしてないっ!!」
何なんだよ!この人たちはっ!!
……でも、ふとした瞬間に真顔をみせる。
空元気……なんだろうな。
無宗教だった俺には、わかりづらいけど……信じていたものに裏切られたショックは簡単には拭えないんだろう。
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